賢者の道の作成者
~前回のあらすじ~
コメットちゃんと再会した。
ルシルはトラブルしか起こさないようだ。
考えたら彼女発信のトラブルは両手の指で数えきれないほどある。
ルシルとクリスが一緒に行動していたのは少し予想外だったが。
「コウマ殿、そちらは?」
後ろでシグレが訊ねた。
「あぁ、俺の仲間だ。クリスとも友好がある。ちょっと二人きりで話したいんだが、待っててくれないか?」
仲間という言葉に、コメットちゃんは少し俯いて表情を暗くした。
あぁ、ごめん。フォローは後でする。
シグレは俺とコメットちゃんが二人きりで話すことを了承してくれたので、
誰もいない集会所に案内され、俺は再度状況を確認する。
「……まず、こっちの状況から説明するな」
俺はそう言った。
あの戦いのあと、気付けばこの大陸にいたこと。
俺の封印が解けかかっているために俺の力の大半が封印に注がれていること。
そのせいでアイテムクリエイトが使えなくなり、普段は記憶も失っていること。
この国にある六つの宝玉が72財宝のため集めていること。
賢者の道の上では破壊衝動が抑えられているため、記憶を取り戻していることなどを告げた。
「そうなのですか……えっと、私はどこから説明したらいいのか。まず、ユーリさんはクリスさんとコーマ様の罪を不問にするそうです。コーマ様が魔王であることはあれから他の人には広まっていません」
「それは助かるな」
「コーマ様が冒険者ギルドで使われたギルド証から、コーマ様がこの大陸にいることを知り、ダークシルドに訪れたんです」
メンバーは、ルシルとクリス、コメットちゃん、タラ、そしてエリエールだったらしい。
闇の神子は、ルシルが訪れるのを知っていたそうだ。
そして、ルシルに、ダークエルフとともに壊した賢者の道の修復を依頼したそうだ。
エリエール以外の四人がこの魔の森に来たそうだ。
エリエールが店長を勤めるサフラン雑貨店がフリーマーケットの傘下になっており、この大陸に支部を作ろうとしているのには驚いた。彼女はダークシルドに支店開業の準備をしているそうだ。
「待ってくれ、賢者の道はダークシルド側が一方的に破壊したんじゃないのか?」
「戦禍に巻き込まれることを危惧したダークエルフが闇の神子様とともに壊したそうです。そもそも、賢者の道はダークエルフと神子、二人の力がないと破壊できないそうなので」
「それで、なんでルシルが賢者の道を修復させるんだ?」
「なんでも、ルシル様だそうなんです。この賢者の道を作ったのは」
…………へ?
この魔物避けの結界を、ルシルが?
確かに、強力な魔法によって作られているようだが、大人バージョンのルシルなら余裕で作れそうな気もする。
「ダークエルフは大昔はルシファー様の眷属だったそうなんです。近年、大陸に追われたダークエルフを保護するために、ルシファー様の命令でルシル様の結界魔法でダークエルフの安住の地を作ったそうなんです」
「へぇ、あいつにしてはまともなことをするな」
ダークエルフの歴史は以前にも聞いたが、そんな裏話があったのか。
つまり、ルシルにとってここは思い出の地でもあるわけか。
「理由はだいたいわかったが、そのルシルがなんで今度はダークエルフを滅ぼす側に回ってるんだ? メデューサと手を組んでまで」
「ダークエルフの村を訪れたとき、ダークエルフの長老がルシル様を見て、伝説のルチミナ様が……えっと、あなたのようなチンチクリンなわけがないと言って……それを聞いたルシル様が激怒して、それなら証拠を見せてあげる、私が封印したメデューサの封印を解いて見せるわと、森の中に」
コメットちゃんは言いにくそうに述べた。
本当はもっときついことを言われたんだろうな。
でも、ダークエルフにも共感はできる。
俺も、最初にルシルと出会った時、大人版ルシルと今のルシルとが同一人物だなんて思わなかったもんな。
「タラはルシル様についていってしまって……クリスさんはルシルさんを追って森の中に入ったのが、三週間前のことです」
ルシルの奴は一体何を考えているんだろうな。
流石に腹が立ったからメデューサの封印を解いてダークエルフへの嫌がらせをするとは考えたくないが。
「そうか、クリスの奴はメデューサに石にされちまったか。なむなむ」
ま、石化くらいならアルティメットポーションで回復できるが。
ちなみに、ダークエルフの皆はどこにいるのかと言うと、戦える戦士達はクリスとともにルシルを追い、戦えない人は避難所に移動したそうだ。
避難所はこの村の南側にあり、そこもこの村と同様、魔物を寄せ付けない工夫がされているとか。
「私は、コーマ様がここに来る可能性が高いからと、待たせてもらってました」
「なるほどな……とりあえずはルシルの奴のところに行かないといけないが……厄介だな」
「何がですか?」
「結界の外に出たら俺は記憶を失ってしまうだろ? 俺も本調子じゃないからさ……」
「それなら、私と一緒に行きましょう。コーマ様が記憶を失っても私がフォローします」
「そうだな。頼むよ」
俺とコメットちゃんは集会所を出ると、シグレが待っていた。
シグレには一部を隠して情報を説明し、これから封印が解けたメデューサを探しにいってくるから、もしも一週間経っても俺が戻らなかったらレイシアに知らせるように頼んだ。
シグレは共に行くと言ったが、「俺が戻ってこれなかったらサクヤを殺しやすくなるぞ」と言った時の彼女の表情を見て、少し意地悪し過ぎかなと思った。だが、効果は抜群のようで、彼女はそこに座る。
さて、じゃあ蛇退治といきますか。




