表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第二部 西大陸編 Episode08  六玉収集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

270/742

アルジェラとグルース

~前回のあらすじ~

アルジェラが巨大化していた。

「なんで、あんなにでかくなってるんだよ」

『土の力を吸収している……あんなことをしたらアルジェラの力が持たない……お願い、変な人! アルジェラを助けて』

「誰が変な人だ! 助けろって言われても、一体どうすればいいんだ? とりあえず最近ろくなもの食べてないだろうから、ごはんでも与えてみるか?」


 割と本気でそんなことを言ってみる。

 餌付けはコミュニケーションの基本だ。


「カガミの料理は精霊の力を高める効果がある。そんなもの与えたら逆効果だろうが」


 抱きかかえられたままのレイシアはそう言って、「いい加減に下ろせ」と言ったので、下ろしてやる。


「おい、アルジェラを普通の人間に戻す方法はないのか?」

『今の彼女はまだ完全に精霊化していない。精霊の力を全部使い切れば元に戻る可能性があるわ』

「精霊の力を全部失えばって、土から無尽蔵にエネルギーを搾取してるのだよな?」


 俺の問いにクレイが訊ね、レイシアが苦悶の表情を浮かべる。

 確かに、土から精霊の力を得ることができるのだとしたら、エネルギーを全て奪い取るのは難しい。

 土の力が届かない場所……湖の上、それとも空の上?

 いっそのこと、鉄の檻でも作ってそこに入れるという手もあるが。


 アイテムクリエイトが使えない今は檻を作るのは無理か。

 策をめぐらせる俺だったが、有効な手段が見つからない。


 くそっ、何か良い手はないのか?


「グルース、お願い、出て来て、グルース」


 今にも泣きそうな声であたりを見回すアルジェラ。

 彼女の足元には廃墟があった。

 恐らく、そこがもともとアルジェラ達が修行を行ったという建物なんだろう。


 だが、今はそこは崩れ去っており、人が住んでいる気配はまるで感じられない。

 アルジェラが壊したのか、もともと壊れていたのかはわからない。


 ここにはグルースはいない。

 それだけは確かだ。


――ピキっ


 彼女の身体から音が聞こえた。

 ヒビが入ったのだ。


 彼女を止める手段だけが見つからないまま、岩場に隠れて遠巻きにアルジェラを見る。

 時間だけが過ぎていく。

 クレイが説得に行きたいといったが、クレイの言葉を今のアルジェラが聞くとは思えない。

 このままだと二つの意味で時間が持たない。

 アルジェラの身体もそうだが、俺の身体もそろそろやばい。

 やはり、力づくで湖に浮かべるしかないか。


 でも船がないんだよなぁ。


 そう思った時だ。


「アルジェラ! 何をしている、アルジェラ!」


 杖をついた男の声が聞こえた。

 茶色い髪、細身で鼻の高い中年の男だ。

 高そうな服を身に纏っている。


『あれがグルースよ』

「あいつが……」


 あいつが今回の全ての元凶といってもいい男か。

 くそっ、ここでぶん殴ってやったらすっきりするんだろうが、そんなことをしても何も解決しない。むしろ、アルジェラが怒り狂って事態が悪化するのは明らかだ。


 横でも怒りの形相でレイシアが佇んでいる。

 こいつも堪えているんだよな。


「グルース……」

「アルジェラ! すぐに戻れ! 壁を作ってクレイゴーレムを作ってフレアランドを攻めるんだ! いや、その姿ならクレイゴーレムを作るまでもない、お前ひとりでフレアランドに攻め込め! 神官長はお怒りだぞ!」

「お願い、グルース、アルと一緒にいて」

「ああ、一緒にいてやる! お前がフレアランド、アークラーン、ウィンドポーン、アクアポリス、ダークシルドを落とせばずっと一緒にいられる。水の都アクアポリスを私が治めることになっているからな! そこで一緒に暮らそう!」

「いや、お願い、今から一緒に――」

「我儘言うな! お前は私の命令に従っていればいいんだ」

「……グルース」


 その時、アルジェラの身体に罅が広がった。

 皮膚の部分が陶器のように砕け散り、巨大なクレイゴーレムのような姿になる。

 と同時に、声も今までのアルジェラの声から低い声になった。


『グルース、アルと一緒にいて』


 アルジェラの手がグルースへと迫った。

 それを見たグルースは恐怖のあまりその場に倒れ込む。

 恐怖で顔が歪み、立ち上がることもできない。


「よ、よるな! よるな化け物」


 そう言って杖をぶんぶんと振るう。

 その瞬間、本当の意味でアルジェラは壊れた。壊れてしまった。


『い……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』


 彼女にとって唯一の心のよりどころだったグルースからの拒絶の言葉に、アルジェラの身体がさらに膨らんでいく。

 もう、そこには彼女の原型はまるでない。

 ただただ大きくなっていく。


『ダメ! このままだとアルジェラが――』


 クレイが叫んだ。

 このままだと、本当にアルジェラが壊れてしまう。


「くそっ、こうなったら一か八かだ」


 俺は地を蹴りアイテムバッグから二度と使うことがないだろうと思っていたアイテムを取り出した。

 そして、俺が一直線にアルジェラに向かって飛ぶ。


 アルジェラが俺に気付いた。

 巨大な手が、さながら虫を叩き落とすみたいに俺の頭上に迫った。


「ぐはっ」


 地面に叩きつけられる。背骨が折れたんじゃないだろうか。

 アイテムバッグからエリクシールを取り出して、自分に振りかけた。


 それで一気に怪我も回復し、アイテムバッグからエントキラーを取り出した。


「痛いかもしれないが、我慢しろよっ! アルジェラっ!!」


 俺はそう叫ぶと、アルジェラがさらに俺を叩き潰そうとしてきたが、俺のエントキラーがアルジェラの腕を両断した。

 痛みはないのか、アルジェラは何も言わずに反対の手を俺に向けてくるが、次の瞬間、俺のエントキラーが今度はアルジェラの身体を左右に両断した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ