崩落と脱出
~前回のあらすじ~
とりあえず思った通り行動することにした。
ランプの灯りが土の壁に大きな影を作る中、俺は錬金術ノススメという本を熟読していた。
何だろう、本を読む速度もかなり早くなっている気がする。
状況判断能力やら動体視力やらが上がっているおかげだろう。
そして、錬金術師には、レシピを覚えて材料を持って、アルケミーと唱えるというのが基本だと知った。
レシピ……そんなの持ってないんだけど。
「土を落盤しないように頑丈にするにはどうすればいいんだ?」
肝心のレシピは書かれていない。書かれているのは、ポーションの作り方だけだ。
蒸留水と薬草を使った簡単なポーションの作り方で、レシピは別売りと書いてある。ふざけている。
「私も錬金術に関してはさっぱりだ……待てよ、そういえばこの国では錬金術に関して研究をしていたな。錬金術ギルドに行けばわかるんじゃないか?」
「そうだ! その手が……ってここから出られないから困ってるんだよ!」
「そうだったな」
くそっ、こうしているうちにもアルジェラの融合は進んでいる。
なんとかしなければ。
俺の錬金術レベルは10なんだ。
錬金術のレシピはある程度覚えていることになっていると思う。
ならば、あいつならここから出るアイテムの作り方を知ってるんじゃないか?
「おいっ!」
俺は天井を見上げて叫んだ。
「教えてくれ! 俺はどうやって脱出すればいい?」
「カガミ、誰と話しているんだ?」
急に天井に向かって叫んだ俺に対し、レイシアが冷ややかな眼で尋ねる。
だが、
「頼む! 力を貸してくれ!」
【力は貸さない。この力は元々俺のもので、お前のものなんだから】
声が聞こえた。俺の声だ。
【少し体を借りるぞ】
「貸すんじゃないよ。この体は元々俺のもので、お前のものなんだから」
俺は笑ってそう言った。
※※※
体に意識が宿る。
この感覚も久しぶりだ。
「……よし、レイシア。さっそく脱出するぞ!」
「脱出方法が決まったのか?」
「お前が言ってた方法だよ。ぶっ壊す」
「ぶっ壊すって、崩壊の心配はないのか?」
流石のレイシアも俺の発言に少し驚いているようだ。
まぁ、俺もこんな状態になってからずっと、ルシファーの破壊衝動のお守りをしていたからな。
破壊衝動が浸食しているのかもしれない。
アイテムバッグからエントキラーを取り出す。
「さて、レイシア、本当に気を付けろよ! 手加減してやるからな」
俺は愛斧のエントキラーを構えると、天井に向かって飛んだ。
そして、エントキラーで天井を叩き割った。
「カガミ! 何してる! そんなことをしたら――」
俺は着地すると、レイシアを抱きかかえた。
「安心しろ、天井の崩落はエントと戦ってる時に体験済みだからな」
俺は笑ってそう言うと、崩れてくる土を躱し、躱せないと思ったら、エントキラーでさらに打ち払い、上に上にと上がっていく。
「カガミ、このままだと先ほどの地下の部屋も崩れてしまうぞ」
「安心しろ、そんなくらい想定の範囲内だ」
俺はそう言うと、アイテムバッグから、それを取り出す。
土がなくても粘土細工はできるんだぞってな。
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万能粘土【魔道具】 レア:★★
鉄と石の混合素材。少量の魔力を込めることで変形する。
夏休みの自由工作にぜひ使いたい一品だ。
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アイテムバッグから万能粘度を取り出して、魔力を込めてそれを飛ばす。
崩れようとする土の間に入り込み、強度を固めた。
だが、それでも落下中の土が魔力灯を埋めてしまう。
俺はアイテムバッグから、
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暗視黒眼鏡【魔道具】 レア:★★★
暗い場所も良く見えるサングラス。
太陽のない場所で使うサングラス。
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を取り出して装着。
これで暗闇でも自由に行動できるようになった。
そして、さらに天井を崩していき、俺は先ほどの地下までたどり着く。
「……カガミ、いつのまにそのような……(かっこ悪い)……眼鏡をしているんだ?」
「お前、今小さくかっこ悪いって言っただろ……この眼鏡は気に入ってるんだよ」
なんでこのよさがわからないかな。
もっとも、闇から抜け出せたので必要ない黒眼鏡はアイテムバッグにしまっておく。
それより、今はアルジェラだ。
無事に脱出できたわけだし、あとは俺に任せておくか。
そう思って再びルシファーの破壊衝動を抑える作業に戻ろうと思った――その時だった。
「うぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
アルジェラのうめき声が聞こえてきた。
なにがあったんだ、もしかしてもう融合が終わってしまったのか!?
それにしては何か苦しんでいないか?
「レイシア! 案内&説明精霊を出してくれ!」
俺はそう言って、アイテムバッグからマシュマロを取り出し、それをレイシアの口の中に突っ込んだ。
それに伴い、レイシアの中の精霊と繋がる力が強くなり、部屋の中に落ちていた火の宝玉からサランが現れる。
『誰が案内&説明精霊だ、誰が』
サランが文句を言ってきたが、「そんなことはどうでもいいだろ!」と俺は説明を求めた。
サランはぶつぶつ言いながらも説明をしてくれた。
『二つの魂が拒絶反応を起こしている。このままだと――』
サランは最悪の答えを出した。
『二人の魂が消えてなくなる』




