テーブルマウンテンと湖の湖畔
~前回のあらすじ~
土の壁が崩壊した。
レイシアを抱きかかえたまま、俺は崩れ落ちた壁の上を通り過ぎ、さらに走る。
壁の向こうの町は今まで平穏そのものなんだったんだろうな。
途中で通り過ぎた町では南から走ってきた謎の男――つまりは俺に対して警戒して矢で攻撃をしてきたが、当然逃げる。
俺の身体は矢が当たっても平気だろうが、レイシアはそうはいかないからな。
とりあえず一気に町の中に入って行った。
「金持ってそうな奴らばかりだな」
「身分の高い人間と町を守ることができる人間、あと最低限農業に従事させる人間だけを残したのだろう。もっとも、この様子を見ると、農民はこの町の中には住まわせて貰っていないようだな」
レイシアは抱きかかえられたまま思ったことを言った。
もしも地球が爆発するとなったとき、宇宙船で地球を脱出するとなったら、船に乗ることができる人間の餞別ってきっとこんな風にされちまうんだろうな、とか思ってみる。
「見ろ、カガミ! あそこの建物の屋上で私達を見つけて真っ先に建物の中に逃げ込んだ男、確か土の神子に仕える神官長だぞ」
「んな小物どうでもいいんだよ」
「あははは、小物か。実質アースチャイルドのナンバー2と呼ばれる男を小物とは恐れ入る。そうだな、確かに民を見捨てて一人で逃げ出すような男は小物にすぎん。今は無視するが、後でしかるべき処置をするとしよう」
何故かとても嬉しそうにレイシアが笑った。
でだ
「おい、しっかりナビしろ。なんのためにお前を連れてきたと思ってるんだ」
懐に入れた土の宝玉に向かって叫ぶ。
『ヒトを案内人のように扱って』
「お前は人じゃなくて精霊だろうが」
『言葉の綾よ。それより、北に台形型の山が見える? テーブルマウンテン』
「あぁ、見える。まるで踏み台みたいな山だが、あそこにいるのか?」
『あの山の上に湖があるわ。アルジェラはその湖の畔にいると思う』
「湖の畔? そこに何があるんだ?」
『そこは、アルジェラとグルースが三年間、二人で修業した場所らしいの』
なるほど。思い出の地としてはあながち間違っていない。
だが、「らしい」と言うってことは、クレイも詳しい場所は知らないのか。
「そういえば、土の神子になるための修行って何をするんだ? やっぱり土に埋まったりするのか?」
『そんな内容じゃないわよ。あそこの薬草は魔力を高める力があるのよ。グルースはものすごい腕の錬金術師でね。その草を使って、たった一週間で魔力の超薬を作成することができるの。アルジェラはその薬を飲んで魔力を高めたわけよ』
……一週間で魔力の超薬を作るのか。それは凄いな。
うん、普通に凄い。
だって、つまり時間をかけたら魔力を大きく高めることができるってことなんだからな。
「魔力が高ければ神子になれるのか?」
『もちろん、神子との相性も必要よ。もっとも、その条件はアルジェラは生まれながらにして満たしていたと思うの。それは努力でどうこうなるものじゃないから。だからこそグルースはアルジェラを引き取ったんでしょうね』
「なるほどな。ちなみに、1分くらいで魔力の神薬を作ることができる人間がいるとしたら、お前はどう思う?」
『そんな人間いるわけないでしょ……過去に魔力の神薬を作った錬金術師が一人だけいたけど、その錬金術師は自分の寿命全てを使い果たして作り出したって言われているのよ?』
「……あぁ、そうなんだ」
アイテムクリエイトはやはりチートのようだ。
俺は町を通り抜け、テーブルマウンテンに辿りつく。
高さは1000メートルほど。断崖絶壁。角度はほぼ90度に近い。
こんなところ、道具無しでは登れるはずがない。
『登山道はこの山の反対側よ。そこに行きましょ』
そんなところまで行ってられるか。
道具無しでは登れないが、道具がある俺なら登れるだろ。
俺は大きく跳び、剣を投げた。
土に突き刺さる剣。
その剣の柄を足場にしてさらに上に跳んでアイテムバッグからさらに剣を取り出す。
それを崖に向かって投げて足場にしてさらに飛んだ。
どれも売れば金貨数百枚になるらしい剣だが、俺なら適当に作れば出来上がるからな。
そして、俺はテーブルマウンテンの上にたどり着く。
そこにはクレイの言う通り綺麗な湖があり、畔には小屋が。
そして、アルジェラが立っていた。
「グルース……グルース……どこなの?」
アルジェラがいた。
ただし、その身体は5倍ほど大きくなり、もはや巨人だった。




