戦場突入前のひととき
~前回のあらすじ~
クリスにみんなを紹介した。
「アイテムクリエイト」
休憩しながら、俺はアイテムクリエイトで力の妙薬を始め、多くの道具を作っていた。
それを、クリスが嫌な顔で見てくる。
「コーマさん、力の妙薬って、ポーションと岩から作ってたんですか」
「知らなかったのか? クルトもこれで作ってるぞ」
「それはいいんですけどね……力の妙薬が二つで力の超薬、それが二つで力の霊薬、それがさらに二つで力の神薬って、伝説の薬がそんなに簡単にできるんですか?」
驚くよな、そりゃ驚くよな。
俺も最初は驚いたよ。
アイテムチートすぎるもん。
とりあえず、10本、力の神薬を作った。
「クリス、これはお前のアイテムバッグに入れておけ」
1日2本以上飲んでも効果はないからな、と注意しておく。
「えっと……いいんですか?」
流石にクリスも遠慮しているようだ。
何しろ、これ一本、売れば一生遊んで暮らせる金額になるだろう。
「今更だろ。転売はするなよ、流通元を探ろうとする輩がいるのは間違いないからな。どうしても売りたければフリマにしてくれ」
「メイベル達はコーマさんのことは――」
「言ってない。他のみんなはどうか知らないけど、メイベルなら、俺の正体を明かせば地の底まででもついてきてくれそうな気がするからな。逆にそれが怖いよ……あいつは巻き込みたくない」
俺の自意識過剰かもしれないけど、メイベルは義理堅いところがあるし。
「え、なのに私には簡単に正体を明かしたんですか?」
「お前が勝手に地の底まで来たんだろうが……ったく」
クリスにもずっと黙っておくつもりだった。
俺はユグドラシルの葉を取り出し、魔力の神薬作成を始めた。
魔力の神薬は絶対に使うものだし、多めに作っている。
現在200本は作っているが、あと100本は作りたい。
ちなみに、ルシルのための魔力の神薬なのは言わずもがな、なのだが、そのルシルはというと、
俺がアイテムバッグに入れて持ってきたタタミの上に寝転がり、チョコレートを食べていた。
くつろぎ過ぎだろ。ゴブ(仮)、正座してお茶を淹れないでいいから。
「ねぇ、コーマ。その魔力の神薬、ちょっと甘めにできないの? 苦いのよ」
「無茶言うな。これは清涼飲料水じゃねぇ、第三類指定医薬品だ。用法用量を守って正しく使え」
そもそも、味に対してお前が文句を言うなよな。
ルシルの料理はいつだって、苦いんじゃなくて、苦しいんだから。
タラは素振りをしている。
重りをつけた剣で、300キログラムはあるんだけど、楽々と振るってるな。
コメットちゃんは、あぁ、みんなのためのお弁当を作ってくれている。
魔力コンロを始めとした調理器具を持ってきた甲斐があったってもんだ。
やっぱりアイテムクリエイトで作った料理よりも手作りのほうがおいしいもんな。
俺が作った料理?
あんなもん食べたらリラックスし過ぎて大変なことになる。
「他にも、カリーヌちゃんも、コーマさんの部下なんですか?」
「あぁ、他に、マユも今は俺の部下だし、あともう一人、人形遣いの男がいる。そいつについてはおいおい紹介するよ」
「マユさんもですか!? え、でもマユさんって普通の人間ですよね」
「それについてもおいおいな。ていうか、お前も普通の人間だろ?」
「当然、私は人間……って私はコーマさんの部下じゃないですよ! むしろ、コーマさんが私の部下じゃないですか! 借金もなくなったわけですし」
「クリスの借金をチャラにするってのは、俺とお前が戦った時の話だ。俺の仲間になるのなら借金継続だぞ」
「そんな、ひどいですにゃ! にゃ、猫語は辞めてくださいにゃ! そうだ、あの力の神薬を売れば借金が返せるにゃ」
「うん、地上に戻れたら……の話だけどな。お前、ユーリに剣を向けておいて、無罪放免で地上に戻れると思ってるのか?」
「あ……」
クリスは自分がしてしまった事実を思い出し、項垂れた。
「よくて勇者権限剥奪、最悪賞金首としてギルドの壁に張り出されるな。Dead or Alive.生死を問わずで手配されて、捕まったら良くて奴隷落ち、最悪極刑だろうな」
「うっ……それならコーマさんはどうなんですか! 魔王本人なんですから、極刑確定じゃないですか」
「ははは、俺にはアイテムを作成する能力があるからな、生かしておいて損はないとあいつも思うだろ」
「そんなぁ……」
おっと、アイテム作成をさぼってしまった。
アイテムクリエイト、アイテムクリエイト、アイテムクリエイト……っと。
「まぁ、ユーリもあの様子じゃ大丈夫だろ。本気で俺達をどうにかしたいなら、転移陣の封印を解除したりしないって」
俺達がゴブ(仮)のゴブリン王への進化を阻止してからとどめを刺すための行動に出る、という可能性はある。
でも、なんだろうな。
「それに、あいつ、やっぱりガキだろ? アイテムクリエイト、アイテムクリエイト……」
普段は大人ぶった行動していても、キレた時なんて本当に子供だしな。
「あぁ……そうですね」
クリスの賛同も得られたところで、
「コーマ、アイテムクリエイトのついでに、チョコレートパフェ作ってよ」
「アイテムクリエイト……あぁ、ちょっと待ってろ、アイテムクリエイト」
素材をアイテムバッグから取り出して、二人分のチョコレートパフェDXを作る。
一つはルシルに、一つはクリスに渡した。
「食え。アイテムクリエイト……うまいから」
「いいんですか?」
「俺はあまりパフェは食べないからな」
嫌いではないんだが、男がパフェを食べるのを他人に見られるのが恥ずかしいと思ってしまう。
日本人の悪い性だ。
ルシルは笑顔でパフェを食べ始め、クリスは初めての料理に少し不安な顔になる。
「あの、魔族しか食べない謎の料理とかじゃないですよね」
「アイテムクリエイト……いらないなら俺が貰う」
パフェの器を手元に引き寄せようとすると、クリスが慌ててそれを掴んだ。
「嘘です嘘です、食べます食べます!」
そう言って、細長いスプーンで、パフェのアイスを食べた。
それに、クリスは目の色を変えた。
「冷たくておいしいですよ!」
「旨いって言ってただろ……アイテムクリエイト」
絶対信じてなかったな。
おっと、忘れちゃいけない。
「コメットちゃんの分は後で作るからね」
「はい、ありがとうございます」
コメットが尻尾を振って喜んでくれた。
ゴブ(仮)とタラがこっちを見ているが、お前等は無しだ。
男はパフェ禁止な。
そうして俺達は一時の休暇を満喫し、最後にマユから貰ったライデンナマズの髭――雷の髭を材料にして作ったエレキボムをクリスとコメットちゃん、ルシルに渡した。竜化を除く攻撃方法で、一番攻撃力の高い武器だからな、これが。
もちろん、アルティメットポーションも全員に渡す。
クリスにアルティメットポーションについての説明はしていないが、まぁそれも今度でいいか。
「予定の時間ね。コーマ、転移陣を開くわよ」
「あぁ、わかった」
いよいよ、ベリアル迷宮に突入の時だ。




