クリスVSオーガジェネラル
~前回のあらすじ~
コーマが竜化第二段階に入った。
私はコメットちゃんとタラくんに待ってもらうように頼み、腰のアイテムバッグから、コーマさんに貰った薬を服用しました。
さっきのオーガジェネラルの攻撃によるダメージが一気に無くなりました。
今考えると、ここまで効き目のいい薬を大量に持っている時点で、コーマさんが普通の人じゃないと気付くべきだったんですね。
本当に今更ですけど。
炎の剣を再度構えました。
興奮状態のオーガジェネラルが、私が炎の剣を構える前に再度タックルをしようと、右の肩をこちらに向けて、突撃してきました。
「クリスさん」
「大丈夫、コメットちゃん」
そして、私もオーガジェネラルに向かって走り、剣を横にして薙ぐように攻撃をします。
タックルでの攻撃は弱点である角や目といった弱点の部分を隠すようにしているから、私は肩の付け根を狙ったのですが――オーガジェネラルの肩が僅かにずれ、剣を受け流します。
このままでは私が彼のタックルを直撃してしまう。
ですが――私にはスキルがあります。
コーマさんが言うには、私が持っているスキルは、
【聖剣・蛇紋剣・瞬剣・魔法剣・多段ジャンプ】
の5つ。しかし、多段ジャンプを除き、私が発現できたのは先のユーリ様との戦いで見出すことができた魔法剣、そして、もう一つ。
《スキル:蛇紋剣》
蛇のように剣が曲がるスキル。そう聞いた。
出るならここ!
お願い!
そう念じた私でしたが、剣が――曲がらない!
くっ――私は剣を立て、タックルに備えました。
ですが――それでも私の身体は大きく飛び、
「クリスさん!」
「クリス殿!」
壁に激突しそうになった私をコメットちゃんとタラくんが受け止めてくれました。
「……ありがとうございます」
足りない――イメージ力が全く足りない。
さっきは風の魔法がはっきりと見えたから、炎の剣に風が巻き付くイメージがはっきり見えた。
でも、今はダメ。
コーマさんの作った剣はとても丈夫で、そんな剣が曲がるなんてとてもではないけれどイメージができない。
「クリスさんはここで――行くね、タラ!」
「うむ」
二人は剣を捨て――素手で戦うつもりのようだ。
そういえば、コーマさんが言うには二人は元々コボルトだったといいます。
元々コボルトは剣よりも棒や短剣、それがなければ己の爪や牙で戦う魔物です。
でも――オーガジェネラルの硬い皮膚を爪で傷つけられるとは思えません……二人の狙いは明らかに時間稼ぎ。
二人は必至に攻撃を躱していますが、攻撃が通らない以上、オーガジェネラルを倒すことができません。
恐らく、コーマさんを信じて――コーマさんが勝つと信じて、オーガジェネラルを足止めし、ゴブカリくんを守るための時間稼ぎ。
でも――私はそれでいいとは思えない。
彼の横で戦うには――こんなところで足踏みをしていられない。
剣が曲がるイメージ……それを掴むにはどうしたら。
炎の剣を曲げるイメージを――……炎?
そうだ、炎です!
私は剣の柄を握り、力を込めました。
魔法剣のスキルのイメージを込め、剣の心を読みます。
剣の材料は、確かファイヤーサラマンダーの鱗だってコーマさんが言っていました。
もしもファイヤーサラマンダーさん、あなたの力が込められているのなら、どうか、私に力を貸してください!
「魔法剣!」
力を込めると、炎が噴き出した。
剣が赤く染まる。
この剣なら受け流されてもダメージを与えることができるでしょう。
でも――致命傷を与えるためには、やはり次の力が必要です。
「コメットちゃん! タラくん! どいてください!」
私がそう叫び、地を蹴った。
炎よ、もっと燃えろぉぉぉっ!
コメットちゃんとタラくんが退くと同時に、私は剣を突き出しました――皮膚を焦がす業火であるにも関わらず、興奮状態にも関わらず、当然のようにオーガジェネラルは私の剣を受け流しました。
ですが――
(曲がれぇぇぇぇぇっ!)
そう念じた直後でした、剣が僅かに曲がり、オーガジェネラルの腕に突き刺さります。
恐らく久しぶりに感じたであろう鋭い痛みにオーガジェネラルが雄叫びを上げました。
うまくいった――剣が曲がるイメージはできませんが、剣が柔らかくなるイメージはできました。
熱した鉄が曲がるイメージが。そこから、蛇紋剣――曲がる剣のスキルに繋がりました。
「ここからは私のワンサイドゲームです!」
私は左腕を背中の後ろにまわし、片手で剣を突き出します。
これはレイピアの――ユーリ様の動き。
レイピアは元々は攻撃を受け流されてから、剣を曲げてダメージを与える二段構えの剣です。
(まぁ、それなら最初からレイピアを用意していたらよかったんですけどね)
持っていないものは仕方有りません。
私の突きが受け流されても、その剣が曲がり、オーガジェネラルの腕に巻きつくように切り刻みます。
これが――スキル蛇紋剣の威力です。
すでに右腕は大きく焼きただれ、もう風が吹いても痛みを感じる状態でしょう。
ですが――オーガジェネラルはその痛みを、興奮状態で打消し、私に再度体当たりをしようとしてきました。
でも――もうそれも終わりです。
私は剣を横に向け、オーガジェネラルの体当たりを自らの剣で受け流しました。
「なるほど――単純な攻撃ほど有効ですね。あなたの技、私がしかと受け継ぎました」
そして、私は前のめりに倒れそうになるオーガジェネラルの首に剣を撒きつけ――その首を捻り斬りおとしました。
――お手合わせ――ありがとうございました。
肩で息をし、私はそのオーガジェネラルの遺体を見下ろしました。
でも、戦いはまだ終わっていません。
そして、私はコーマさんを助けようと、二人の戦いを見て――
予想だにしなかったその光景に――私は思わず叫んでいました。




