演技と和解
~前回のあらすじ~
アルジェラの身体を切り裂いた。
『アルジェラアアアァァァっ!』
クレイの悲鳴が響いた。
真っ二つになったアルジェラの上半身が土となって崩れ落ち、そして、下半身もまた膝から崩れ落ちる。
土の宝玉からクレイが飛び出した。
そして、俺にはその意味は全く理解できない、何か呪文のようなものを唱える。
下半身の形を保っていた土が四方にわかれていき、そこに土で汚れたアルジェラが無傷の状態で倒れていた。
索敵スキルで、アルジェラの気配が下半身にいることを知っていたからな。
『……アルジェラ……嘘、アルジェラ、お願い、息をして』
「無駄だ、アルジェラは今、死んでいる。肉体は無事でも、あの土の人形はあの時はアルジェラだったんだ。それを二つに切った。それで無事でいられるほど、あの時のアルジェラは強くない」
『そんな……』
そして、俺は右手のそれを前に掲げた。
「アルジェラの魂は、今、この中にある」
……………………………………………………
魂の杯【魔道具】 レア度:72財宝
魂の杯と契約を結ぶと、契約者の死後、その力を封印する。
水を入れて飲むことでその力を吸収することができる。
……………………………………………………
魂の杯。
俺にとって始まりの杯。
コメットちゃんとゴーリキの魂をこの世に繋ぎ留め、グーとタラの二人と融合するきっかけとなったこの杯。
契約をしないと魂を封印することができないはずのこの杯。
だが、例外がある。
その例外とは何なのか――それはルシファーの知識の中にあった。
条件を満たしている今、
「いつでも魂を彼女の身体に戻すことは可能だ」
『本当!? じゃあ、今すぐアルジェラの魂を元に……』
「今はダメじゃないのか?」
俺が訊ねる。
今、アルジェラの魂を元に戻せばどうなるか?
間違いなく彼女は狂う。
唯一のよりどころだったグルースに拒絶されたのだ。
まぁ、簡単に解決する方法はあるんだよな。
俺はグルースを見て、邪悪な――それこそ魔王の笑みを浮かべた。
※※※
「ん……」
アルジェラから小さな吐息が漏れた。
彼女が魂をその身に戻してから20分後のことだ。
エリクシールを振りかけたことにより、消耗しきっていたHPとMPは完全に回復していたが、時間がかかったな。
アルジェラが起きて最初に見たのは、グルースの笑顔だっただろう。
彼女は、グルースの膝の上で眠っていたから。まるで子供のように。
「……グルース?」
「アルジェラ、目を覚ましたかい?」
「……グルース、アルのこと嫌いじゃないの?」
「何を言っているんだ、アルジェラ。私が君のことを嫌うわけがないだろ。きっと悪い夢を見ていたんだな」
そう言って、グルースはアルジェラの頭を撫でた。
それで、アルジェラは本当に嬉しそうに、それこそ年相応の笑顔を浮かべた。
「グルース、アル……グルースの言ったこと守れなかったの。クレイゴーレムは消えちゃったし、クレイとの融合も……」
「いいんだよ、アルジェラ。もう終わったんだ。全部終わったんだよ」
「じゃあ、アルの仕事終わったの?」
「ああ、終わったよ」
「ずっとグルースと一緒にいられるの?」
アルジェラの弾むような声に、グルースは笑顔のまま首を振った。
「ごめんよ、アルジェラ。私はこれから大切な仕事があるんだ。アルジェラのような子供を救わないといけない。君は、あそこにいるお兄さんとお姉さんと一緒に行動してほしい。そして、フレアランド、アークラーンの二つの国と同盟を結ぶんだ」
「グルースと一緒にいちゃダメなの?」
「ごめんよ、アルジェラ。でも、必ずアルジェラに会いに行くからね」
「グルースはそうしてほしいの?」
「ああ」
「……うん、わかった!」
アルジェラが笑顔で頷いた。
終わった。
全部終わった。
二人の様子を離れたところから見ていた俺はほくそ笑んだ。
いやぁ、グルース、なかなかの名演技だったぞ。
まぁ、あれだけの恐怖体験を味わわせたら、命がけで演技をするだろうな。
中々に難しいんだぞ。怪我を負わせずに恐怖で相手を縛りつけるのって。
こっちにゆっくり歩いてきて、グルースの様子を何度も気にするアルジェラ。
笑顔で手を振るグルースを見て、最後にアルジェラはレイシアに抱き着いた。
『お帰りなさい、アルジェラ』
「ただいま、クレイ……あの、ごめんね」
『何がごめんなの?』
「ううん、なんでもない」
クレイとアルジェラも無事に和解できたようだな。
それにしても、これから大変だろうな。
アースチャイルドの再建。土の撤去はすぐにできるだろうが、荒らされた畑を元に戻すのは時間がかかるだろう。
最悪、アルジェラの責任になりかねない。
そこは俺達が守ってやらないとな。
そう思った時だ。
「あれを見ろ、カガミ!」
「あれって……おい、嘘だろ」
そこは崩れた壁の向こう側、聖都の手前側。
そこから、大量の水が噴き出していた。
よく見ると、湯気のようなものが上がっている。
「……あれってもしかして」
「あぁ、フレアランドにも僻地に存在はするが……まさかこのような場所で噴き出るとは思わなかった」
その日――アースチャイルドの聖都に温泉が湧き出た。
俺がエントキラーで叩き割った大地から。
投稿する場所間違えてました。




