エピローグ
~前回のあらすじ~
アルジェラはグルースと別れた。
「……高い高い高い高い高い高い高い高い高い」
「……落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる落ちる」
簀巻きにされたシルフィアと、簀巻きにされたレイシアが二人並んでガクガク震えていた。
聖竜のゴンドラに乗って、俺達は再度大聖殿を目指していた。
アルジェラとも仲良くなったことで、今から、アークラーン、フレアランド、アースチャイルドの三国で同盟をすることにした。
どうやってアルジェラと仲良くなったのかは後で知ったわけだが、酷いなぁ、記憶のある俺は。
ちなみに、今回の紛れもないMVPであるはずの俺は、今は呼びかけても返事がない。
再度記憶を失う状態に、つまり今の俺になる直前、レイシアに「ちょっと今回は無理し過ぎた。しばらく表に出られないって伝えておいてくれ」と言っていたそうだ。
「高いね、カガミさん」
アルジェラは俺のことをカガミさんと呼ぶ。レイシアがカガミと呼んでいたから、名前よりも苗字のほうを先に覚えたからだ。
レイシアみたいに呼び捨てでいいのに、と言ったら、「グルースが自分以外の人を呼ぶときは、最低でも「さん」を付けなさいって」と答えた。
グルースの言いつけをしっかりと守っているようだ。
「あぁ、高いな、アルジェラ……アルジェラは高いところは好きか?」
「うん。大好き」
無邪気な笑みを浮かべる彼女を見て、俺は自分の中にいるもう一人の俺に感謝した。
そして、静かになったなぁ、と思ったら、後ろでシルフィアとレイシアが泡を吹いて気絶していた。
「おい、サクヤ。二人を放っておいていいのか?」
「問題ない。副作用はない薬を打ち込んだからな」
「……おい。シルフィアはお前の主君だろうが。神子に対する敬意がないのかよ」
「ほう? レイシア様から聞いた話によると、貴様はクレイ様のことを「ナビ精霊」だとか「駄精霊」と呼んでいたそうだが?」
それが本当だとしたら、とてもひどい話だが、
「記憶があるときの俺の様子は記憶にないよ」
と言い切った。本当に記憶にないからな。
ちなみに、アースチャイルドの仕組みはあれから大きく変わった。
アルジェラを越える絶対的な権力者が現れたからだ。
その名はクレイ。
俺が大量に作った飴玉をアルジェラが舐めている間、クレイは人々の前に姿を現す。
そして、クレイが直接指示をだす。
今回、アルジェラを利用し、彼女の身を危険に追いやった神官長は更迭となったと聞いた。
もともと世渡りと隠し事の才能しかない男だったそうだった。
彼を含め、今回の人事により免責となった人達が不正な手段で溜め込んでいた資産は全て没収となり、今回の事件で最たる被害者と言えるだろう農家の方々の支援金の一部になることが決まった。
あと、聖都の裏に湧いた温泉は既に観光地になるべく工事を始めていて、数年後には聖都をそのまま使い、西大陸随一の温泉街ができるそうだ。
観光大国になるだろうな、アースチャイルドは。
※※※
闇の国、ダークシルド。
その名前とは裏腹に、港に明るい陽射しが差し込んできた。
この国にはこんな言葉がある。
光があるから闇が際立つ。
闇があるから光が輝く。
闇と光は裏と表であると同時に同じである。
もっとも、この船は光も闇もないんだろうなぁ、と私は思っていました。
突然どこからともなく現れた(ということになっている)スライムに襲われながらも、なんとか無事に航海を終えてダークシルドにたどり着いた交易船。
そこから私達は降りました。
「……ねぇ、クリス。今更なんだけどさ、クリスに持ち運び転移陣預けて、あとで私が飛んだらよかったんじゃないの?」
顔色を真っ青にして、ルシルちゃんが言いました。
本当に今更ですね。
気付かなかった私が悪いんですけれど。
コメットちゃんとタラくんも降りてきました。
さて、これからコーマさんを探すわけですが、どこから探したらいいのか。
やはりコーマさんが一度訪れたという冒険者ギルドに行くのが確実でしょうね。
「おい、聞いたか? アークラーンとフレアランドが、今度はアースチャイルドと手を組んだそうだ」
「マジかよ。さすがに魔の森は抜けられないと思うが……なんで前まで戦争してたのにいきなり手を組んでるんだよ」
「良く知らねぇが、なんか一人の男が神子様を集めて何かしているそうだ」
「何かって、何だよ」
「そんなの俺が知るわけないだろ」
立ち去っていく男の人たちを見て、私達は言いました。
絶対にコーマさんの仕業だと。
ならば、目指すは三つの国のどこかでしょうか?
フレアランドは私の実家がありますから、できれば行きたくないんです。
なら、最初はやはり隣のアースチャイルドに行くべきでしょうか?
そう思った時でした。
「……勇者クリスティーナ様ですね」
「はい……そうですが……あれ? あなた?」
「はじめまして。私は闇の神子様の従者をしているものです。闇の神子様がクリスティーナ様との面会を希望なさっています。もしよろしければ、そちらの皆様もご一緒にどうぞ」
はじめまして。
そうですね、私と彼女は確かに話したことはありません。
でも、はっきりと覚えています。
この子――確か盲目の神子と呼ばれていた神子様の脇にいた少女です。
ビル・ブランデで、コーリーちゃんと一緒に見た子です。
この子も目が見えなかったはずなんですが。
「あの……私に何の御用でしょうか?」
「クリスティーナ様の従者であるコーマさんについて、と言えばよろしいでしょうか?」
……これは話を聞くしかなさそうですね。
でも……なんでしょう。
泥沼にはまっている気がしました。
中途半端ですが、ここでEpisode08は終わりです。
次からEpisode09に移ります。役者も揃ったので。
ちょっと最近は話が忙しかったので、日常編が挟まります。




