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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第二部 西大陸編 Episode08  六玉収集

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火の精霊と土の精霊

~前回のあらすじ~

地下牢に土の神子が捕まっていた。

 彼女が土の神子アルジェラ?

 まだ子供じゃないか。


 何より――なんで土に埋まって捕まって、カビの生えたパンしかない部屋にいるんだ?


「……誰?」


 アルジェラは俺とレイシアを見て、首を傾げた。


「君は、本当にアルジェラなのか?」

「うん。アルの名前はアルジェラだよ」


 ……嘘であってほしかった。

 なんで、土の神子が、こんな場所で、下半身が土に埋まり、手枷を付けられているんだ?

 なんでこんな臭い部屋で、カビの生えたパンを食べようと――いや、すでにカビの生えたパンは食べていたのかもしれない。


 俺がどうしようかと思っていたら、レイシアは俺の横をすっと動き、彼女の胸倉をつかみ上げた。

 泥がついて汚れた絹のドレスが大きく引っ張られる。


「クレイゴーレムをすぐに消せ」


 レイシアが歯を食いしばり、アルジェラを睨み付ける。

 アルジェラはじっとレイシアを見つめ、


「ダメ」


 そう言った。

 それでレイシアには十分だった。

 レイシアは手を離し、槍を抜く。


「なら死ぬしかないな――」


 彼女は槍の矛先をアルジェラに向け、今にも彼女の心臓を貫きそうだ。


「待て、レイシア!」


 俺は止めた。

 彼女が焦る理由はわかる。こうしている間にも、クレイゴーレムは南の国境壁に集結している。

 建造物は壊さないクレイゴーレムだが、この町の北にある壁みたいに、国境を全て建造物で覆っていたら防ぐのは可能だろうが、そうではないだろう。

 人が通るには適していない場所には壁はないという。


 あくまでも国境壁は人の行き来を完全に防ぐものではなく、軍隊による侵攻を防ぐために作られているため、という理由らしい。


 簡単に通れる場所ではないから、クレイゴーレムも簡単には通れないと言っていたが、完全ではない。

 このままゴーレムが増え続けたら、その僅かな綻びからゴーレムが溢れるかもしれない。

 決壊しつつあるダムに蟻の穴が空いたらどうなるか?


 だから、レイシアが焦る理由もわかる。いい加減に見えて、やはり彼女は国の主なのだ。


「アルジェラ、なんでこんなことをするんだ? クレイゴーレムが国中に溢れかえり、町は土だらけ、国に住んでた人も避難を余儀なくされている。戦争をするにしても手段があるだろ」

「……アルはよくわからない。ただ、グルースに言われたからしているだけ」

「グルースって、お前の養父だったよな? 養父に言われたからやってるのか? グルースはどこにいる?」

「わからない」


 アルジェラは表情を変えずにそう言った。

 いや、彼女の表情はさっきから全く変わっていない。生気を感じられない。


「わからないって……」


 こうなったら、グルースって奴をとっつかまえて、アンジェラを説得させるか。

 そう思った。


「……カガミ……すまない。私としたことが気付かなかった」


 レイシアは冷静さを取り戻して俺に言った。


「彼女には何を言っても無駄だ」

「無駄ってことはないだろ」


 確かに、会話にはとりとめもないが、


「アンジェラはもう半分以上人間ではない――土の精霊と同化を始めている。彼女は下半身が土に埋まっているんじゃない。下半身がもう土なんだ」

「……嘘……だろ?」

「道理で、あのような土の壁を作れるわけだ。道理で、あんな多くのクレイゴーレムを作れるわけだ。道理で……神子の限界を超えているわけだ。もう、神子ですらないのだから。あと3日もしたら、彼女は完全に土の精霊に変わる。土の精霊に変わったら、もう私は手を出せない。今のうちに殺すしかない」

「……頼む、それは最後の手段にしてくれ。それより、彼女を元に戻す方法はないのか、考えてくれ」


 こればかりは俺もどうしたらいいかわからない。

 精霊と神子が融合?

 んなもんどうしろっていうんだよ。


 確かに、レイシアの言う通り、今、ここでアンジェラを殺してしまえば、フレアランドの皆にとってはハッピーエンドだ。今、こうしている間にサクヤが寝ずに戦っているのも理解している。

 だが――俺はやっぱりバカだ。


 ここで、何も知らないままアンジェラを見捨てることができない。


「……カガミ、私に例の菓子をよこせ」

「わかった!」


 精霊のことは精霊に聞く、そういうことか?

 俺はアイテムバッグからマシュマロを出した。


 と同時に、レイシアも懐から赤く光る玉を取り出した。


 それは―― 


……………………………………………………

火の宝玉【魔道具】 レア:72財宝


火の精霊が住む宝玉。赤く輝く。

6つの宝玉を集めたとき、偉大な力が授かると言われている。

……………………………………………………


 72財宝の一つであり、6つの宝玉の一つ。

 火の宝玉だった。


 俺が集めなくてはいけない宝玉でもある。


 こんな大事なものを、レイシアはどこかに保管せずに、ずっと持っていたのか。


 ……これを集めたら、俺は日本に……戻れるのか?


「カガミ、何をぼぉっとしている。菓子を渡せ」


 レイシアが苛立ったように言った。


「悪い、スウィートポテトだ。こっちのほうが効果は強いと思う」


 こっちのほうが手間暇かけてるからな。


「芋の菓子か。そういえばアークラーンはパリス芋が名物だったな」


 レイシアはそんなことを確認し、スウィートポテトを半分に割る。

 そして、半分をアルジェラに食べさせるためにスウィートポテトを彼女の口の前に持っていく。


 そんな風に渡されても食べないだろ、と言おうとしたが、アルジェラはスウィートポテトを無言で咀嚼した。

 レイシアも残りの半分を食べた。


 レイシアの火が膨れ上がり、その火が


「……おい……しい」


 アルジェラがそう呟いた――と思ったその時だ。

 彼女の下半身となっている土から黄色い玉が飛び出して、火の宝玉の横に並んだ。


……………………………………………………

土の宝玉【魔道具】 レア:72財宝


土の精霊が住む宝玉。黄に輝く。

6つの宝玉を集めたとき、偉大な力が授かると言われている。

……………………………………………………


「宝玉の共鳴だ……」

「レイシア、意識ははっきり保っていられるのか?」

「あぁ。溢れた力を全て宝玉の中に押し込んでやったからな」


 レイシアが笑って言う。

 そして、それは現れた。


 火の宝玉から、赤く輝く男の子の姿の精霊――サランが。

 そして、土の宝玉から、幼い女の子の姿をした精霊が。


「土の精霊クレイだ」

「クレイ……あれが」


 俺の目の前に、二人の精霊が並んで浮かんでいた。

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