国境砦を目指せ
~前回のあらすじ~
土が攻めてきたらしい。
聖竜のゴンドラに乗り込んでいる俺とサクヤとレイシア。
シルフィアは町の中で手紙をしたためて、援軍のための伝書鳥を飛ばすそうだ。
それにしても、レイシアの奴、なんて堂々とゴンドラに乗るんだ。
飛竜恐怖症は治ったのか?
と聞きたいが、良く見ると足が僅かに震えている。
強がっているのは明らかだが、恐怖よりも祖国の心配が上回っているのか。
とても強い人だと思う。
俺は少し微笑み、
「フレアランドってどんな国なんだ?」
レイシアに、そう尋ねた。
「土地は痩せているし、お世辞にも豊かな国とはいえない。だが、とても逞しい国だ」
彼女はそう言い、湖の向こうにあるサランマズの山を真っ直ぐ見据える。
「そうか。レイシアにぴったりの国だな」
「褒め言葉として受け取っておこう」
レイシアが笑ってそう言った。
と同時に、聖竜が動き出す。
聖竜は大きく羽ばたき一度浮き上がると――ゆっくりと旋回するように降下していった。
上昇するときよりも緩やかだと思った。だが、徐々にスピードを上げて行く。
遊園地のジェットコースターのように風を全身に浴びている。
気持ちいいなぁ、と思ったら、横でレイシアの顏がものすごい青ざめていた。
やっぱり怖いのは変わらないらしい。
俺達は湖を二周ほど周り、大地に降り立った。
すでに湖の東岸にはフレアランドの兵たちが集結していた。
「レイシア様、お待ちしておりました! どうぞお乗りください」
「うむ」
無事に地上に降り立ったことで一瞬で立ち直ったレイシアは、堂々と用意された赤い馬に飛び乗った。
赤い馬――その見た目は汗血馬……赤兎馬みたいだな。
だとすれば走るのはかなり早いだろう。
レイシアは馬に乗ると、俺達の分も馬を用意するように部下に命じたが、俺は即座に首を振った。
「いや、俺は要らない。走ったほうが早いからな」
俺は左右の足を伸脚して曲げたり伸ばしたりして宣言した。
「コーマと同じく、馬の必要はない。獣に後れを取るつもりはないからな」
「そうか、ではついてこい」
レイシアが駆けだした。
「お待ち下さい、神子様! 一人で行かれては危険です!」
レイシアが飛び出すと部下の男が叫んだ。
それに俺達が走ってついていく。
「おい、部下を放っておいていいのか?」
フレアランドの兵たちとの差は徐々にだが、確実に広がっていく。
このままだと見えなくなるだろう。
「構わん! 道は覚えている。今はそれより国境に急がねば」
「まだ国境の砦は破られていないのか?」
「報告によると、クレイゴーレムに襲われているそうだ」
「クレイゴーレム……土人形か」
なんともまたファンタジーチックであり、土属性の国にちなんだ魔物が攻めてきたものだな。
教会の領土の関所を抜け、俺達はフレアランドの領土に入った。
痩せていると言われていたが、最初に会ったのは森だった。
湖のおかげだろうか。
そして、森を抜けると、赤土の大地が広がっていた。
ここがフレアランドか。
南東の方角にはサランマズの山が見える。
俺達はそこから北東を目指した。
そこにアースチャイルドのクレイゴーレムが集結しているそうだ。
「レイシア、これを持っておけ!」
俺はアイテムバッグからアルティメットポーションを二本取り出して、レイシアに渡した。
「これは?」
「薬だ。体力や怪我を治すことができる。赤兎馬が疲れたら飲ませてやれ」
「ありがたく貰っておこう。だが、この馬の名前はマクスルだぞ、カガミ」
「……あ、悪い」
つい赤兎馬と呼んでしまった。
マクスルか。うん、忘れるまで覚えておこう。
そして、俺は走った。
途中でサクヤに疲れが見えたが、アルティメットポーションを飲ませたらすぐに体力が回復した。
夜が来て、朝が来た時には眠気も出てきたんだが、眠気覚ましの薬でもないかと思ってアイテムバッグを漁ったら、睡眠代替薬という薬が4本出て来たので、それを三人と一頭で飲んだ。
これまた凄い薬で、一気に眠気が覚めたなんてもんじゃない。
本当に眠ったような爽やかな気分になれる。流石に疲れが取れるまではいかないが。
結果、三日はかかると言われた工程を僅か一日で踏破した俺達が国境砦にたどり着いた。
まだ砦は無事のようだ。
だが、砦の裏で倒れるように眠っている兵の顔色が優れない。
「火の神子レイシア、ここに参った! ステルヴィオ将軍は無事か!」
レイシアが堂々と叫ぶと、まるで地獄の中で仏を見たかのように 兵たちの顔色に生気が戻る。
「レイシア様だ」「レイシア様が戻ったんだ!」「助かった!」
と立ち上がった。
「ステルヴィオ将軍は砦の屋上です!」
「そうか。カガミ、サクヤ、ついてこい!」
レイシアはそう言うと、信じられないことに馬に乗ったまま階段を登って行った。
恐るべき馬術だ。
俺達は跳んで屋上を目指す。
そして、そこで見た国境向こうの敵というのは――
「一体、何体のゴーレムがいるんだ?」
「数えられるわけないだろ」
「面白い、全て消し炭にしてくれよう」
無数のゴーレムが、国境にはりついていた。
その数を数えることはできそうにない。
「レイシア、ゴーレムは土だから炭にはならないぞ」
とりあえずツッコミだけは入れておいた。




