コーリーちゃんの憂鬱
~前回のあらすじ~
コーリーの姿でクリスに見つかった。
とりあえず、この服装のままなら俺だとすぐにばれるため、アイテムバッグの中の服に着替えることにした。
またメイド服姿になるとは思いもしなかった。
アイテムバッグからもバレる恐れがあるので、スカートの中の太ももに巻き付けた。
拳銃を隠している気分だ。
「はぁ……一体なんでこんなことになったんだよ」
最低限のケアとして、アルティメットポーションから作った化粧水を肌に塗りたくる。
「クリスティーナ様、もう大丈夫ですよ」
コーリーがどんなキャラだったのかと思いだしながら、俺はクリスを呼んだ。
何やってるんだよ、俺。
せっかく記憶を取り戻したのに、なんでこんどは自分を偽った行動をしないといけないんだ?
もちろん、俺が悪いんだが。
最初に入ってきたのはクリスだった。
ルシルは空気を読んでクリスの後ろで待機してくれている。
「コーリーちゃん、どうしてここに?」
「えっと、神子様がここに招待してくださったんです。クリスティーナ様こそどうしてこちらに?」
「そういえば私も神子様に……あぁ、じゃあ一緒なんですね」
いろいろと違うけどな。
でもまぁ、同じということにしておこう。
「あぁ、じゃあ私はこれから用事がありますので……クリスティーナ様、ごきげんよう」
そう言って立ち去ろうとする俺の腕をクリスが掴んだ。
「コーリーちゃん、どこに行くんですか?」
「あ……ええと、商談、そう、大切な商談があるんですよ。あ、もう時間だ。急がないと」
「待ってください、コーリーちゃん。えっと、商談って誰とするんですか?」
誰と?
あぁ、誰とだ?
「えっと、あぁ……そうそう、お店です! フリーマーケットの支店を探すために地主さんと」
「え? フリマの支店ならもう開店してますよ?」
「開店してるの!?」
「はい。エリエールさんが店長をして――あ、私が案内しますね。ルシルちゃん、代わりに報告してもらっていいですか? 正直、ルシルちゃんがどうやって賢者の道を直したのか、私は半分もわかってないので」
クリスはそう言うと、後ろにいた
「え、ちょっと待ちなさいよ、クリス」
甘いぞ、ルシル。
そんなツッコミでクリスを制御できるわけがなく、俺は彼女に拉致されて城の外へと連れ出された。
「がんばって」
鈴子がなんの慰めにもならない励ましをしてきて、泣きたくなった。
背中を丸くして、疲れた様子で歩く俺と、背筋を伸ばして堂々と歩くクリス。
「大丈夫ですか? 体調悪そうですけど」
「え……えぇ、大丈夫です……」
無理して笑顔で答え、どうしようと考えていた。
エリエール相手だと、クリス相手とは違う。
最悪、俺の正体を看破されて、変態従者の汚名のレッテルを貼られるかもしれない。
しかも、女性ものの下着まで履いているため否定できないのが辛い。
「本当に大丈夫?」
「はい、大丈夫です。少し死にたくなっただけですから」
「それ、全然大丈夫じゃないですよ!」
顔面蒼白であろう俺の呟きに、クリスもまた顔を青ざめさせて叫んだ。
「あぁ、死にたくなったのは言いすぎました。はい、えっと、そうですね。この世の生きとし生けるもの――全ての生命に謝罪してダニとして生まれ変わって人の血を吸うなんてごめんだからと餓死して死にたい気分になっただけですから」
「さっきよりもひどくなってますよ。どうしたんですか、コーリーちゃん」
「本当にどうしたんでしょうね……私にもわかりません」
自嘲気味の笑みを浮かべる俺の顔を覗き込もうと前かがみになって俺を見てきた。
――ぐっ、し、視線が――目の前に巨大な胸が。
この位置はやばい。
いつも無防備なクリスが当社比五割増しで無防備になっている。
てか、タイミングも悪すぎるんだよ。
記憶を失っている間にクリスを見たとき、クリスのことを超絶美人のお姉さんと認識してしまって、その感覚が俺の中に残ってるんだよ。
そうでなければクリス相手にこんなドキドキするものか。
「お、かわいこちゃん達発見! ねぇねぇ、君たち、僕とお茶しない?」
「俺達この国の兵でさぁ、戦争を防ぐために前線で活躍してたエリート兵なんだぜ? その時の話をしてあげるからさ」
そう言って鎧と槍を持った、騎士というよりかは門番ぽいカッコウの男二人が声をかけてきた。
「…………へぇ、お兄さん達強いんだぁ」
俺はそう言って視線を上げる。
鎧の材質は鉄。
手入れを怠っているのか、支給されたときからそうだったのか、ところどころ錆びている。
「うんうん、俺達超強いんだぜ?」
「俺達の下半身はもっと強いけどな」
下品な笑みを浮かべる男達に俺はゆっくりと近付いていき、満面の笑みを浮かべて言った。
「ねぇ、お兄さん。ちょっとその鎧、硬そうですけど、叩いてみていいですか?」
俺の問いに、男ふたりは顔を見合わせて、
「おうおう、いいぜいいぜ。全力で来てよ。その代わり――」
「うん、お兄さんが私の拳に耐えられたらお茶でもその後でもなんでも付き合ってあげる」
なんでもという言葉に、男達はだらしない笑みを浮かべた。
そう言って、俺は構えを取り――全力には遠く及ばない力で、
「ぐへぶはっ!」
だが鎧が変形するくらいの力で拳を打ち込んだ。
男は五メートルくらい吹き飛び、泡を吹いて倒れていた。
「あぁ、すっきりした。ありがとうね、お兄さん。でもナンパをするなら相手を選ばないとダメだよ」
俺はそう言って、ストレス解消に成功して笑顔でクリスの元に戻った。
「では行きましょうか。もうどうにでもなれです!」
「……え、えぇ」
クリスもドン引きしていた。
明日はちょっと番外編の予定です。
本編はあと3話くらいコーリーが続きます。TS苦手な方はすみません。




