閑話 大切なことを決めよう
~前回のあらすじ~
シグレを正式に採用した。
次の日の入学式を迎える前に一番重要なことを忘れていたことに気付き、シルフィア、サクヤ、俺の三人で話し合いをしていた。
国のトップであるシルフィアをこうも簡単に呼び出すことができる人間がいるとしたら俺くらいなものだろうとサクヤに揶揄された。
でも、本当に重要なことなんだ。
「それで、なんなんですか? コーマ様がそのような焦った顔をなさって、ただ事ではないことはわかっているのですが……」
「あぁ、これは俺一人だとどうしようもならない。二人の力が必要だ」
俺は頭を抱えて言った。
本当にこればかりはどうしようもならないんだ。
「言ってみろ……コーマ。貴様ができないことを私達がどうにかできるとは思っていないが」
「そうか、助かる。本当に助かる。ありがとうな、サクヤ、シルフィア」
そして、俺は二人に礼を言って、俺が抱えている問題について述べた。
すると、サクヤに頭を叩かれた。
「何をしやがるんだ!」
「何をしやがるだと!? 貴様こそどういうつもりだ! そのような些事にシルフィア様を巻き込んで」
「いいんですよ、サクヤ。コーマ様が困っているのは本当のようですから」
シルフィアは俺の悩みを聞いて、吹き出すように笑った後、涙を拭いてそう言った。
「では、三人で考えましょうか……その」
シルフィアは思い出し笑いしそうになるのを堪えて言った。
「学校の名前を」
※※※
入学式用の校長の挨拶を考えていた時に、ふと学校の名前を考えていないことに気付いた。
「アークラーン学園でよいのではないか?」
サクヤは適当なことを言ってきた。
「いや、それだとアークラーンとのつながりが強すぎる。戦争が終われば、俺は西大陸の全ての子供を受け入れることができるような学校にしたいんだ」
「……ちなみに、コーマ様も学校の名前を考えられたのですよね? 参考までに教えてもらえないでしょうか?」
シルフィアの問いに、俺は少し考えた後、「参考になるかはわからんが」と言って、答えた。
「コーマ、意味がわからないんだが。この、二番目の【マチャチュチェッチュ】って言いにくくないか?」
「【ケーンブリジ】はいいと思いますが【オークフォード】というのは。魔物の名前が入っているのはあまりよくないと思います」
本当に参考にならない。
流石にそのまま使うのはよくないかと思って適当にいじったんだが、んー、ここは日本人らしく、「トーダイ」にするか。
そう言ったが、却下された。
結局一から考えることになった。
「コーマ、ふざけてるのか? なんだ、この【キングダムワールド学院】というのは」
「だから、俺にはネーミングセンスがないって言ってるだろ。よし、寺子屋にしよう。なんかサクヤのイメージにぴったりだ」
「テラコヤとはなんだ。意味のわからないことを言うな」
あれ、寺子屋を知らないのか。
寺子屋は江戸時代のものだからな、もしかしたらサクヤの子孫は戦国時代あたりからこっちの世界に転移してきたのかもしれない。
「なぁ、サクヤ。ずっと聞きたいと思ってたんだが、カリアナのご先祖様が別の世界からやってきた、なんて話、聞いたことないか?」
「そのような話は聞いたことがないな。ただ、私達の先祖はかつて主君を守り切れなかったためにここにいるとおばば様が語っておられた」
「主を守り切れなかった……か」
もしかしたらシグレは何か知っているかもしれないな。
そこから、俺が元の世界に戻るための方法も見つかるかもしれない。
元の世界に戻ることができたら、アイテムバッグの中のアイテムを売って左団扇で暮らすことができる。
陸上選手として活躍し、オリンピックにでも出場すれば、簡単に名誉も得られるだろうな。
ドーピングの文字が脳裏をよぎったが、変な薬は使っていないから問題ないだろう。
「それより、学校の名はどうするのだ? この国に学校を作る以上、やはりこの国の特色を活かした名前にしてもらわないと困るぞ」
「この国の特色ってなんだ? 神子様が無個性で可愛いことか?」
俺はそんなことを訊ねた。
「無個性ですか!? 私、無個性なんですか!?」
シルフィアが驚きの声を上げた。
うん、その驚きも平凡だ。
流石は無個性の神子だ。
「……シルフィア様、落ち着いてください。無個性とはいわば、悪いところがないということで、とても良いことです。民の模範に相応しい神子であるということです」
「そうだぞ。普通はいいことだ」
「普通ですか……私、普通ですか……可愛いと言ってくださるのは嬉しいのですが、それ以上にやはりショックです」
シルフィアはそう言って床に倒れた。
仕方ないじゃないか。
レイシアは色物だし、アルジェラはロリキャラ兼世間知らずキャラを貫いているのに。
「コーマ、神子様を困らせるな。この国の特色といえばもっと大事なことがあるだろう」
「例えば?」
「芋だ。この国の干し芋は私が食べてきたどの国の干し芋よりも美味だ」
「……サクヤ、いま、私よりも芋が大事と言いませんでした?」
ゆらりと立ち上がり、シルフィアがサクヤに訊ねた。
「――言ってません」
「言いましたよね、確かに言いましたよね。私よりも芋が大事と」
なるほどな、芋か。
メモ帳に芋、ポテトなどと記していく。
「後はコーマの名をいれたらどうだ? コーマ芋学園……いいではないか」
「よくねいよ。俺の名前が芋の品種みたいじゃねぇか」
「では、コーマ様の性格を入れてみてはどうですか?」
「俺の性格? 俺ってノーマルすぎるからなぁ」
何も参考にもならないぞ、そう言ったら、
「自覚がないところがコーマ様の一番の特徴ですね」
「無礼で傍若無人でわがままで、かと思えば甘すぎるところもあるからな」
サクヤは俺からペンを奪い取り、ノートに「無礼、傍若無人、甘々」などと書いていった。
「やめろって、おい!」
「面白そうですね。サクヤ、次は私です。コーマ様は料理がとても上手で、あ、そういえばライはコーマ様のことを詐欺師みたいな人だと言っていました」
「そんなこと言われてたのか、俺! 酷いな、サクヤ、よこせ! 俺の性格は正直者で生真面目で人格者だ!」
三人の会議は夜遅くまで続いた。
※※※
翌日。
国中の身寄りのない子供、そして学ぶことを目的に入ってきた子供たちの入学式が行われた。
全職員、全生徒集まって、今はただの空き地であるグラウンドに全員が集まった。
「皆さんはこの国の芽です。そして、芽が出たら若木になり、木になる。木が集まれば森になる。森は多くの動物の支える住処となります。そう、皆さんは森となり、この国を支えることができるんです。私は断言しましょう。数十年後、この国を支えるのは君たちであると! ようこそ――」
長い話の終わりに、俺は再度この学校の名前を呼ぼうとして躊躇った。
二度目ではあるが躊躇った。
昨日の会議のメモ帳には、甘々と芋の二つに丸がつけられていた。
昨日は変なテンションだった。
変更できるものなら今からでも変更したいが、もう手遅れだ。
「ようこそ、スウィートポテト学園に! 私は皆さんを歓迎します!」
そろそろ評価3万ポイントに到達します。
日間11位になり、そこから伸び悩んで日間5位以内に結果的に一度も入ることができず、地味な順位のまま進んできましたが、皆さんのおかげでようやくここまで来れました。
ブックマーク、評価をしてくださった皆様、ここまで読んでくださった皆様、真にありがとうございます。
これからも毎日お願いします。




