ベリアル迷宮進軍
~前回のあらすじ~
ベリアル迷宮に突入
通路はそれほど広くないため、一列になって移動。
こう狭いと、魔物に囲まれることがないから安心なんだけど、でも行き止まりにたどり着いたところで、後ろからベリアルに襲われたらとか思うと少し怖い。まぁ、索敵スキルは持っているので、そうそう不意打ちはないと思うけど。
一応二人並んで進むことも難しくはないんだが、なんというか、一列で歩くとまるでRPGみたいだなとか思えてきて、少しテンションが上がる。ちなみに、殿をつとめるのはタラ。コメットちゃんは真ん中あたりにいるんだが、言葉数が明らかに少なくなっている。
強くなったとはいえ、過去のトラウマはそう簡単に拭い去られるものではないということかな。
「でも、本当にここが、あのベリアルの迷宮なのか? あいつの巨体じゃ通るのがやっとだし、中には明らかに横向きじゃないと通れないほど狭い場所もあるだろ」
ベリアルが横向きで、蟹歩きで移動する姿を想像すると、かなりシュールだ。
「はい、それは間違いありません。某も二度程、遠くから見たことがあるのですが、確かにあのベリアルでした。とはいえ、ベリアルはこの迷宮には滅多に訪れません。ほぼ毎日、強敵を求めて大陸中を歩き、魔物と戦い配下にしていると聞きます」
「どんな武者修行だよ……まぁ、今はそれがありがたいんだが」
確かに、考えてみればあいつがこんな暗いところでじっとしているとは考えにくいな。普段ここにいないから、迷宮の改造なんかもしないんだろう。
ベリアル迷宮に関して、二人が知ってる魔物について聞いていた。
獣系の魔物が多いそうだ。
狼や獅子、虎といった獣。
ミノタウロス、コボルトといった獣人もいるという。
「そういえば、一角鯨も元はベリアルの部下だったんだよな」
蒼の迷宮で戦った一角鯨。HPが4千万以上ある化け物鯨だった。
あいつの角は槍として生まれ変わり、今ではエントキラーの柄の部分に使われている。普通の素材を柄として使ったら斧がすぐに壊れてしまうからな。そういえば、あいつが落とした竜涎香の使い道をまだ決めていなかったな。
とにかく、その一角鯨がベリアルの配下で、思えば復活した一角鯨を見に来た時に闘ったのがタラだった。
あの時はタラは重傷を負った挙句、見逃して貰ったのだが、もしもあの時一角鯨とベリアルが共闘していたら、俺達も蒼の迷宮に住む皆も無事では済まなかったのは間違いない。
「ええ。ですが、配下にしたのはいいのですが、この迷宮には一角鯨を泳がせる海がないため、蒼の迷宮に放ったと言われています」
そんな理由で放たれたのなら、蒼の迷宮に住む皆も迷惑だな。
もっとも、その一角鯨も、メデューサの力を借りた昔の戦士によって石に変えられ、復活した後は俺達に倒された。
だが、少なくともベリアルは一角鯨を超える力を持っているということだし、竜化しないとまず俺では敵わないだろう。
いや、俺もあれからだいぶ強くなったんだし、今なら竜化しなくても一角鯨を倒せるくらいの実力は身に付けたと思ってる。
実感はわかないけど、HPは当時1000もなかったのに、今はHP1万を超えているしな。
力もあの時の百倍くらいにはなっているはずだし、最近は魔力を上げるのも忘れていない。普段は全力で使うことはないんだけど。
「んー、少し試してみるか」
拳に力を入れて、壁を叩いてみることにした。
迷宮の壁や天井は決して壊れないというからな。
直後――その振動と轟音が迷宮全体に響き渡った。
と同時にあちこちの土床にひび割れが起こり、土の下の石床が見えた。
クリスとルシル、ゴブ(仮)はその振動に思わず前のめりに倒れてしまう。
そうか、下手に壊れないからこそ震動として伝わるのか。
これは失敗したな。
「コ……コーマ様、何をなさってるんですか」
とコメットちゃんが壁にもたれかかりながら尋ねた。
俺と同じく力の神薬を飲み続けたコメットちゃんはなんとかその振動に耐えるだけの力があったらしい。
「わ、悪い。俺の力ってどのくらいあるのかなって思って……ちょっと前に知り合った奴に数値としては教えてもらったんだけどさ……まさかこれほどとは……あ」
「コーマさん、今度はどうしたんですか?」
「魔物の群れがこっちに来ている。んー、なんで気付かれたんだろうな」
俺がそう言うと、後ろにいるみんなが、俺をじっと見てきた。
わかってます、俺が悪いです。
いや、本当にここまでの力とは思わなかったんで。
「タラ、コメットちゃん、来てくれ、クリスは二人が前に移動したらルシルと入れ替わって後ろを守ってくれ」
俺の指示に、3人が動く。
そして、コメットちゃんとタラに、俺の前に立ってもらう。
「今から来る雑魚の討伐、二人に任せた」
「「え?」」
二人が声が重なったと同時に、前方から狼二匹がこっちに襲ってきた。
「ちょっと、コーマさん! なんで二人に任せるんですか!」
「いやぁ、この通路狭いからさ、小柄な二人に任せた方がいいだろ……頼んだ」
コメットちゃんとタラは冷や汗を流しながらも、わかりましたと呟く。
二人は圧倒的に強いんだけれども、どこか震えている。
「……行くよ、タラ」
最初に声を出したのはコメットちゃんだった。
「うむ、行こう」
タラも頷き、二人同時に前に跳んだ。




