日頃の行い
~前回のあらすじ~
コーリーちゃん再び
さて、どうしたものか。
コーリーちゃんになっちゃったんだが、えっと、俺、この神子の前でどんな風に話してたっけ?
面倒だなぁ……てか、服装も男物だし、聖女のフリをいまさらするのも面倒だしなぁ。
「久しぶりだな。まさかあんたがここの神子だったとは思いもしなかったよ」
もう素でいくことにした。
「それとも、ここには客人できているだけで、闇の神子は別にいるのか?」
「久しぶり」
闇の神子はそう言って、片手を上げた。
「…………」
「…………」
「…………」
「いや、それだけか?」
俺は思わずそう言っていた。
「私が闇の神子」
「あぁ、そうそう、そういうのが聞きたかったんだ。うん」
「あなたは日本人」
「そうそう、そういうのも聞きたかった……って、え?」
日本人!?
なんでその単語が神子から出てくるんだ?
「待ってくれ、日本人って、どういうことだ? 思わず返事してしまったが」
「私も前世が日本人だった。木下鈴子」
「……ん……その名前は確かに日本名だな。で、なんで俺が日本人だってわかったんだ?」
「あなたが話しているのが日本語だから」
「え?」
あ……そうか。
俺は翻訳魔法で相手に通じる言葉を話しているが、日本人には日本語として聞こえるのか。
「……前に会った時も気付いてた」
「ならその時に言ってくれたらいいのに……」
「あの時もあなたは女性の格好をしていたから――」
「ぶはっ、待て、待ってくれ、お前、俺が男だって気付いてるのか?」
俺の問いに鈴子は無言で頷いた。
「精霊が見ていた」
「精霊って、闇の精霊が?」
「ミューじゃない。あなたが寝ていた草の精霊」
草の精霊?
精霊は、光・火・土・闇・水・風の六種類の精霊しかいないんじゃなかったっけ?
少なくとも草の精霊など聞いたこともないが。
「精霊はどこにでもいる。小さくて普通の人には見えないだけ」
「凄いな……情報収集し放題だ。あぁ、俺の名前は光磨だ。火神光磨。こっちではコーマって呼ばれてる」
「私はこっちでは闇の神子と呼ばれてる」
「いや、名前は?」
「吾輩は神子である。名前はまだない」
吾輩は猫である風に言いやがった。
こいつが日本人であったという話は事実のようだ。
「名前がないって?」
「いつも代わりの子がいて、彼女がラミーと呼ばれている。でもそれは彼女の名前で私の名前ではない」
あぁ、そういうことか。
そう言えば、こいつには影武者がいたな。
「あいつも目が見えなかったんだよな? 治ったのか?」
俺の問いに、鈴子はコクリと頷いた。
そうか、それはよかった。
「俺は今、アークラーンにいるんだが、光と火と土が同盟を結んだのは知ってるか?」
また鈴子はコクリと頷いた。
口数の少ない神子だと思う。
「闇も――ダークシルドも同盟に参加しないか? そうしたら四カ国が同盟に加わることになって、過半数になるからな。そうなったら、水のアクアポリスと風のウィンドポーンも簡単に手を出せなくなるだろ?」
もちろんそう簡単に同盟に参加できるかどうかなんて決めることはできないだろう。でも、まぁ悪い話ではないはずだ。特にダークシルドはアークラーンと同じで今回の戦争には巻き込まれた側。
アークラーンと同じ、この大陸では数少ない戦争被災国なのだ。
だから、ゆっくりと検討すればきっと――
「うん、入る」
「そうだな、ゆっくり考えて」
きっと入ってくれる。
「って、え?」
「同盟、参加する」
「いいのか? 勝手に決めても」
「ミューもいいんじゃないかって言ってる」
「ミュー?」
「ミュート」
ミュート……静かにしろってことか?
あ、いや、もしかして――
「闇の精霊の名前か?」
俺の問いに、鈴子はコクリと頷いた。
そうか、まぁ闇の精霊の意見ならば誰も文句は言わないよな。
実際、そのおかげでここまで同盟が上手く運んできたと言っても過言ではない。
でも、まさかこれほどまでに簡単に同盟がうまくいくとはな。
これも俺の日頃の行いがいいおかげだな。
「神子様、クリスティーナ様とルシル様をお連れ致しました」
「入ってもらって」
鈴子が短い返事をした。
そうか、クリスとルシル、今頃来たのか。
もう用事は終わったというのに……て、げ!
俺は今、自分が女の姿だったことを思いだした。
やばい、ここでクリスに姿を見られたら――
その時、扉が開いた。
アイテムバッグから薬を取り出す暇もない。
俺は咄嗟にベッドに隠れようとし――顔が隠れ切らなかった。
「神子様、報告に――え、コーリーちゃん!?」
「お、お久しぶりです、クリスティーナ様……あははは」
やばい!
やばいやばいやばいやばい!
後ろのルシルはというと、「あちゃぁ」という感じで頭を抱えている。
そして、
「クリス、そこの女の子、今着替え中みたいだから、ちょっと外に出てましょ」
ナイスだ、ルシル!
愛してる!
「え? あ、そうなんですか? えっと、でも、なんでコーリーちゃんがここに!?」
「いいから、話はあとよ」
ルシルにひっぱられ、クリスは部屋の外に連れていかれた。
正直にクリスに話すには――この姿で彼女を散々からかったことだけでなく、一緒に風呂に入ったこともあった。さすがにクリス相手でもあの行動はまずすぎる。
正直に全てを打ち明けるには、俺の日頃の行いはまずすぎた。




