秘密の暴露は金貨とともに
~前回のあらすじ~
コメットちゃんを見つけました。
「手伝ってくれてありがとうございます、コーマ……さん」
「いいっていいって、気にしないで」
力の神薬を飲み続けた結果、この程度の荷物は軽い軽い。
木箱に入った荷物を見る。
果物や野菜、肉に魚。
「これ、全部コメットちゃんが食べるの?」
「ち、違います! 皆さんの分の夕食です」
「だよね。あぁ、びっくりした」
俺がうれしそうに笑うと、コメットちゃんは少し顔を赤らめて、それでも愛想笑いを浮かべてくれた。
店の経営やら魔王やら勇者の従者やらいろいろやってるけど、まぁ、こういう日常も悪くないなぁ。
妹がいて、一緒に買い物をするとしたらこんな感じなのかな。
まぁ、あくまでも妹のいない人間の幻想であって、本当に妹を持っている世間のお兄からしたら、「そんな妹はいねぇ」と言うんだろうな。
「そういえば、コメットちゃん、仕事はもう慣れたの?」
「はい、皆さんとてもよくしてもらってます……ですが」
「どうしたの?」
「コーマさんならわかると思いますが、寮の設備がとてもよすぎて……ちょっと弟や妹に申し訳ないかなと」
あぁ、確かに、あの寮は俺にとって可能な限り最高の設備で作り上げたからなぁ。
ただ、一応秘密があるので、誰でも住んでいいとはいえない。
「コメットちゃんって、弟と妹がいたんだ」
「血のつながった弟や妹ではなく、同じ孤児院で育った年下の子供たちなんです」
孤児院出身。思わぬ返答に俺が言葉を詰まらせると、コメットちゃんはさらに話をつづけた。
「私の本当の両親は山賊に殺されたらしいので。奴隷になったのも、教会の経営が厳しくて、シスターに黙って身売りをしたからです」
「重いよ、重すぎるよ、コメットちゃん!」
いや、まぁ、奴隷になっちゃうなんて、普通の人生ではないんだろうけどさ。
道で雑談のように話す内容としては重すぎるよ。
「結果的にフリーマーケットで雇ってもらえて、私は幸せなんですよ」
「あぁ、終わりよければ全て良しか……メイベルに感謝しないとな」
「はい、メイベルさんとオーナー様には足を向けて寝れません」
コメットちゃんは「オーナー様には会ったことないんですけどね」と照れたように言った。
今、ここで会ってるんだけどね。
でも、ここで俺がオーナーだと言うには恥ずかしすぎる。
俺の顔も赤くなってるだろうな。
そして、俺たちは従業員寮にたどり着いた。
一階はレストランになっているが、11時から14時まで限定であり、時間外は部外者の立ち入りができない。
俺はクリスの従者として出入り自由になっていて、たまに入らせてもらっているが、2階より上には立ち入り禁止となっている。
俺が決めたルールなので不満はない。
まぁ、従業員全員に俺がオーナーだと知らせた後で入ってやろうとは思っているが。
女子高とか女子寮って、なんでこうキュンキュンするんだろうなぁ。
「コーマさん、荷物はそこに置いてください」
「ここでいいのか?」
「はい、あとでしまいますから……コーマさん、何か召し上がります? オーナーの一品はなくなったんですけど」
オーナーの一品とは、この店のオーナー、つまり俺がきまぐれで作る限定料理のことだ。
今日の一品は、
……………………………………………………
フカヒレあんかけ焼き飯【料理】 レア:★★★
フカヒレの入った餡を焼き飯にかけちゃいました。
パラパラに炒めたチャーハンがどろっとなります。
……………………………………………………
だった。フカヒレの数の都合で10人前しか作れなかったが、完売したんだな。
俺も自分で試食したので、別に注文するつもりはなかった。
ちなみに、作った料理はアイテムバッグの中に入れるため、温かいまま保存可能。
他の定食もアイテムバッグの中に保存し、余ったものは従業員が食べることになっている。
「あぁ、じゃあ日替わり定食できるかな?」
「はい、残ってますよ」
今日の日替わり定食はハンバーグ定食だ。ハンバーグとパンとサラダ。
ハンバーグというと、カカオ豆100%のスライムハンバーグを思い出してしまうが、本物のハンバーグを食べてハンバーグの認識を元に戻さないとな。
そして、コメットちゃんが用意してくれたハンバーグは……なんと肉でできていた! しかも動かない!
って、普通のことなんだよな。
ナイフとフォークで切り分けてハンバーグを食べる。
肉汁が口中に広がり、玉ねぎの甘みとハーモニーを奏でる。
これが……ハンバーグなんだよな。
「あの、コーマさん、なんで泣いてるんですか?」
「いやぁ、普通っていいんだなぁ、って思ってさ」
おいしいなぁ。
幸せだ。
「喜んでもらえてうれしいです。今日のハンバーグは私が作ったんですよ」
「へぇ、凄いなぁ。食べられるんだもんなぁ」
「コーマさんの味の基準に不満があります」
いやいや、素直においしいよ。
メイベルの作ったサンドイッチもおいしかったし、この店の女の子の料理の腕はいいらしい。
「そういえば、コメットちゃんのいた孤児院って今はどうなってるの?」
「ええと、あまり状況はよくないみたいですね。でも、私が貰ってる給金を送っているので、少しは――」
「ふぅん、じゃあ、フリマに寄付させればいいじゃん。儲かってるみたいだし」
「そんなことできません! オーナーにはただでさえお世話になってるのに」
「そんなことないって。ちょっと待ってて」
俺はそう言うと、食べかけのハンバーグをそのままにして、部屋の隅に行く。
そして、三番目の通信イヤリングを作動させた。
『あ、コーマ、ちょうどよかった! たったいま新作料理ができ――』
「間違えました」
俺は即座に通信をオフにする。
三番目を選んだつもりが一番目を選んでいたようだ。
今度こそ三番目の通信イヤリングを作動させる。
『どうしました? コーマ様』
「時間があるときでいいから、食堂に来てほしいんだけど」
『かしこまりました、すぐに伺います』
俺は通信をオフにして、パンをちぎって、ハンバーグのソースを付けて口に運んだ。
うまいなぁ。
ちなみに、通信イヤリングの存在を知らないコメットちゃんには、俺が一人で喋っていたように見えただろうな。
痛い人間と思われてないかな。
ハンバーグを食べ終わると同時に、メイベルがやってきた。
「お、メイベル! 話があるんだけど」
「はい、なんでしょう?」
「コメットちゃんのいた孤児院、経営が危ないみたいだから、フリマから寄付できないかなって思って」
俺がメイベルに言うと、「コーマさん、本当にいいんです。すみません、店長、私がちょっとコーマさんに話してしまって」と弁明するが、メイベルは少し考え、
「そうですね、では金貨20枚ほどでどうでしょう?」
「金貨20枚、まぁ、そんなもんでいいか」
「店長、そんなオーナーの許可ももらわずに金貨20枚も……」
コメットちゃんの言葉に、メイベルが俺を見た。俺は黙って頷き、
「オーナーの許可ならすでにあるぞ?」
「え?」
コメットちゃんは何を言われたのかわからない様子だ。
「コメットちゃん、ここにいるコーマ様が、フリーマーケットのオーナーなんです」
紹介された俺はVサインをした。『ドッキリ大成功』の看板があったら使いたいほどのコメットちゃんの驚きよう。
そして、この後くるであろう反応を予想し、俺は耳を塞いだ。
「えええええぇぇぇぇぇっ!?」
耳を塞いでもその絶叫は無事に俺の鼓膜へとたどり着いた。
~通貨~
貨幣もまた重要なアイテムです。
ファンタジー世界の通貨は、大体、金貨、銀貨、銅貨などが使われ、紙幣は使われません。その一番の理由は、国の信用でしょう。
なぜ、1万円札は1万円札なのか?
それは、日本国が1万円札が1万円札です、と保証しているからですよね。
1万円と子供が書いた紙は一万円ではありません、国が保証してくれないから。
その昔は金本位制の時代です。
金が一番。金貨が本来の金。とはいえ、全ての通貨を金で賄おうと思ったら、金がいくらあっても足りないし、パン1個買うための金なんてそれこそ砂粒程度になります。そのためにあるのが補助通貨。銀貨と銅貨ですね。
ですが、それでも金貨には限りがあります。
そこで、最終的には金貨に、その中に含む金以上の価値がでてきます。
1万円分の金が100万円分の金貨になる、みたいな状態になるわけです。
まぁ、金貨が100万円の価値というのはやりすぎなんですが。
あと、金貨の上位貨幣に白金貨ってのが作品によっては出てきます。
プラチナ金貨ですね。ただ、前にも書きましたが、プラチナは加工が困難なうえ、その価値が出てきたのは最近のため、あまり存在しないです。
贈答用に作られたり、一部の国では実際に発行されましたが。
あと、イメージの違いとしては、銅貨のイメージも違いがあります。
銅貨は青銅のほうが多いです。錆びにくいですね。
ゲーム内の通貨についてはまたいつか。




