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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode09 通常運転

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設計士探しとドワーフ自治領

~前回のあらすじ~

学校を作ることにした。

 土地を貰った。

 今までの報酬としては安すぎるくらいだとシルフィアは言っていたが、日本育ちの俺にとっては土地はやはり貴重だ。

 しかも首都の一等地。日本でいうと銀座の一角の土地といってもいいだろう。


 とりあえず設計はどうするかな?

 自分で考えてもいいんだが。

 建設向けのアイテムが欲しいってアイテムバッグに願ったら、なんか水が湧き出る魔道具やら自由に変形できる粘土やら、他にも下水道代わりになりそうなものや照明器具になりそうなものまで出てきた。

 ここまでアイテムが揃っていたら、ゲーム感覚で建物が作れそうだ。


 だが、学校という建物を作る以上、プロの意見が欲しい。

 例えば、俺が知っている学校の知識では、教室は左側に窓があるという知識。

 これは、日本では右利きの学生が多いため、右手でノートに何かを書いている時に手元が影にならないように、という配慮によるものだ。

 この世界でも見たところ右利きの人間が多いので、そういう設計は必要だろう。


 とにかく、そういうわけで、俺はプロの意見を求めることにした。


「でさ、設計のプロを探してるんだが、知らないか? 助けてサクえもん!」

「貴様は――飛び出したと思えばいきなり泣きついてくるとは。プライドはないのか?」

「いきなり現れたどこの馬の骨とも知らない俺に対して助けを求めたお前が言うか、それ」

「ぐっ」


 俺の意地悪な返しにサクヤがうめき声を発して困った顔になる。

 意地悪をしてしまった。


「そういうことなら、ドワーフ自治領に行けばいいのではないか?」

「ドワーフ自治領……あぁ、何度か話題に上がったな。うん、ドワーフ自治領か。ドワーフか。酒でも持っていけば仲良くなれる種族だよな?」

「詳しいな。確かにドワーフは物造りと酒をこよなく愛する種族だ。だが、それで仲良くなれるかと聞かれたらそうではないぞ? 待っていろ、シルフィア様に書状を書いていただく。それを持っていけば――」

「あぁ、そういうのは要らないや。シルフィアは、今は忙しそうだし。じゃあ、サクヤ。俺はドワーフ自治領に行ってくるから、代わりに正午に行う子供向けの炊き出し、お前がやってくれよ」


 そう言って、俺はアイテムバッグから寸胴鍋を取り出す。

 中には俺が作った芋汁が入っている。


「場所はわかるな」

「待て、コーマ! 私はそういうのは――」

「お前も国の要職に近い人間なんだ。そういうのを体験しておけ」


 俺は笑顔でそう言うと、近くにあった窓から飛び降りた。


   ※※※


 ドワーフ自治領。

 アークラーンの南方にある一角。

 良質な鉱山があるらしく、多くのドワーフが鉱山の中で働き、鉱石を掘り出して、それを材料にして様々なものを作っているそうだ。

 税金を免除し、自治を与える代わりに、アークラーンに多くの武器や防具を卸しているという。


 一人で移動しているので、全力を出した結果、途中大きな橋を渡り、僅か3時間で俺はドワーフ自治領に辿りついた。

 景色を楽しむ暇もない速度だ。


「んー、結構土地も余ってるし、産業を興そうと思えばいろいろできそうな気がするなぁ」


 そういえば、魔道具の中に水を大量に出すものもあったな。

 田んぼ作らせてみるか、田んぼ。

 サクヤも日本風の国出身ならきっとわかってくれるだろう。


 品種改良を重ねてコシヒカリをいつか作ってほしいものだ。


「あぁ、でも魔物が出るから大変なんだよな……んー、狂走竜アグリアステップドラゴンに巡回させて見回りさせるという手もあるが、俺がいなくなったらあいつら言うこと聞くのかなぁ」


 今でも狂走竜アグリアステップドラゴンとは良好な関係を築くことに成功している。

 あいつらの巣に近付いた時、俺に首を垂れていたからな。

 背中に乗ってほしそうにしていたが、俺の場合は走ったほうが早いから断った。


 そんなことを思いながら、俺はドワーフ自治領の中に入っていた。


 自治領とはいっても、別の国境や関所というものはない。

 いつドワーフ自治領の中に入ったのかわからなかった。


「これがドワーフ自治領か……凄いな」


 最初に俺を出迎えたのは、巨大な竜の石像だった。

 高さは400メートルはあるんじゃないだろうか?


 今にも飛び出しそうな大きな翼のドラゴンの石像が立っている。


「すげぇなぁ。本物みたいだ……かっけぇなぁ」

「おう、若いの。この像の凄さがわかるか? わかるよな」


 横を見ると、背の低い、長い顎鬚を蓄えたおじさんが立っていた。


「誰が作ったのかしらねぇが、ワシ達ドワーフはこの像を越える何かを残そうと日々切磋琢磨しているのさ」

「切磋琢磨か。いいな」


 職人の心意気を感じる。

 俺が心の底からそう呟くと、ドワーフのおっさんは柔和な笑みを浮かべ、


「兄ちゃんは商人かい?」

「いや、設計士を探しに来たんだ」

「おぉ、そうかそうか。設計士といったら、凄腕の設計士がいるんだが、気難しい奴でな。あいつが起きるのは夜になってからだし、どうだ? それまでワシが案内してやろうか? もちろん有料じゃが、このドワーフ自治領についてはワシが一番詳しいと思うぞ?」

「んー、じゃあ頼むわ。そうだなぁ、鍛冶体験みたいなものができたら最高なんだが」

「がはははは、鍛冶体験か。そんなことを言う奴は珍しいな。そんな細枝のようなひょろい腕で武器を鍛えられるのか?」


 あぁ、俺にもわからないよ。

 でも、試してみたいんだよな。 

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