スキルとスイートポテト
~前回のあらすじ~
スイートポテトを作ることにした。
さて、何を作ろうか。
蒸かしイモや焼き芋などだと、素人と玄人の味の違いも出にくいだろうし、どうせならちょっと凝った料理にしようか。
んー、スイートポテトなんてどうだろうか?
そう思って、アイテムバッグを漁ってみる。
……卵にバター、牛乳、砂糖、塩全部揃っていた。流石はアイテムバッグだ。
ってあれ? なんで俺、スイートポテトの材料をきっちり理解してるんだ?
いや、まぁこのくらいなら俺でもわかるか。
「ザッカ将軍、オーブンってありますか?」
「オーブンですか、木炭オーブンならございますが、おそらく今は使用中でしょう。すぐに開けさせます」
「……いや、さすがに邪魔はしたくないし……アイテムバッグの中にもオーブンなんて……あったわ……いや、やっぱりこれはないわ」
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竜骨炉【魔道具】 レア:★×6
高温を出す装置。最低100度から最高4000度まで熱せられる。
これさえあれば、どんな金属でもドロドロに溶かせる。
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竜の頭蓋骨のマークがついた、炉がアイテムバッグから現れた。
……なんだよ、これ。
一体、俺に何を作れっていうんだよ。
「こいつは……本当にオーブンですか?」
「……知りません……考えたら負けです」
燃料は魔石らしく、アイテムバッグの中に大量に入っていた。
あと、他にも、
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魔力コンロ【魔道具】 レア:★★
魔石を使い、火を出す魔道具。
温度調整は弱火から強火まで5段階調整可能。
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といった魔道具を含め、包丁や、鍋やボウルなど調理器材は全て揃っていた。
「じゃあ、とりあえず10人分を作りますね」
「ええ、そのくらいで構わないでしょう」
あの、ザッカ将軍、ずっと俺の横にいるつもりですか?
まぁいいや。
俺がどれだけ料理ができないか、しっかり見てもらわないとな。
ほら、包丁さばきを見てみろ、こんな一瞬で芋の皮をむき終えてもう茹で始めている。
……どうやら、チート能力によって手先は随分と器用になっているようだ。
芋を茹でている間に、卵を割って白身と黄身を分ける。
白身は泡立て器を使ってメレンゲにして、マシュマロでも作ろうか。
ゼラチンもあるし、……マシュマロのレシピも何故かわかっているし。
……あれ? 俺、本当にどうしたんだ?
それから暫くして。
「おぉ、これはいい香りがしてきましたな。卵黄を塗ったのは、何か秘密があるのですか?」
「あれはツヤ出し……って、なんで俺、ここまで料理ができるんだ」
クッキングシートを敷いた容器に液体を流し込み、冷蔵庫代わりに氷を用意して冷やした。
マシュマロも固まった後に一口サイズに切り分けたら完成だ。
……謎だ、なんでここまで料理ができるのか?
マシュマロの作り方なんて、俺、知らなかったはずなのに。
と、そろそろ焼きあがる頃だな。
熱に強い手袋をアイテムバッグから取り出す。
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竜の鱗手袋【雑貨】 レア:★×6
竜の鱗で作られた手袋。
とても高い魔法抵抗と耐熱性を誇る。
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ドラゴンの鱗に骨か。材料となったドラゴンも、まさか自分の遺物が料理に使われるなんて思ってなかっただろうな。
まぁ、竜骨炉が本当に竜の骨で作られているかはわからないが。
手袋をはめて、竜骨炉から、焼きあがったスイートポテトを取りだす。
その時、部屋に美味しそうな香りが充満した。
卵黄のおかげでとてもきれいに輝いている。
「これは、とてもいい香りですな。ではワシがまず一つ毒見を……」
「せめて味見といえ! てか熱いぞ」
「ワシにとってはこの程度の熱さものともしません」
ザッカは笑ってスイートポテトを一口食べ……固まった。
え? 何? 固まるほど不味かった?
「これはいい匂い……コーマ、お主の仕業か」
匂いにつられてサクヤが入ってきた。
「あぁ、サクヤ……ちょっと菓子を作ってみたんだが、食べた途端にザッカ将軍が固まっちまって」
「……うむ、脈は正常だな……どれ」
サクヤが一口スイートポテトを食べた。
……途端に、サクヤが消えた。
え? 消えた?
まるで煙のように消えただと!?
「嘘だろ、これ、やばいものなのか?」
「とても美味しそうな香りがしますね」
今度はシルフィアが入ってきた。
「おや、ザッカ将軍はどうなさったんですか?」
「いや、スイートポテトを食べた途端に固まってしまって、サクヤが消えてしまって、って、なんでシルフィアもこの話を聞いてスイートポテトを食べて――」
シルフィアがスイートポテトを食べた途端、その奇跡は起こった。
彼女の全身が輝き出したのだ。
え? 意識消失、全身消失の後は謎の発光!?
光は段々と大きくなっていき、収束……小さな子供の形になった。
『凄い……凄いよ、シルフィアから力が溢れてくるよ! コーマ、このお菓子は君が作ったのかい?』
「誰だ?」
『僕の名前はライ、光の精霊さ』
光の精霊?
あぁ、光の宝玉にいるっていうあれか。
「本当にいたんだな」
『そりゃいるよ。といっても、本当は神子としか話せないはずなんだけど、コーマが作ってくれたお菓子のおかげで魔力が溢れて、君とも話せるようになったんだよ……にしても、凄いね。流石は料理レベル10なだけあるよ』
「料理レベル10? それって高いのか?」
『人類の中では君だけだよ……というか、君、スキル把握スキルを持ってるんだから、自分で確かめてみたら?』
「え? 俺、そんなスキル持ってたの?」
自分のスキルを確認してみる。
【鑑定レベル10・炎魔法レベル3・雷魔法レベル3・雷炎魔法レベル1・叡智レベル10・雷耐性レベル8・水上歩行レベル6・索敵スキルレベル6・スキル把握レベル5・スキル鑑定レベル1・診察レベル7・水魔法レベル3・スライム創造スキルレベル4・光魔法レベル3・鍛冶レベル10・錬金術レベル10・料理レベル10・裁縫レベル10・細工レベル10】
……チートだ!
てか、なんで俺のスキルは生産職寄りなんだよ。
どうして、魔法はレベル3までがほとんどなのに、鍛冶、錬金術、料理、裁縫、細工、鑑定のレベルが10なのか。
スキルのバランスがおかしすぎる。一体、どういう基準で選ばれたんだ?
『じゃあ、僕に会いたくなったら、また料理を作って……それと、君の料理、普段はもっと手加減して作らないと、大変なことになりそうだから気を付けてね』
そう言うと、光の精霊は消え、
「はっ、私は一体……あまりのこのお菓子のおいしさに気を失っていたようです」
シルフィアが最初に目を覚ました。ライのおかげだろうか。
そして、ザッカも目を覚ます。
「……ワシは……ワシは、まさか死んだ父から秘伝の奥義を授けられるとは」
泣いていた。どうやら、生きたまま臨死体験をしていたらしい。
そして、最後にサクヤの姿が元に戻った。
「まさか……カリアナ一族秘伝の奥義、朧隠れの術を会得できるとは……」
サクヤが消えたのは、忍術だったのか……。
……俺は残ったスイートポテトを見て、小さくため息をついた。
「あぁ、今度はもうちょっと手加減して作るから、誰も来ない部屋を用意してくれ」
俺は暫し問答した。
※※※
2時間後。
「うぉー、なんだこれ! こんなうまいの食べたことねぇ!」
「……甘くてほっぺが落ちる! 凄い、うまい!」
「神だ! 神が降臨した!」
笑顔でスイートを食べる皆。そこには敵も味方も関係ない。
甘い物が好きな人も嫌いな人も関係ない、全員が笑顔でスイートポテトを食べていた。
1000を超えるスイートポテトを作り上げた俺は、そのスイートポテトを笑顔で食べる彼らを見て、苦笑するしかなかった。
あんな方法で、あんな材料で作ったスイートポテトが本気でうまいのか?
あんな……あんな方法で料理を作って……いや、みんなが喜んでくれたらいいんだ。
あのレシピは俺の中に封印しておこう。
さて……本気で作ったはいいが、結局食べずに終わった7つのスイートポテト。
これはどうするか。とりあえず、アイテムバッグに入れて……1つ、1つだけなら食べてもいいよな。
割り当てられた自室に入り、スイートポテトを一つ食べた。
その日、俺は天国に行った。
あれ、スキルが1つ足りない?




