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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode07 小鬼の王

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ユーリの正体

~前回のあらすじ~

コーマがルルを人質(?)にした。

 俺の暴挙に、ユーリの手が止まり、笑みを浮かべた。


「人質のつもりですか? そんなものには何も意味もない。大人しく君はクリスティーナが殺されるのを――」


 俺はユーリの言葉を遮り、ルルの服を捲りあげた。

 小さなお腹が露わになり、そこは――内出血のせいで青い染みがまだらのように広がっていた。


「このままだとお前、死ぬぞ」

「どういうことですか、コーマさん」


 クリスが辛そうに立ち、俺に尋ねた。


「ユーリの強さの秘密は、ルルからの魔力の提供にある。ルルから魔力を送られることでユーリは強くなり、力を使えば使うほど、ルルは魔力不足に陥り、それでも魔力を送れば生命力が失われる。顔色が悪くなったり、鼻血が出たり、目が充血したり……下手したら内臓まで傷付くくらいにな」

「そんな……そんなひどいことを、ユーリさん、貴方って人は」

「ははは、だから言っただろ、彼女は元々使い捨て! 人質など意味はない。例え魔力の提供がなくても、クリスティーナを殺すくらいは」


 クリスの非難に対し、ユーリは嘲り笑うように言った。

 そして、ルルの瞳には全く恐怖の色がない。


 全く、こいつは……、


「だから、いい加減にしろよ。そんなくだらない演技は……ルルが使い捨て? そんなわけないだろ……だって」


 俺は――俺が最初からわかっている事実を告げた。


「ユーリ、あんたはただの人形、それを操ってるのがルルだってことくらい、初めて会ったその日から気付いてるんだよ」


 何故なら、俺には鑑定スキルがあるから。


……………………………………………………

闘神人形【魔道具】 レア:72財宝


魔力で動く、最強の力と剣技を持つ人形。鑑定遮断の能力も持つ。

魔力を提供するには一定の距離内にいなければいけない。

……………………………………………………


 鑑定遮断があるらしいのだが、俺はしっかり、ユーリの正体を見抜けていた。


 こいつこそが、俺が自力で見つけた最初の72財宝だった。


 鑑定能力レベル10は伊達じゃないってことだ。そもそも、この鑑定能力はルシファーの能力をかなり凝縮しているものだからな、鑑定遮断くらいで見られなくなるほどやわじゃない。


「最初ユーリを見たとき、俺はクリスに言っただろ。ギルドマスターってあんな小さな女の子なんだってな」

「え、そんなこと言ってましたっけ?」


 言ってたよ。まぁ、クリスの記憶力に期待したらダメか。


「でも、待ってくださいよ、ルルちゃんは小さい女の子ですよ! ユーリさんは何年も前からギルドマスターをしていて」

「それこそ、ギルドマスターの部屋の肖像画を見たらわかるだろ。ルルの正体を隠すためかどうかはわからないが、逆にあれで正体はバレバレだったわ。初代ギルドマスターから今のユーリまで、全員同じ顔をしていて、傍らにはルルそっくりの子供がいた。それが全員ルルと同一人物だったとしたら……」

「そんな、子供のころから年を重ねない人なんて聞いたことが――」

「俺は聞いたことあるぞ。年を取らない存在――俺もそうだしな」


 そして、俺はルルの正体を告げた。


「ルル、お前は……魔王。そうだろ?」


 俺の言葉に、ユーリはレイピアを落とした。

 そして、肩をすくめる。


「ええ、正解です。あぁ、私は喋れないので、ユーリを通して話させていただきますね」


 諦めたかのように、ユーリは……いや、ルルは認めた。


「お前の住んでいる迷宮は、やっぱり勇者試験の時に使ったギルドが管理している迷宮なのか?」

「その通りですよ。といっても、私があそこに行くことはまずありませんけどね。私の家はこの町ですから」

「ちなみに、何歳なんだ?」

「女性に年齢を訊ねるものじゃありませんが、まぁ、300歳は超えています」


 ユーリは笑って言った。

 300歳か、ルシルよりは年下だな。


「それで、どうします? 私を殺しますか」

「そうだな――」


 俺はアイテムバッグからそれを取り出した。


 アルティメットポーション。


 俺の常備薬だ。


 そして、その薬瓶ののみぐちをルルの口にツッコム。

 みるみるうちにルルの内出血の痕跡が消えていく。


「一体、何を……」

「気にするな。てか、魔王って肉体年齢と精神年齢リンクしすぎだろ。全く、あんなにうまそうにクッキー食ってるガキがいっちょまえに大人ぶってるんじゃないよ」


 俺はルルの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

 そもそも実年齢が婆さんで見た目がガキ。美味しそうにクッキーを食べている時点で、あいつとキャラが被り過ぎだろ。


「ルル、俺のことを信用しろとは言わない。でもな、ここは見逃してほしい。ゴブリン王は絶対に誕生させない。今からベリアルの迷宮に行く、そこに弱化の泉という場所がある。そこに入れば、ベビーゴブリンはゴブリン王にならない可能性が高い」

「ベリアルの迷宮……コーマさん、例え貴方でもベリアルを相手にするにはいささか力不足かと」

「かもな。でも、あいつは地上にいたし、迷宮の入り口は封鎖されているから、今なら行けるよ」


 俺の説明に、ルルは「そうですか」とユーリの口を通じて呟き、そして歩いていきユーリの背に乗った。


「貴方を見逃す条件が一つだけあります」

「なんだ?」

「貴方の作ったクッキー、あれは大変美味でした。また用意してください。あと、クリスティーナさん」


 ルルは振り返り、ユーリに言わせた。


「貴女の力は既にお父上を越えています。もしもゴブリン王が復活したその時は、君が責任を以ってゴブリン王を討ちなさい」

「はい、ありがとうございます、ユーリ様……いえ、ルル様」

「ユーリでいいですよ。では、私はこれで失礼します」


 そう言って、ユーリは歩いていく。

 ルルを――小さな魔王様を背に乗せて。


   ※※※


 ユーリの背に乗り歩く私の前に、人影が二つ、姿を現した。


「……もう隠れん坊はおしまいですか?」


 この二人が私達の後をついてきていたのは最初からわかっていました。

 一人は勇者の緊急招集にも来なかった勇者――エリエールさん。

 そして、もう一人。七英雄の一人であり、私の知り得る限り最も強い存在ともいえる彼女――レメリカさん。


「エリエールさん、あなたの本当の主が、ギルドでもアイランブルグでもない、レメリカさんであることはわかっていましたが、ここで二人して姿を現すということは、私を殺しに来たのですか?」

「最初はその予定でしたが、貴方がコーマに与したことでその必要がなくなりました」


 レメリカさんが淡々と語る。

 全く、私の部下としては有能ですが、敵にまわしたらここまで厄介な相手はいません。


「それに、コーマ様があなたに簡単に負けるとは思えませんからね」


 エリエールさんが笑顔で言った。彼女がコーマくんに惚れているのは知っていましたが、もうべた惚れのようですね。


「確かに、私も一角鯨やエントを倒す彼に勝てるとは最初から思っていませんでしたよ。彼に勝てるとしたら、ベリアル……最強の魔王かその影。もしくは、かつてルシファーを、クリスティーナのお父上もろとも殺した貴女くらいなものですよ、レメリカさん」


 そして、私は彼女らとすれ違い、階段へと歩いていく。

 もうゴブリン王のことは私の範疇からとっくに外れている。


 かつて、ゴーリキくんが暴れたときにコーマくんに売ってもらった通信イヤリングを使い、地上で待機しているジューンに指示を送ります。

 転移陣の封印は解除するように、だけれど封印したフリをしておくように、と。また、迷宮の入り口の警備を強化するように伝えました。


「さて、地上に戻りましょう。仕事は山のように残っています。あと、貴女達がさぼった分は無断欠勤として扱いますので、給料査定は覚悟してくださいね」


 さて、コーマくんは成功するか、失敗するか。

 失敗したとしても、ゴブリン王の素体を待っているのは死でしょう。

 あの迷宮を選んだ時点で、その運命はもう決まっています。

ここで、ようやく2つ目の72財宝の正体暴露です。

まぁ、多くの人はわかっていたはずですが。


ユーリの正体については第一章からかなり露骨に当初から書いていましたが、読者様が気を遣って予想もしてくれていなかったようで、作者としてはとても助かりました。


・ユーリとコーマが話すとき、棚の上に寝ているルル、彼女が寝たフリだと見抜いている描写。

・性別反転薬はユーリに飲ませても効果があるとは思えない、という描写。


等も露骨にルルの正体を見抜くポイントですし、今章でもルルが喜んで食べたクッキーをユーリが食べずに貰って帰ったことなどもわかりやすかったかな


そして、物語はいよいよベリアル迷宮に移行します。

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