捕虜交換とコーマの疑念
すみません、今回かなり短めです。
明日は久しぶりに休みなので、ちゃんとした文量の作品2話投下しますのでお許しください。
~前回のあらすじ~
守護隊長バインが生きているとわかった。
バインというのは、シルフィアが生まれる前からアークラーン王城の守護隊長を務めていた猛者で、彼女の逃走を手助けするために一人で王城の中に残ったそうだ。
会議室で一人、光の宝玉を抱きかかえ、光の結界の維持に務めていたシルフィアの元に、俺、ザッカ、サクヤの三人が訪れた。
バインが生きていると知ったシルフィアは、これまでにないほどの笑顔になった……が、また険しい表情になる。
「サクヤ。ザッカ将軍。この時に捕虜の交換、フレアランドの思惑は何だと思いますか?」
「考えられるのは三つですな」
ザッカ将軍が言う。
一つ目は、結界の解除をしたときの急襲。
二つ目は、解放された捕虜からの情報の入手。
だが、急襲するにもだだっ広い草原の真ん中、例え急襲に成功しても結界を張った後は援軍が望めない以上、その意義は少ない。場内のウィンドポーンの兵と呼応して砦の占拠を行うつもりかもしれないが、それでも成功率は限りなく0に等しいと思う。
二つ目の情報の入手か。
食糧の情報が知れば、籠城が可能な時間を割り出せるだろう。
「三つ目は、ニコライ将軍救出後、フレアランドの神子が単身で乗り込み、砦に攻撃をすることですな。いかに光の結界とはいえ、精霊様と親和性の高い神子様の力ならば結界の突破は容易い。例えそれがフレアランドの神子でも……」
「でも、もしそうなったら、こっちもチャンスじゃないのか? その神子を捕まえたら、こっちの逆転勝ちなんだし」
俺が思ったことを言うと、ザッカ将軍は目を丸くし、そして盛大に笑った。
「流石はコーマ殿だ! その通りです! 例え国境砦を単身で溶かした神子であろうとも、相手が一人、しかも光の精霊様の加護があるとなれば勝てない道理はありますまい」
「ええ。それに流石にあの戦姫の二つ名を持つ彼女でも、単身で敵陣の真ん中に乗り込む可能性は薄いでしょう。わかりました、今日の正午、捕虜の交換に応じるとお伝えください。サクヤ、あなたは伏兵がいないか注意を」
「はっ」
「ザッカ将軍、捕虜交換の間は結界内に兵を配置、緊急時に備えるようにお伝えください」
「かしこまりました」
「じゃ、俺は、そのバインさんを出迎える食事の準備をするか」
俺がそう言うと、誰かの腹の虫が鳴いた。
「……サクヤ、お主は食いしん坊じゃな」
「私ではありません。ザッカ将軍ではないのですか?」
罪を擦り付け合う二人だったが、
「すみません」
シルフィアが顔を真っ赤にして謝り、
「こほんっ、私は結界を維持するためにここから動くことはできませんから、皆さんに任せきりになりますが、よろしくお願いいたします」
恥ずかしすぎたのか、取り繕うように話を締めた。
ザッカは部下に命令を出すために足速に去っていき、サクヤは護衛のためか、会議室の外で立つことに。
「なぁ、サクヤ、シルフィアってあそこから動けないのか?」
「シルフィア様、もしくは神子様と言え……いや、動けないことはない。が、動くと結界の範囲がずれてしまい、精霊様の力を大きく使うことになる。だから特別な理由がない限り動くことはない」
「……トイレとかどうしてるんだろ」
「……貴様は何も話すな」
サクヤが全てを凍らせるような冷たい目で俺を睨み付けてきた。
※※※
正午少し前。
フレアランドの兵40名が、50歳を超えた男――おそらく彼が守護隊長バインなのだろう――を含めた10人の兵士を連れて現れた。
こちらも、ニコライ将軍を含め、10人のウィンドポーン兵を連れてくる。
「間違いありません、バイン隊長の他は、全員国境警備をしていた我が軍の兵です」
先月まで国境警備をしており、たまたま戦争開始直前に異動となった兵が、俺が貸した双眼鏡を使って捕虜の顔を確認した。サクヤもまた、砦の屋上を飛び回り、伏兵の警戒に当たっていた。
「サクヤ、お前の警戒していた、味方に成りすました敵って線もなさそうだぞ」
「そうか、伏兵もいないようだ」
サクヤは屋上から飛び降り、窓から会議室前の廊下に降り立った。
身軽な奴だな。
「……それにしても、なんだろうな……嫌な予感がするんだが」
俺が呟いた次の瞬間、結界が解かれ、捕虜の交換が執り行われた。
俺の持つスキル、診察スキルは相手のHPとMP、状態異常の状況がわかるそうなので、とりあえず洗脳されていないかチェックすることにした。
全員特に状態異常はない。HPは少し減っているが命に別状はなさそうだ。
その後、再度結界を張るまで、何も事件は起きなかった。
俺の気のせいだろうか。
「さて、肉じゃがの仕上げに行くか」
俺は見張りをしている男に、「できあがったらこっちにも持ってくるからな」と言ってやり、屋上から中庭兼訓練場に飛び降りると、調理場に向かって歩いていった。




