溢れるクレイゴーレム
~前回のあらすじ~
国境にいたのは、大量のクレイゴーレムだった。
「レイシア様!」
まだ20歳代後半歳くらいの、鎧と兜を纏い、槍を構えた、スポーツ選手風のイケメン男が横から声をかけてきた。
こいつがステルヴィオらしい。
「ステルヴィオか。あれはなんだ?」
「わかりません。急に南から押し寄せご覧の有様で……敵が操っているとしか」
ステルヴィオが言う。
だが、クレイゴーレムを見ると、無秩序に動き回っているとしか思えない。
指揮系統など全くないように思える。
「とりあえず攻撃してみるか……」
俺はアイテムバッグの中に何か攻撃に使えそうなアイテムがないか漁ってみた。
すると、青色の手榴弾のようなものが出てきた。
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ウォーターボム【投擲】 レア:★★★★
留め金を抜くと10秒後、大きな水球を発生させ全てを飲み込む。
周囲50メートル以内に近付いてはいけない。
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おぉ、爆弾か。
てか、水爆弾か。
子供のころに遊んだ水風船を思い出すが、
「今、国境の向こうには誰もいないんだよな」
「えぇ、わが軍の兵は誰もいませんが、貴方は?」
ステルヴィオが、「誰だよお前」って顔で見てくるが、俺はそれを無視して、留め金を抜いた。
10秒後に爆発するって言ってたから、10秒後に着弾するようになげたらいいんだよな。
俺はとりあえず、余裕をもって70メートル程度向こうに放り投げた。
あまり効果は期待できない、そう思った。
俺がバカだった。
アイテムバッグのアイテムの威力は、前からわかっていたはずなのに。
留め金を抜いて10秒後、投擲後9秒後―――ウォーターボムが着弾し、爆発した。
水が爆発した。
「――え?」
投げた俺がそんな声を上げた。
レイシアとサクヤ、ステルヴィオは開いた口がふさがらない様子だ。
半径50メートル、直径にして100メートルという広範囲のクレイゴーレムが水の暴力に飲み込まれた――だけではない、溢れた水が周囲にいるクレイゴーレムを押し流していく。
3分後、そこには泥地が広がっていた。
もちろん、それで全てのクレイゴーレムを仕留められた訳ではない。クレイゴーレムはまだまだいる。
「あ……よし! 気を抜くなっ! 敵はまだまだいるぞ!」
俺は三人に向かってそう言った。
「そんなことでごまかせると思っているのか、コーマ」
「カガミ、なんだそれは。水の精霊の力かっ!?」
「なんなんですか! 本当に誰なんですか、貴方は!」
混乱きわまる三人。
そんなの俺も知らないよ。
一体、なんなんだよ。
もう普通の石でいいよ。
そこらへんに落ちてる石でもないか、と思ってアイテムバッグを漁ったら、今度は、げんこつ岩という石が出てきた。
何故か、この石ばかり大量に。
まぁ、レア度が「★」だけの本当に価値の低い石だ。
こんなものが出てくると、ほっとするよな。
さて、投げてみるか。
俺は石を握ると、全力で投げてみた。
俺の投げた石は、放物線とかそんな力学法則をまるで無視して、一直線にクレイゴーレムに命中。
はじけ飛んだと思ったら、泥地が爆発した。
……えっと……
「あ……よし、一匹撃破! でも気を抜くなっ! 敵はまだまだいるぞ!」
俺は三人に向かってそう言った。
「コーマ、貴様、加減というものを知らないのか?」
「カガミ一人でわが軍が壊滅していたのではないか?」
「これは夢だ、夢だ……レイシア様が帰ってきたらいいと思っていた私が作った愚かな幻想だ」
俺も夢だと思いたいよ。
俺がメジャーリーグのピッチャーなら年俸60億円を通り越して、野球ボールでキャッチャーを殺して球界追放になってるよ。普通の生活に支障が出るよ。
「なぁ、げんこつ岩って知ってるか?」
サクヤに訊ねた。
「……力を上げる薬を作る材料になる。基本は価値のない石だ」
「あぁ、じゃあ俺の馬鹿力が原因か……やっぱり」
こうなったらヤケだ。
俺は石を掴むと、クレイゴーレム相手に石を投げていった。
次々にクレイゴーレムがはじけ飛んでいく。
だが――これはちょっとやばいかも。
敵の数が、全然減らない。
クレイゴーレムは弱い。剣でさくさく切れる。
石を投げる作戦から、俺とサクヤ、レイシアの三人が地上で戦う方針に代わり、地上で戦っていったんだが、全然数が減らない。そのうち、倒れたクレイゴーレムで山ができるんじゃないかと思ってしまう。
「こいつらは一体どこから来るんだ!?」
「わからん。だが、通常の魔術師が出せるクレイゴーレムではないのは確かだ」
「となると可能性は――土の神子か……全く、今まで一度も動かなかった土の神子が、何故こんなに……」
土の神子か。
光の神子、シルフィアの張った結界は何人も通さぬ強固な結界だった。
火の神子、レイシアの一撃は国境の砦を破壊するほど強力。
そして、土の神子の無限の兵――か。
「神子って本当に反則だろ」
俺はげんなりした口調で言う。
「貴様のどの口がそれを言う……と言いたいが、今回ばかりは同意だ。倒しても倒しても減らない敵など――ぐっ、クナイが錆びる」
「燃え上がれ、炎よ!」
レイシアの槍から炎の渦が出現し、クレイゴーレム達を切り刻み、砕いていく。
「レイシア、大丈夫か? 無茶するなよ」
「カガミ、頼む! 前に私に食べさせた菓子をくれ」
「え?」
あぁ、記憶を失っている時に食べさせたって言ってたな。
そうか、精霊の力を強めて。
「あぁ、食べろ!」
俺はアイテムバッグからマシュマロを取り出し、レイシアの口に投げた。もちろん、手加減に手加減を重ねたうえで。
マシュマロは彼女の口の中に入り、直後――レイシアの炎が膨れ上がる。




