閑話 リーリウム王国と変態女王
~前回のあらすじ~
コーマはアースチャイルドの聖都を目指した。
私とエリエールさん、ルシルちゃん、コメットちゃん、タラくんの五人はラビスシティーからリーリウム王国に行くべく、ある場所を目指しました。
本当はルシルちゃんの転移魔法を使えば一瞬で行けるそうなんですが、魔力が不安定だからできる限り転移魔法は使いたくないと言っているので、歩いて向かうことに。
でも、ただ歩いていくのとは違います。
「こんなところからリーリウム王国に行けるなんて――」
私はパーカ迷宮と呼ばれる迷宮の最奥にいました。
ここはコーマさんと一緒によくやってきた迷宮なんですが。
襲ってきた木の人形を倒して、落ちた木箱をアイテムバッグに入れながら、隠し扉を開けるエリエールさんに言いました。
「リーリウム王国最大の秘密ですからね。流石にあの百合女王様でも仰らなかったようですわね」
隠し扉の先は私も一度来た事のある場所です。
エントに関する記述を探したときです。
書棚。大量の本。
リーリウム王国の書斎が、まさかラビスシティーの奥の迷宮だったなんて。
埃っぽい書庫を抜けると、青毛の男の人がいました。
「やぁ、クリスティーナさんだね」
彼は私を見ると、改めてそう語りかけました。
彼に会うのは二度目だ。
なのに、初めて会った時と同じように、まるで前から私のことを知っていたかのように、そして、やはり私と初めて会ったかのように声をかけてきました。
この人はブックメーカーさん。
ここの司書さんだと聞いていましたが、実は魔王の一人だとついさっきエリエールさんに教えてもらいました。
魔王になったことにより、全ての知識を得て、それを誰にも語ることができず、そして自らの記憶を継続することはできない。
だから、彼には感情がない。
何も感じない、考えない。
人の姿をし、人である大事な何かを失った。
エリエールさんはそう語りました。
「それと、ルチミナちゃん、コメットちゃん、ゴーリキくん」
「某の名前はタラだ。前にも言ったが、間違えないでもらいたい」
「あぁ、そうだったね。知っているよ」
んー、いろいろと説明を受けた私ですが、結局のところ私の結論は以下の通りです。
胡散臭い人ですね。
そもそも、何でも知っているのに、それを他の人に話すことができず、自分で有効的に使うこともできないのなら、何も知らないのと一緒ではないでしょうか?
そうエリエールさんに話したら、
「ブックメーカーになった人は、大切な人に自分が知ったことを知り、それを伝える機会を一度だけ得られますわ。初代ブックメーカーはそこでゴブリン王の誕生を知り、自分の子に伝えることにしましたの」
「その結果、ゴブカリがゴブリン王にならずに済んだわけね」
ルシルちゃんが確認するようにいい、エリエールさんが頷きました。
そして、エリエールさんは「彼と話しても何も得られません。行きましょう」と言って、私達を転移陣へと促しました
転移陣を通った先は、リーリウム王城の地下です。
そこを登っていくと、目的の場所――リーリウム王城の謁見の間の裏にたどり着きました。
とはいえ、時刻は既に夜――誰もいません。
そう、誰もいないはずなのに。
謁見の間の扉が開かれ、誰かが入ってきました。
「――お姉さまの香りが、お姉さまの香がしたと思ったのに……」
リーリエちゃんの声でした。
リーリエちゃんは誰もいないことを確認したように呟きます。
出て行こうとしたんですが、出ていくのが怖いです。
「ダメ、また禁断症状が――ラビスシティーに行けばお姉さまと一緒にデートできると思ったのに、ほとんど会えずじまい……あぁ、お姉さま、お姉さま」
謁見の間の椅子に這うように近付いてきたリーリエちゃんは玉座の下をなにやら漁り、
「あぁ、お姉さまの香り、お姉さまの温もり、あぁ、お姉さま」
一体何を?
と思ったら、リーリエちゃんは何か白い布のようなものを自分の顏に押し付けていました。
「リーリエちゃん! 何してるんですか! それ、私のパンツじゃないですか! 無くなったと思ってたらリーリエちゃんが持って行ったんですか!」
「お姉さま?」
「はい、そうです!」
「お姉さまぁぁぁぁぁっ!」
リーリエちゃんが私に抱き着いて来ようとしたので、さっと避けます。
勇者ですから、このくらい躱すのは造作もないことです。
「お姉さま、いけずです……リーリエはずっとお姉さまのことをお慕い申しておりましたのに」
「私のパンツを盗んでおいていけずも何もないです。返してください」
「あぁ、待ってください! そのパンツは私の精神安定剤なんです。あ、そうだ、お姉さま、パンツを御所望でしたら、どうぞ私のパンツをお使いください! 大丈夫です、中身はお姉さま以外に使わせたことありませんから」
「まるで私が使ったことがあるみたいな言い方をしないでください! そしてパンツを脱がないでください!」
「では、お姉さまのために予約済みですから」
「予約の日時指定は100年後でお願いします」
「わかりました、これより不老不死の薬を作るために国家予算を全て使います」
「訂正します。予約はキャンセルです」
「つまり、今すぐここで、ということですか! お姉さまと――はうっ」
リーリエちゃんは鼻血を噴き出して倒れました。
……なんなんでしょう、リーリエちゃんがいつもの百倍おかしい感じがします。
いつもおかしいことは否定しませんが。
ルシルちゃん達はドン引きしています。
一言もしゃべっていません。
「陛下……陛下、どちらに……おや、クリスティーナ様」
開いていた謁見の間の扉から、侍従の服を来ている近衛隊長のイシズさんが入ってきて、私達に気付きました。
そして、鼻血を出して倒れているリーリエちゃんを見て、
「……クリスティーナ様、このようなことがあるから、城を訪れるときは正門からいらしてください」
「はい……反省しています」
私が悪いというわけじゃないんだけど、素直に謝罪しました。
そして、イシズさんはリーリエちゃんを背負って、食堂に行くように私にいいました。
「クリス、あんたも大変なのね」
ルシルちゃんが同情して私の肩を叩きました。
クリスがツッコミ役に回るのは彼女相手だけ。




