三匹の猛獣と三種の料理
~前回のあらすじ~
鑑定は正常運転です。
「コメットはそこで待ってろ! 絶対に動くなっ!」
俺はコメットを下ろしてそう命じた。
串焼きと言う名の茶毛の巨大な牙の獅子。
エッグタルトという名の白色の巨大蛙。
そして、牛乳粥と言う名前の白色の巨大スライム。
白が二匹に茶色が一匹という地味な絵面。
「なんなんだよ、こいつら……索敵スキルにもひっかからないし」
俺はそう独りごちながらも、恐怖で脂汗を浮かべる。
先に動けばやられる。
だが、じっと待っていてもやられる。
ならば――先に逃げる!
俺は大きく後ろに跳び、同時に、アイテムバッグから轟雷の杖を取り出し、
「雷よ!」
そう叫んだ。
杖の先端から雷が集まり、まずは雷に弱そうな巨大スライムへと降り注がせる。
これで倒せるか!?
そう思ったが、
「弾いた……だとっ!」
表面に帯電させ、スライムは一気にそれを弾き飛ばした。
こいつ、ただのスライムじゃない。
そういえば、牛乳は飲み物の中でもタンパク質や脂質が多いせいで電気を通しにくいと聞いたことがあるが、そのせいか。
俺が戸惑っていると、その焦りを悟ったように茶色い獅子が俺に襲い掛かってくる。
くそっ、食われてたま――違う! 獅子は俺を食おうとしているのではなく食われようと――己の手を俺の口の中に押し込もうとしているようだ。
そんなの食えるわけないだろ!
俺はエクスカリバーを取り出し、その腕を切り落とそうと剣を振るう。
だが、獅子は俺から逃げるように一歩後ろに跳んだ。
それと入れ替わるように白蛙の舌が伸びて来て、俺の手首に絡みついた。
「コーマ様っ!」
「大丈夫だ! 逆に投げ飛ばしてやる」
俺はそう言うと、舌を思いっきりひっぱり回転させた。
白蛙の舌が木にひっかかりその巨体が大きく曲がり、別の木に激突した。
無数の葉が落ちてくる。
これで一匹、そう思った時だ。
白蛙の尻から小さな卵が大量に溢れ、卵は一気におたまじゃくしへと孵化する。
さっきから蛙、卵、おたまじゃくし、何を鑑定してもエッグタルトになるため頭がおかしくなりそうだ。
獅子、おたまじゃくし、スライムがじわりじわりと俺に詰め寄ってくる。
このままでは食われる――じゃない、食わされる。
何か――何かいい手段はないか!?
そう思った時だ。
【おい、俺!】
俺の声が聞こえた。
そうだ、困ったときにはこいつがいる。
きっと何かいいアドバイスが――
【逃げろ! はやく逃げるんだ! 死ぬぞ!】
適切なアドバイス来たぁぁぁぁっ!
俺はそう心中で叫ぶと、落ちていたメデューサの首とコメットを抱きかかえて走り出す。
森の中をただ奥へ奥へと。
後ろから追ってくる気配がする。
索敵スキルにはひっかからなくても俺の防衛本能が、生存本能が敵はすぐそばにいると告げる。
何かいい方法がないか!?
そう思った時、俺の目の前に巨大な猛獣が現れた。
ドラゴンだ。高さ十メートルはある巨大なドラゴン。
鑑定をしても料理の名前は表示されない。
「あの足音は魔竜ですね。この森の主です。おそらく今の騒ぎで出てきたのでしょう」
背後を振り向くと、茶獅子、オオタマジャクシ、スライムがこちらに向かってきている。奴らの目的は俺に食べられること。
それならば――と俺は剣を抜き、目の前の魔竜に向かった。
「コメット、メデューサの首を持って俺から離れろ!」
コメットにメデューサの首を預け、俺は彼女にそう言うと、剣を持って魔竜に向かった。
そして――俺はその巨大な口を目指した。
鋭い歯が見えるが、それらは全てエクスカリバーで切り落とす。
そして、俺は一気にその喉の奥にはいっていき、胃に向かう。
感じていた。入ってきた、猛獣も魔竜の中に入ってきた。
そして、胃をエクスカリバーで切り裂き、胴体から脱出すると同時に、エリクシールを取り出し、その傷を塞いだ。
直後――魔竜の姿が石に変わった。
メデューサによる石化ではない、猛獣を食べたことによる状態異常だ。
「終わった……か」
俺はそう言って座り込んだ。
あれを食べていたら俺の末路もあのようになっていたのだろう。
石化することが問題ではない。
あの魔竜の顏。
絶望と地獄を見たような苦悶な表情を浮かべている。
涙まで石になっている。
憐れだ、憐れすぎる。
俺が原因なのだが。
こうして、俺はこの世界に来て最大の危機を乗り切ったのだった。




