仲間の紹介
~前回のあらすじ~
ユーリが去った。
ユーリとルルが去り、149階層に一時の平穏が戻った。
「では、行きましょうか、コーマさん」
150階層へと向かおうとするクリスに、俺は驚いたように言う。
「……え、クリスもついてくるのか?」
「当たり前です! コーマさん一人に任せられませんから」
「俺一人じゃないんだけど……まぁ、こうなったら全部話すか。どうせ時間はあるし」
ついてこい、とクリスに言って、150階層へと向かう。
「そういえば、コーマさん。あのスライムとゴーレムはわかるんですけど、ドラゴンとかなんなんですか? 私も結構ピンチでしたよ。勇者試験の時にも見ましたけど」
「あぁ、あれな……クリス、薬草汁って知ってるか?」
「郷土料理ですよね? ポーションの製法が一般に広まるまでは結構世界中で作られていたみたいですけど、ポーションよりも作るのが面倒なのと、味もよくないのであまり作られなくなったとか……それがどうしたんですか?」
俺は目線をそらして含み笑いする。
「その薬草汁の成れの果て……さしずめ薬草ドラゴンなんだ……」
「ははは、コーマさん、そんなウソは流石に私でも騙されませんよ」
“流石に”と言うあたり、自分が騙されている自覚はあるのか。成長したな。俺が散々騙してきた甲斐があったというものだ。
でも、これは本当なんだよな。悲しいけど。
「え……コーマさん、本当なんですか?」
「クリス、俺が魔王だったことでわかったと思うが、事実というのは意外性の連続なんだ。あのドラゴンは正真正銘薬草汁。しかも、作ってる本人は、合成獣作成をしているつもりでもないし、怪人を作り出す博士でもない。本気で料理をしているつもりで料理しているんだ」
「……そんな……そんなことがありえるんですか?」
「俺はこの目で見てもいまだにウソであってほしいと思ってるよ……しかも、あれを週に一度食べさせられるんだよ」
俺がげんなりした口調で言うと、クリスが同情と憐れみの目で俺を見た。
うん、わかってくれるか。
そして、クリスと一緒に150階層へ。
そこにいたのは、ルシル、コメットちゃん、タラ、ゴブ(仮)の4人。
そして、ルシルは俺とクリスを見て、
「やっぱりそうなったのね」
この事態を予測していたかのように苦笑して言った。
「ルシルちゃん達もここにいたんですか」
「ここよりも深い場所にね。コーマ、私達については説明してないの?」
「あぁ、さっきクリスに言ったんだが」
俺はクリスにルシルを紹介する。
「こいつが料理長だ」
俺の紹介に、クリスが一歩後ずさる。
「もう、コーマ! 何よ、その説明」
「悪い悪い。あぁ、ルシファーの一人娘のルシルだ」
「るしふぁー?」
「さっき話しただろ。ここの元魔王で、お前の親父さんが殺し、お前の親父さんを殺したっていう闇竜だよ」
「え……」
その時のクリスの表情は複雑だった。
クリスにとって、ルシルは父親の敵の娘であると同時に、自分もまたルシルの父親の敵の娘なんだしな。
「まぁ、感情はいろいろとあると思うけど、全部終わってからにしましょ。コーマ、さっき転移陣が使えるようになったわ」
「壊すのに成功したのか? 思ったより早かったな」
「解除されたみたい」
ルシルが首を横に振った。
ユーリが解除してくれたのかな。
「次に、コメットちゃん……クリスには前にフリマのコメットちゃんとは別人だって話したけど、もともとはコボルトだったんだが、そこにコメットちゃんの魂が融合して今のコメットちゃんになった、って言えばわかってくれるか?」
「えっと、つまりはコメットちゃんなんですね」
うん、安直に考えてくれたようだ。
それで万事OKだと思う。まぁ、半分はグーなんだけどな。
「そっか、コメットちゃん、生きてたんだね。よかったです」
「はい、クリスさん、前はウソをついてすみませんでした」
「いいんです、コメットちゃんが生きていてくれただけで」
「死んだのも本当なんですけどね」
クリスとコメットちゃんが手を握り合う。
「某はタラ。人間だった時はゴーリキだった。あの時は苦労を掛けた」
「え゛」
クリスフリーズ。まぁ、見た目だけなら女の子と間違えてもおかしくない子供が、あのいかついオッサンの今の姿だと言われたら固まるよな。特徴として一致するのはもう獣の頭蓋骨を使った兜くらいなものだし。
そして、最後のもう一人。
「こいつがゴブ(仮)。仮の名前だけどな。ユーリが言っていた、ゴブリン王の素体がこいつだ」
「はじめまして、ゴブリン族、族長の息子、ゴブカリと申します。よろしくお願いします」
挨拶をされて、クリスは戸惑い、
「どうしましょう、コーマさん! ゴブカリくん、凄くいい子っぽいですよ」
「だよなぁ。俺もそれで困ってたんだよ」
4人を紹介し終えた俺は、4人に改めてクリスを紹介する。
「えっと、こいつはクリスティーナ。勇者で、俺の主人でもあるが、まぁ俺の方が主人ぽいからそのあたりは気にしなくていい」
「その説明はひどいですよ、コーマさん」
「あと、力の神薬を健康ジュースと言って飲ませているのに全然気付かないくらいのバカだから、適当にからかって遊んでくれ」
「その説明はもっとひどい……って、え? あの健康ジュース、力の神薬だったんですか!? 私、3、4日に1本飲んでましたよ」
うん、50本は軽く飲んでる。
「気にするな。それとも代金払えるか?」
「うっ……気にしません」
素直でよろしい。
全部の代金を請求したら、国家予算レベルでも済まないからな。
これ以上騒いで代金を請求されたらどうなるか、クリスもわかっているんだろうな。
もちろん、内心はいろいろと言いたいことがあるに違いないが、情報が多すぎてクリスも頭の整理が追いついていないんだろう。
「最後に、俺について話す。あぁ、ルシルと、コメットちゃん、タラは知っていると思うが、俺はこの世界の人間じゃない。元々、地球という世界の、日本というそこそこ平和な国で、釣りをしていたところをルシルに召喚されて、まぁ、なんだかんだあって魔王の力を手に入れてしまい、アイテムを作り出す能力を手に入れた。クリスが持ってる剣や鎧、アイテムバッグや薬も全部俺の手作りだ。趣味はパーカ人形のコレクション。好きな食べ物はルシルが作っていない食べ物だ」
俺の自己紹介に、クリスが「え、別の世界の人だったんですか? そんな世界が本当にあるんですか? あと、私のアイテム全部コーマさんが作っていたのなら、借金減らしてくださいよ!」と騒ぎ出し、ルシルが「私の料理以外が好きってどういうことよ」と怒り出して「今度の料理は自信作なんだから」料理を出そうとする。
まぁ、賑やかになったところで、俺達は休憩することにした。
ユーリが去ったおかげで、泉が湧きだす制限時間ぎりぎりにベリアルの迷宮に移動することができるからな。




