魔の森からの撤退
~前回のあらすじ~
メディナが正式に魔王軍に入った。
タラとコメットちゃんはメディナをつれて魔王城に帰ることにした。
その前に、メディナの血を少しだけとらせてもらった。
その血を、ダークエルフの石像に垂らすと、石化が解除された。
最初に目を覚ましたダークエルフは、何が起きたかわからなかったようで、俺の顏をまじまじと見てきた。
「大丈夫か? ほら、これ、メデューサの血だ」
「メデューサの!?」
「あぁ、半分はお前に渡すから、仲間にかけてやれ。それで石化が解除される。一滴でいいからな。あまりかけすぎると血が足りなくなるから注意しろよ」
エリクシールの空容器に入れたメディナの血を復活したばかりのダークエルフに渡す。
その意味を理解したダークエルフは「わかった」と頷き、一滴ずつ仲間たちに垂らしていった。
別に俺とクリスの二人でしてもよかったのだが、まぁ、そこは共同作業っぽく演出したかった。
そして、全てのダークエルフが石化状態から元に戻る。
ひとりのダークエルフの若者(俺と同い年くらいだろうか?)は、石化していたという恐怖で泣き崩れていたが、彼を窘めるものはいなかった。
皆が皆、俺がいなかったら一生石のままだった(ということはないんだが)と思っている。
「皆が石化していたのは一週間程度だ。ダークエルフの村を訪れたときはみんなまだ避難していた。誰か、足の速い方は避難所に行って、メデューサはすでに討伐したこと、そして、貴方たちをこの地に住まわせたルチミナ様が訪れたことを伝えに行ってほしい。あ、そうそう、みんなの村に俺の仲間を待たせてるから、彼女には手を出さないでほしい。あ、彼女にはルチミナ様のことは内緒で頼むわ」
ルチミナ・シフィル――ルシルの名を聞き、ダークエルフ達は騒ぎ出す。
「コーマ、行くわよ」
「あぁ」
ルシルは一歩前に出て、その姿を高校生バージョンにまで成長させた。
胸がそこそこ大きく、魅力的な女性へと変わる。
俺の中に破壊衝動が出てくるが、耐えられる。
少しでも気を抜けば、鱗が生え、翼が生えるだろうが、耐えられる。
やはり、ルシファーの力が弱くなっているのだ。
でも、力が弱くなっているのなら、普段から中学生くらいの姿でいられるんじゃないかと思うのだが、どうもそういうわけにはいかないらしい。
「おぉ、そのお姿は――伝承にあるお姿と何一つ変わらぬ――」
ダークエルフ達はルシルの姿を見て、土下座をして仰ぐ。
まるで神のようだ。
「我が盟友の子孫たちよ、よく生き延びていてくれた。先ほど、この地に封印していたメデューサは私が滅ぼした。あの時は我の力が及ばず、封印処置のみとなってしまったこと、お詫びしよう」
ルシルはそう言って頭を下げた。
本来はメデューサとダークエルフは同陣営だから恐れる問題なんて何もなかったんだろうが。
ただ、少し辛くなってきた。
俺はルシルに見えるように少し手を上げる。
「なお、失われた賢者の道を修復するために私はやって――あぁ、すまない」
ルシルはそう言うと、その姿を元の小学生バージョンに戻した。
封印が強固なものとなり、俺の中の破壊衝動も霧散した。
「私も少し訳あって力をだいぶ失っちゃって、こんな姿になっちゃったんだけどね」
「……話は伺っております。ルシファー様が討伐されたとか。ですが、我等ダークエルフ一同、ルシファー様から受けたご恩は忘れたことはございません。もちろん、ルチミナ様のことも忘れたことはございませんでした。先日はあろうことかルチミナ様のことを偽者として扱ったことお許しください」
「いいわよ、そんなの。気にしてないわ。それより、賢者の道を直しに行きましょ。コーマ、手伝ってね」
「もちろんです、ルチミナ様」
現在、俺はルシルの従者の役目だ。
下っ端に徹した。
それがルシルの機嫌をよくさせている。
その後は特に問題はなかった。
壊れた賢者の道を維持するための石は、全盛期のルシルによって作られたもので、今の彼女には直せないものだったらしいが、俺のアイテムクリエイトで一瞬で修復。
宴会を用意しようと言ってくれたが、避難していた皆にとって、食糧の貯えもあまりなく、そして、ルシルのバカな部分が露見するのを恐れた俺は丁重に断った。
シグレとクリスは再会の挨拶をしていた。
ルシルについては俺の昔の主人という説明をしておいた。そのあたりはダークエルフの皆が話を合わせてくれている。
そして、俺達はそのままアークラーンに戻るのかと言えば、そうではなく――そのままダークシルドを目指すことにした。
もう巻きで行こう。
このままダークシルドと同盟を結ぶ。
その算段も既についているからな。




