即位パーティーと退位パーティー
~前回のあらすじ~
エクスカリバーが完成した。
エクスカリバーの剣の伝説。
先程言った王様の剣の方が有名だろう。
アーサー王伝説に登場し、王家の血を継ぐものだけが抜けるという伝説の剣だ。
剣の中でも一、二を争うほど有名である。
まさか、その伝説の剣を自分で作ることになるとは思わなかった。
だが、それよりも、やはり、一番信じられないのは――
「陛下、陛下即位のパーティーは大盛況ですな。いやはや、ワシもこれほど旨い酒は初めてだ」
ガルフが真っ赤な料理と透明の酒を飲んで笑いながら言う。
そう、俺が一番信じられないのは――、
「陛下、酒が足りねぇぞ」
「陛下ぁ、このフライドポテトって唐揚げってつまみもっと用意してくれよ」
「陛下陛下! 俺の分もプラチナハンター作ってくれよ。明日でいいからよぉ!」
こいつらが俺のことを陛下陛下言いながら、全然敬ってないことだ。
酔っぱらってプラチナハンマーではなくプラチナハンターになってるし。
プラチナランクのハンターみたいだ。最低ランクはブロンズハンターか?
それより、なんで俺が自分のパーティーの料理を自分で作らないといけないんだよ。
「酒が足りないって、俺は酒職人じゃねぇ! それは自分で用意しろ! 唐揚げ三人前上がった。おい、ゴイヌ、運んでくれ。おい、その芋は生だ、毒があるんだから食うなって! ゴレネコ! プラチナハンマー後で打ってやるから、お前は芋の皮を剥くの手伝えよ!」
俺は酒場の中で一人仕切っていた。
陛下就任パーティーなんて認めていないのに、いつの間にかさっき行った酒場にパーティー会場がセッティングされていた。
「気にするな、陛下。こいつらはパーティーのネタがあればなんでもいいのさ。陛下が断れば誰も止めやせん」
「陛下って呼ぶな……はぁ、でもさ、本当に貰って良かったのか? お前たちにとっては聖宝なんだろ?」
「みんな嬉しいのさ。ワシ達がこれまで守ってきたオリハルコンが、ただの石の塊なんかじゃない、きっちりとした武器に生まれ変わったことにな」
「そういうものかな」
ようやく料理も揃い、俺もジュースを飲もうとして空いている席に座り、唐揚げを食べた。
……うまいなぁ、なんで低温の脂で黒焦げになるまで揚げてこんなに旨いんだよ。
見た目はほとんど炭なのに。
それにしても、何か忘れているような気がするんだが。
「……あ、設計士だ! 俺、設計士を探しに来たんだった」
「陛下、今まで忘れてたのかよ」
「だから陛下って呼ぶな。そもそもここは自治領なんだから陛下じゃなくて領主だろ」
「何を言ってるんだ。領や国なんて小さい単位のもんじゃねぇぞ? 陛下は、我等全ドワーフが仕えるべき主になったんだぞ?」
「……マジかよ。ドワーフの王がただの人間でお前等はいいのか?」
「それこそ問題じゃない。ワシ達のステータスは種族ではなく鍛冶の腕だからな」
ガルフは豪快に笑い、
「そうだろ、お前ら!」
「その通り! 陛下、さっきの腕前お見事でした」
「唐揚げもっと作ってくれたら一生ついていくぞ」
「酒がないぞ、陛下!」
全く、本当に豪快な種族だ。
……もしもこいつらみたいな奴らばかりなら、種族差別なんて起きないんだろうなぁ。
「って、そうじゃねぇ。設計士はどこなんだ、ガルフ」
「あぁ、もう少し待ってろ。これだけ騒いでいたらすぐに来るさ」
「騒いでいたら?」
首を傾げた――直後。
扉が大きく開かれ、背の低い姉ちゃんが入ってきた。
「宴の音がするなぁ! 誰か死んだか!?」
いきなり不謹慎なこと言う女が来たぁぁっ!
ていうか、ドワーフって誰か死んだらいつもこんな宴会してるのか?
「おう、アマンダ! 聞いてくれ、このコーマがオリハルコンを剣にして陛下になったんだ」
「へぇ、それはめでたいね! じゃあ陛下の就任をいわって乾杯だ! 野郎共!」
「「「「乾杯!」」」」
何度目かになる乾杯の音頭に、石のジョッキがぶつかる音が響き渡った。
酒樽が次々に空になっていく。
「おい、アマンダ! まずは陛下に挨拶せんかい」
「だから陛下って言うな」
ガルフのアマンダへの呼びかけに俺はもう何十度目かになるツッコミを入れた。
俺が王になるなんてありえないだろ。
「あぁ、悪い悪い。私は前のここの領主で設計士のアマンダさ」
「設計士、あぁ、ガルフの言ってた設計士ってあんたなのか。前の領主もしてるなんてすごいな。今の領主はここにいるのか?」
俺が何気なしに訊ねたら、ガルフとアマンダが同じ方向を指さした。
ていうか、俺の方を指さした。
「なんでだよ!」
「ワシ達の王なんだ。ここの領主も同然じゃろ?」
「いやぁ、領主って言っても形だけのことだしね。よろしく頼むよ」
「嫌だ! 絶対面倒なのわかってるし!」
「まぁまぁ、遠慮なさらずに」
「遠慮じゃねぇっ!」
最終的に、陛下命令ということでアマンダが領主として再任されるというオチになってしまった。
もちろん、その後で退位宣言した。
ドワーフ達からブーイングが上がったが、退位記念パーティーを行い、酒は全部俺が出すと言ったら、喜んでパーティーが開かれた。
結局、翌日になると俺を含め、ほぼ全てのドワーフが酔いつぶれていた。
アマンダは酒を飲みながらも俺の話を聞き、設計図を書き上げてくれた。
そして、翌朝。
「元陛下、これが設計図だよ。私の持っている知識とコーマの知識、両方使わせてもらったからね」
「ありがとうな、アマンダ」
昨夜、俺とアマンダの二人で話し合い、最終はアマンダが仕上げた設計図を受け取る。
「私も面白かったよ。作ってみたいねぇ、目が動く肖像画とか、夜中に上ると段が増えている階段とか」
「だからそんなの本当はないんだって」
途中で学校の怪談話に花が咲いたが、設計図の出来栄えは俺が思っている以上に凄いものだった。
「ガルフも世話になったな」
「あぁ、ワシも楽しかった。コーマ、覚えておいてくれ。コーマは退位を宣言したが、ワシらドワーフは必要があれば主の力になる。これは古くからの盟約のようなものだ。それだけは覚えておいてくれ」
「わかったよ。じゃあ、何か頼むときは酒樽を大量に持って会いに来るよ」
「おう、その時は是非頼む!」
俺は短い間に仲良くなったドワーフ達に別れを告げ、アークラーン王城に戻るべく足を速めた。




