コーマVSベリアル
~前回のあらすじ~
クリスの勝ち。
「コーマ、もう少しでいけるわ」
「わかった」
成長したルシルのもう少しという言葉を信じて、俺は斧と杖を片手ずつに持ち、横に大きく跳んだ。
「雷よ!」
まずは牽制に雷を一発放つ。
が――
「あめぇ!」
ベリアルはその雷を紙一重で躱した。雷は奥の壁に激突し、目に見える
ウソだろ、あのスピードを避けるって、動体視力以前の問題だぞ!
ベリアルはこちらに向きを変え、拳を振るっている。
あんな所から何をする気だ!
「コーマ、お前も避けてみなっ!」
ベリアルは余裕の笑みを浮かべ、こちらに拳を振るい――一瞬のうちに理解した。
目に見えない何かがこちらに迫ってきていると。
俺は勘だけを頼りにその場に屈んだ。それは勘ではなく生存本能だったのかもしれない。
その直後だった、轟音が響いた。
振り返ると、壁に――決して割れないはずの迷宮に、横向きに亀裂が走っていた。
あの時、避ける方向を間違えていたら、右や左、後ろなどに跳んでいたら、俺の上半身が真っ二つになっていただろう。
そして、その壁の向こうには虚空が広がっていて空気が抜けていき――そして徐々に再生していった。
おいおい、迷宮の壁ってあんななの? 壁の向こうは土塊じゃないの?
亜空間にあるっていうのは聞いていたけど、壁の向こう側なんて考えたことがなかった。
「おぉ、コーマ、よくやったな。今のを避けたのはお前が初めてだぜ。まぁ、初めて使った技なんだけどな。ははっ、流石は俺様が見込んだ男だ」
初めて使った技? よく避けた?
今避けられたのは偶然だ。しかも、竜化第二段階の速度がなければ、屈む前に今の攻撃で死んでいたぞ。
今のが連続で来たら、俺は戦う前にやられる。
ならば――俺はアイテムバッグからそれを取り出して、投げた。
「おぉ、なんだ、コーマ! ボールなんて投げて」
「雷よ!」
俺はそう唱えて、ベリアルがボールと思っている――エレキボムを撃ちぬいた。
「うぉぉぉ、なんだこれ、けっこうビリビリするな!」
ウソだろ、エレキボムの中で笑ってやがる。
でも、今しかない。
俺は大きく前へと跳んだ。
そして、「雷よ!」と4発目の雷をベリアルの足元へと撃った。
土埃が舞い上がり、ベリアルの視線を塞ぐ。
「おいおい、コーマ、それで目眩ましのつもりか?」
土煙の中のベリアルがそんなことを言った。
「あぁ、目眩ましのつもりだよ!」
「そんなのしてもお前が上から来ることがわかってるなら、例えそこで斧を振り下ろしても、簡単に受け流し――」
煙が晴れた時、ベリアルと目が合った。
気付いたようだな、俺が片手で斧を持っていたのは轟雷の杖を使うためだけではない。
エントキラーの向きをスムーズに変えるためだ。
「受け流せるものなら受け流してみやがれ!」
俺は斧の側面を下にし、大きく斧を振り下ろした。
エントキラーとベリアルの両腕が衝突する。
一角鯨の角で作られた柄が大きくしなる――並みの素材だと折れていただろう。
俺の渾身の攻撃――これまで飲み続けていた力の神薬の力をすべてここに込めた。
力と力のぶつかり合いだ、これでダメなら、俺はこいつには勝てない。
だが、そのぶつかり合いのその軍配は……ベリアルに上がった。
ベリアルのやつ、笑ってやがった。
「かかっ、久しぶりだぜ、この腕が痺れる感覚はよ。だが、これがお前の渾身の一撃だとするのなら、とんだ期待外れ――」
「言っただろ、目眩ましだって」
俺はそう言うと、柄のしなりを利用して、跳んだ。
その反動でエントキラーもまた飛んでいき、ベリアルの背後に落ちた。
「おいおい、コーマ! 武器を捨ててどういうつもりだ? まさか俺様と殴り合うつもりか」
「まさか、俺は最初からお前に勝てるなんて思ってないよ! 頭の上がお留守だったな、ベリアル!」
土煙もそこからの上空からの攻撃も、全てはこの瞬間のため。
ベリアルが頭の上を見上げた。当然、そこには何もない。
ベリアルに勝つ必要はない。ベリアルの追い払い方はグリューエルという魔王が教えてくれた。
俺はそれを見てほくそ笑む。
ベリアルの足元に浮かんだ、青色の魔法陣を。
「ルシル!」
「転移陣発動!」
俺の声に呼応するように、ルシルが叫んだ。突如、ベリアルの足元の魔法陣が大きく輝き、ベリアルの姿がかき消えていく。
「こんな勝負俺様は認めねぇぞ! 正々堂々勝負し――」
それで終わった。
ベリアルの気配が完全に消えてなくなる。
ルシルがこちらに駆け寄ってきた。
「コーマ、大丈夫?」
「あぁ、アドレナリンが上がりすぎて、破壊衝動もない――そうだ、クリス達は!?」
オーガジェネラルと戦っているクリスを見ると――クリスは剣を曲げる妙な戦い方で、オーガジェネラルを圧倒していた。
ふぅ、あっちもなんとかなりそうだな。
「にしても、相変わらず卑怯なことを考えるわね。転移陣を使って強制退場なんて」
「今の戦いを見ていただろ。ベリアル相手にするにはまだ早かったよ。ま、あと1ヵ月も力の神薬を飲み続けたら、もう少しまともな戦いをできると思うがな」
それでも、あいつが本気を出したら、やっぱり敵わない気がする。
暫くはルシル迷宮に篭っていよう。
「ていうか、あいつをどこに飛ばしたんだ?」
「んー、一応、世界の反対側付近に飛ばしたからすぐに戻ってこれないはずよ」
そうか、なら安心だ。
隣の国とかなら、走ってきて、すぐにここに現れそうな気がするしな。
……弱化の泉が湧くまで残り3分か。
ふぅ、なんとかなった。
とりあえず、落ちた轟雷の杖とエントキラーはアイテムバッグに入れておこう。
横を見ると、クリスがオーガジェネラルの首を捻り斬り落としていた。
終わった――そう思った時、何かが割れる音がした。
一体、何が?
「ルシル様っ!」
ゴブ(仮)の声が聞こえた。
その瞬間、ゴブ(仮)は何かからルシルを庇うように彼女の後ろに仁王立ちし――虚空から現れたそれに――ルシルごと貫かれた。
俺の目の前のルシル――そのお腹から手が突き出され、彼女の血が俺の顔に飛び散った。
「おい、コーマ。こんな楽しい戦い、これで終わりってことはないだろうが」
嘘……だろ。
空間が割れ――そこからベリアルの声をした、二本の角の生えた黒い肌、赤い目の獅子が現れた。
突如――俺の中の破壊衝動が膨れ上がった。
ルシルが倒れたことで――俺の中の封印が完全に解かれた。
今年中に7章終わるのは難しいかな。
何故か新連載書いていますが、あっちは休みの日に書く程度なんで、毎日更新は難しいです。ジャンル的には異世界で俺TUEEEな異世界旅に近いです




