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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第二部 西大陸編 Episode08  六玉収集

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コーマの記憶と火の精霊

~前回のあらすじ~

闇の中でもう一人の自分と出会った。

 俺に覚悟が足りない?

 人を殺す覚悟が?


 そんな覚悟は俺は欲しくなんてない。


【違うって、おまえに足りないのは人を殺す覚悟なんかじゃない。そんなの俺だって持ってないし】


 じゃあ何が足りないっていうんだよ!


【誰かを守る覚悟だ。自分の命よりも大切な存在のことをすっかり忘れちまってるおまえには足りない】


 俺の姿をしたそいつは、そんなことを言う。

 そもそも、お前は一体なんなんだ?


 急に出て来て、俺のことを俺以上にわかったようなことを言って、俺を混乱させて。


【まぁ、それも直にわかるさ。そうだな、この戦いが終わったら、とりあえずラビスシティーのフリーマーケットって店にでも、俺がいる場所を伝えてくれ。頼むわ】


 俺の頭を触った。


【まぁ、今回は俺がなんとかしてやるから、お前はそこで見ていな】


 お前がなんとかする?


 何を言って――



   ※※※



 太陽の光を浴び、俺は――魔王である俺は久しぶりに自分を取り戻した。


「時間は20分といったところかな。それ以上あっちを留守にしていると、破壊衝動ルシファーに全部持っていかれちまう」


 理由あって、俺は記憶を失っている。アイテムバッグから魔力の神薬を取り出して一気に飲み干した。

 記憶を失っている間、俺がしていたことは全て見てきたけれど、それにしても、まぁ、異世界ファンタジーテンプレの限りを尽くしてくれたもんだ。見ている分には退屈しなかったけれど、自分でやっていて妙な感じだな。 


 72財宝のうち、6個の場所を見つけたのはよくやったと褒めてやりたいが、それ以上に俺自身をバカだと思う。


 どう考えても、昨日会ったレイシアってのが敵の神子なのに、なんで気付かないかな。

 傍から見ていたら、俺がいかに鈍感系主人公のようなバカかがよくわかる。


 じゃ、行きますか。


 俺は跳び、アイテムバッグからプラチナソードを取り出した。

 全方向の敵から砦を守る必要なんてない。

 一人で全部守ろうなんておこがましいにもほどがある。

 仲間を信じるのも必要なことだ。


 ひたすら前進する。

 目指すは敵本陣ただ一つ。


 レイシアを人質にとり、この戦いを終わらせる。

 そのためには邪魔な敵をやっつけないとな。


 アイテムクリエイトは今は使えない。

 だが――、俺にはもう一つのクリエイトがある。


 敵本陣手前で止まるとアイテムバッグを逆さにし、手探りであるアイテムだけを落としていく。

 その数が山積みになるのを確認し、


「スライムクリエイト!」


 スライム創造魔法により、スライムの核が融合、一つになった。

 アイテムクリエイトで作ったものには劣るが、それでもその姿を見たフレアランドの兵たちが停止する。


 現れたのは山のように巨大なスライム――エンペラースライムだ。


「エンペラースライム、適当に時間稼ぎを頼む!」


 俺はそう命じると、大きく跳び、エンペラースライムの上に着地、そのスライムの身体をトランポリンのようにしてさらに大きく跳躍した。


 俺めがけて跳んでくる矢もあったが、俺は反応の妙薬を飲み、反応速度を大幅に上昇させ、全てを剣で叩き落としていく。


 俺の身体は、目的の場所――その手前に着地した。

 敵陣のど真ん中、当然、フレアランドの兵は俺を囲むように剣を構える。

 が、それらをすべて無視し、俺は目の前にいる彼女に言った。


「ま、あれだ。戦争を終わらせに来たぜ、レイシア」

「カガミ、貴様は必ず私の元に来ると思っていた」


 俺が剣を向け、レイシアが槍を構える。


 俺を見据えるレイシアの目。

 その真っ直ぐな瞳はまるでクリスみたいだな……とか柄にもないことを思っていると、血気に逸った兵が俺めがけて突撃し、剣を振り下ろそうとしてきた。

 それが、戦いの合図になるとも知らずに。


 俺はその剣を避けるように、前に跳ぶ。

 レイシアの槍が炎を纏う。


 だが、俺はアイテムバッグからそれを取り出して放り投げた。


 放り投げられたそれは――その炎の上空を通過し――焼きマシュマロになってレイシアの口の中に入った。

 刹那――レイシアが放心状態になり、彼女の槍を覆っていた炎が膨らんだ。

 その膨らんだ炎が一つに纏まった。

 炎を纏った男の子のような姿の精霊だな。


『凄い……力が漲ってくる……そうか、ライの力もこれのせいか』


 火の精霊は自分に起きたことを確認するように自分の手足を確認して、何か納得するようにつぶやく。

 誰もが思わぬ火の精霊の顕現、そしてその言葉に周囲にいた兵たちが戸惑いを浮かべた。

 当たり前だ、地球で言うなら、突然神が舞い降りたのと同じことだからな。


「よう、お前が火の精霊か』

『あぁ、僕が火の精霊、サランだ』

「お前と話をしたい、悪いが周りの兵に手出ししないように言ってくれ」

『わかったよ。僕達はこれから大事な話をする。誰も手を出すな! これでいいか?』


 その言葉に兵たちは全員跪いた。流石は精霊の力は絶大だ。

 

「戦いを――戦争をやめてほしい。お前から光の精霊との完全対等な和睦を提案してほしい。この国は精霊の言葉が絶対なんだろ?」

『……戦いを終わらせたいのなら簡単だよ。レイシアを殺し、火の宝玉を手にすればいい。そうしたらフレアランドの負けだ』

「いや、まぁ、俺、たぶんレイシアのこともそんなに嫌いじゃないしな。最初に出会ったのがシルフィアだったってだけだし。そもそも、事情を良く知らない俺がどこかの国に肩入れするってのも妙なもんだろ? なら、いっそのこと全部の国を一つに纏めてしまおうかなって思ってな」

『君は王にでもなるつもりなのか?』


 サランが、まるで俺のことを試すように尋ねた。

 だが、その質問の答えは俺にとって、すでに用意されているものだ。


「俺はもともと王だよ」


 ただし、魔王だけどな、と胸中で付け加えた。

 俺の言葉に、火の精霊は考える。

 そして――


『レイシアが君との戦いを望んでいる。君が勝ったら、同盟の話、受けてもいい。火にも光にも属さない君が、火と光を纏めるんだ』


 それでいいのならいいけどよ、戦いの最中にマシュマロを口に放り込まれるようなレイシアに勝ち目があると本気で思ってるのか?


『ただし、君が負けたら、君はレイシアの元で一生働く、そう約束してくれ』

「OK、わかった。じゃあ、早くしてくれ。時間がないものでな」


 早くしないと、エンペラースライム相手に死人が出るぞ。


『わかった』


 サランが頷くと、炎が槍に収束していく。いや、槍だけではない、レイシアの身体全体を炎が纏っていく。

 そして、レイシアの意識も戻ったようだ。


「ふふふふ、はははは、なんだ、この力は――体中から力が溢れてくる……カガミ、君の仕業か」


 溢れる力に興奮するレイシア。その力の高まりは俺も肌で感じる。


「いや、まぁ、そんな副作用があるとは思っていなかったんだが……」


 再度記憶を失うまで、残り15分。

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