黒い便箋
~前回のあらすじ~
学校の名前が決まった。
第一期スウィートポテト学園の生徒の入学式が終わり、学校はいきなり給食の時間を迎えていた。
仮で分かれた教室に生徒が入り、役割分担して給食を食べていく。
ちなみに、今日の献立は芋のシチューとサラダ、そしてコッペパンと牛乳。
定番の日本の給食だが、子供たちはもちろん、教員の皆も満足気に食べている。
流石に全員分を一人で作るのは無理なので、業者と契約を結び、安心安全に食べられる食事を提供している。
今回俺が提供したのは、全員分のスウィートポテトだ。
俺も一つの教室で子供たちを見ていたが、全員がスウィートポテトを嬉しそうに食べていた。
それが俺にとって最大の報酬と言っていいだろう。
俺はスウィートポテトを食べる子供たちを見回して満足そうに頷き――一番先頭に座る生徒を見て固まった。
「なんでそこにいるんだ? アルジェラ」
目の前にいたのは、生徒全員に支給した制服を着ているが、それ以外は見覚えのある茶色い髪の少女
それは間違いなくアルジェラだった。
「…………?」
アルジェラは首を傾げ、
「グルースが、カガミさんと一緒にいるようにって言ったから……ちょっと待って」
俺を待たせると、何度か頷く。
どうやらクレイと話しているのだろう。
精霊の涙の力もなくなったのか、今のクレイの声は俺には聞こえない。
「クレイがね、『暫く政治は私の分身が本国で行ってるから、その間アルジェラにはここで一般常識を学んでもらうことにしました。変なことを教えたら国家間のいざこざに発展するから気を付けて下さい。シルフィアさんには了承済みです』だって」
他の子は意味がわかっている子もいない子も含めて黙って聞いていた。
シルフィアの奴、そんな大事なことがあれば俺に言ってくれよ。
レイシアの教員採用は断ったが、これは断れそうにないな。
「わかったよ……はぁ、さっきから学校の周りの警備が厳重だと思ったがそれが原因か」
独りごちて、俺はそっと窓の外を見た。
一人の兵の姿が見えた。私服だが、シルフィアとともに王城から抜けて砦に向かった兵の一人だ。
というか、俺がアルティメットポーションで命を救った相手だよな、あいつ。
てか、生徒の中にも、ちょっと何か達人っぽい子供が混じってる気がするんだよな。
護衛なのか暗殺者なのかはわからないが。
ある程度は対処しないといけないな。
クレイがいるからちょっとやそっとの危険なら平気だとは思うが。
「あぁ、食事が終わったらクラス分けテストがあるからな。配布した文房具は全員持ってきてるな」
俺は生徒に確認を取り、テストの問題用紙を配った。
クラスは年齢ではなく、学力別に分けることにした。
一定学力を身に付けたら卒業資格が与えられ、その学力に応じた卒業証書【ブロンズ・シルバー・ゴールド・プラチナ】の卒業ワッペンが与えられる。
それにより就職も有利になるだろう。
他にもゴールド卒業資格者用にスキルや興味に応じた専門的なものを学ぶ場を作る計画もある。
3時間後、試験の結果、文字すら読めない生徒も多いことが判明。
当然と言えば当然か。
この国の識字率はそれほど高くない。
そのため、8割の生徒は文字や簡単な足し算から学ぶ初等クラスに行くことに。
文字を書くことができる生徒もほとんどは初等クラスからだ。
そんな中、胸を張って、難問を全て正解した生徒がいた。
「アルジェラ……賢かったんだな」
教員採用試験と同じ問題も出しているのに、この大陸の歴史から数学問題まで彼女が唯一全問正解しやがった。
俺でも解けない自信がある。
というか、見ていて頭が痛くなる問題なのに。
「グルースの英才教育の賜物か?」
「全部クレイが教えてくれたから」
「それはカンニングだ!」
悪びれもせずにそんなことを言ったアルジェラに、俺はげんなりした口調でアルジェラの頭をはたき、暴力教師のレッテルを自ら貼った。
※※※
翌日から授業は始まった。
多くの生徒が文字の学習に苦戦しているようだ。
アルジェラは文字や初等教育の過程は終了しているので、高等部で頑張っている。
俺はというと、校長室でふんぞり返っている……わけではなく、一人で学校を建てていた。
そんな時、珍客がやってきた。
「カガミ、大変だ!」
やってきたのは火の神子、レイシアだった。
こいつ、まだ自分の国に帰ってなかったのか。
「おぉ、レイシア! もう教員の募集はしていないぞ!?」
校舎の骨組みにぶら下がり、俺はそう言った。
「そうではない! 大変なのだ! 急ぎ魔の森に向かわないといけない」
「魔の森?」
「クリスティーナ――カガミの主人が魔の森でダークエルフに囚われていると、ダークシルドの闇の神子より書状が届いた!」
黒い便箋を出してレイシアが叫んだ。
「……は!?」




