教員採用面接
~前回のあらすじ~
学校の設計図を手に入れた。
アークラーンに戻ってきた俺は、孤児向けの炊き出しを継続しながら、とりあえず仮の寮と校舎を二日かけて建てた。
これもアマンダの案だ。
とりあえず、仮の校舎と学生寮を建てて、次に職員を集めることになる。
校長兼理事長は、とりあえず学校が独立して採算が取れるようになるまでは俺がすることになるだろう。
だが、教員はそうはいかない。
俺はこの世界に来て間がない……いや、違うな。この世界の記憶が少ないという表現のほうが正しいか。
いや、半年間が追加されても来て間がないと言えるな。
「私に職員になれだと? コーマ、私に向いていないことはわかっているだろ? それとも貴様は私を困らせることを生きがいにしているのか? 炊き出しで私は思い知ったのだ。私は闇に生きる存在であると」
「人を殺すために使ってきたこの手を握って、子供が感謝するのだ。信じられん」とサクヤは身震いしていた。
何か変なスイッチが入ったようだ。
「悪い、貴様に当たっているのはわかっている。安心しろ。シルフィア様が人材募集の知らせを国中に発してくださった。学校を作る案は昔からあってな、シルフィア様も張り切っている」
「本当か、それは助かる」
「明日には多くの教師志望の人間がコーマの作った校舎に集まることになっている」
「そうか。それは楽しみだな。じゃあ、サクヤ、面接官をしてくれ」
三秒で断られました。
※※※
次の日。
教員志望者全員に筆記試験を受けてもらった後、俺は面接官として校舎に座っていた。
「なぁ、暇なのか?」
俺は同じく面接官として同席していたザッカ将軍に訊ねた。
「ははは、ワシも若いころは鬼教官として若き兵たちを扱いた身。この国を支える者を鍛える教官をこの目でみたいのです」
「……いや、鬼教官はいらないからな?」
今のご時世、鬼教官は体罰教師としてバッシングを受けるしな。
ということで、教員面接が始まった。
教員としては錬金術師や魔術師といった研究肌の人間が多く、逆に数学者や法学者、言語学者といった所謂「先生」と呼ばれる人間は少なかった。
何か凄い勲章とかを持っているが何を言っているかわからない七十歳のお爺さんよりも、やる気のありそうな修道士を採用した。
修道士といっても男なのが残念だが。シスターさんはいないのかな。
最初はどうしたものかと思って戸惑っていた面接も、人数を重ねるごとに慣れてきた。
時々ザッカ将軍が、「そのような太った体で若者を鍛えられると思っておるのか」と暴走してしまった以外は問題なく進行した。
「次の方どうぞ」
俺は慣れた口調で次の教師候補の人を迎え入れた。
「四十七番、レイシアだ! 特技は剣術と槍術だ」
「呼んでない。ザッカ将軍、追い出してくれ!」
「カガミ! 待て、実は――」
「神子様、本日はシルフィア様との同盟の再確認に来られたはずでしょう。さぁ、御案内しますから」
「待て、離せ!」
ザッカ将軍に連れられて、レイシアが退場。
本当に何しに来たんだ、凝った登場しやがって。
次の方どうぞ。
俺は嘆息混じりにそう言った。
次に入ってきたのは黒髪の美女だった。
俺より少し年上だろうか?
肌の色といい、日本人を思わせる。
「…………あ……あぁ、どうぞお座りください。えっと、ナナミさん?」
「いえ、それは偽名です」
「……は?」
思わぬぶっこみ発言に俺は耳を疑った。
その反応にナナミ(偽名)は含み笑いをする。
「えっと、じゃあ東大陸のリーリウム王国出身というのは?」
「もちろん嘘です。出身はカリアナです」
カリアナってサクヤの同郷か。
ってそうじゃない。なんで教員採用面接の書類に嘘をついて、それでいきなり嘘だと暴露するんだよ。
「……本名を聞かせてくれませんか? と言っても、偽名で嘘ばかりつくあなたを教員に採用するのは難しくなったわけですが」
俺が正直にそう言うと、ナナミ(偽名)は首を傾げて、
「……コウマ殿、本当にまだ気付かないのですか?」
「は?」
疑問に思い、俺はさらに気付いた。
こいつ、いま俺の事をコウマって言ったか?
コーマじゃなく。
俺の名を、正しく呼んだのは彼女が初めてだ。
「お久しぶりです、コウマ殿。ギルド試験、タタミのい草を採取するときにはお世話になりました」
「……あ……あぁ」
間違いない。こいつは俺を――失われた半年間の俺を知っている人間だ。
ならば、記憶を失っていることを正直に言うか?
ていうか、俺、半年間にこんな日本風美女と出会っていたのか。
「コウマ殿がここで学校を作ると聞いたときは耳を疑いました。私のことを採用していただけますよね? 理由は言わなくてもわかるかと思いますが」
「……あ、あぁ。よろしく頼むよ。ゆっくりしてくれ。でも、悪いが履歴書に偽名はまずいから本名を書いてくれ。俺以外には見られないようにするから」
「あまりゆっくりはできないのですが。それと、正しい履歴書は用意しております」
そう言って、俺は彼女から履歴書を受け取る。
「ゆっくりできないのか?」
「はい、サクヤを殺したら、すぐにカリアナに帰らないといけませんので」
……は?
俺は履歴書を見て、唸り声を出しそうになる。
履歴書の名前にはこう書かれていた。
【シグレ】
サクヤの姉であり、彼女を殺すために訪れると言われる刺客の名前だった。




