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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode07 小鬼の王

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国主会議

~前回のあらすじ~

転移陣が封印された。

『ええ、こっちの転移陣も使えないわ。そういうことだったのね』


 通信イヤリング越しにルシルと会話していた。こちらの現状を伝えたうえで、魔王城の状況を教えてもらった。

 やはり、転移陣は全て使用不可能な状態になっているらしい。


『転移陣の魔法を封じているというよりかは、転移陣を使うときに使われる空間歪曲の間に封印力場を作ることによって転移陣の相互性を省くことによって転移陣を封じているのよ。おかげで、転移陣を使わない転移魔法も使えないわ。転移陣の封印だけなら、別の転移魔法を開発したらいいだけなんだけど厄介よね』


 言っていることがさっぱりわからん。

 ただ、魔法を開発したらいいだけって言っているルシルが恐ろしい。

 それって魔法を作るってことだろ?

 材料を加工するだけという俺がしていることよりもはるかに凄いことだと思うんだが。


「なんともならないのか?」

『ううん、とりあえず魔王城周辺にある封印力場の周囲にダミーの封印力場を発生させると同時に、封印力場に穴を空けるための魔法を今開発しているから、そうね、あと一週間くらいで魔王城の転移陣は使えるようになると思うわよ。無理やり封印力場を引き裂いて二度と封印魔法を使えないようにするだけなら一日もあればできるんだけど、それだと地上で封印力場を展開させているジューンって人に気付かれる恐れがあるから』

「えっと、よくわからないんだけど。封印を壊すのってそんなに簡単にできるのか?」

『簡単じゃないわよ。だから一日かかるのよ。並みの術者の仕業なら、気付かれることなく3分で封印を壊せるわ。コーマのおかげで魔力も少しだけ戻ったから。まぁ、私の本来の力があれば、10秒で魔力を逆流させて術者ごと殺せるけどね』


 おいおい、相手は一応、お前の親父さんを殺した七人の英雄の一人なんだぞ?

 10秒で殺せるって……まぁ、あいつの本来の力は俺もこの目で見ているわけだが。

 何しろ、図書館でいくら探しても見つかることがなかった、異世界からの召喚魔法をルシルはいとも簡単に成功しているんだし、ルシファーの力に飲み込まれそうになった俺を救ったのも彼女だからな。


「とりあえず、こっちも何かわかったら報告する。それと、ゴブリン王のことだが」

『うん、ゴブリンの族長に、何か知らないか聞いておく。ねぇ、コーマ。ゴブリン族長の子供がそのゴブリン王ってことはないの? 時期的にも』

「いや、それはないだろ……さすがに。ゴブリン族長って、ゴブリンジェネラルどころか、ホブゴブリンでもない普通のゴブリンだし、突然変異にしても突然すぎるだろ……とは思うが、それも一応調べておいてもらえるか?」

『うん、わかった。あ、そうだ、コーマ。コーマのアイテムバッグの中に、そっとランチバッグを入れてあるの。中身は今度は骨付きのフライドチキンにしたから』

「待て、キッチンには鍵がかかってるだろ! どうやって入ったんだ!?」

『転移魔法でね。封印される前だったし』


 ……しまった、確かに転移魔法があれば鍵があろうとなかろうと関係ない。

 それは盲点だった。


「腹が減って他に食べるものが無くなったら食べるわ」

『うん、感想楽しみにしてるわ』


 悪意を一切含まない、歓喜に満ちた声で楽しみにされてしまった。絶対に食べない宣言のはずなのに。

 ……まぁ、この騒動が終わったら1本くらい食べてやるか。


   ※※※


 ラビスシティーの長にして、世界中に点在する冒険者ギルドの長でもあるユーリの説明に、各国の代表は言葉が出てこない。

 緊急事態なのは知っていた。

 ゴブリン王誕生の話も聞いていた。


 だが、各国の代表に迫られたのは、選択だった。


 ゴブリン王が誕生した場合、ラビスシティーを守るか見放すか。

 ゴブリン王が現れたら、間違いなく世界中の魔物がラビスシティーを目指してくる。

 ラビスシティーを守る場合は町の周囲に防衛線を敷き、そこを各国の軍が護衛する。

 ラビスシティーを守らないと選択した場合は、何もしなくてかまわない。


 ここでラビスシティーを守る選択をした国には、ラビスシティーから魔石の提供という形で恩を返す。

 ラビスシティーを見放す選択をした場合、魔石の提供を全て打ち切る。


「まるで脅迫ですね」


 僕は目を細めてそう言った。

 魔王としてではなく、サイルマル12世として。

 この場にベリーを連れてこなかったのは正解だ。町に一緒に来たいといったから仕方なく従者として連れてきたが、この場には絶対に馴染まない。あいつには策略という者を学んでもらうためにこういう場に顔を出すことも必要なのだが、まだ時期尚早だな。


「そう取ってもらって構いません、サイルマル殿。我々も必死なのです」


 ユーリは臆面もなくそう述べた。


「ゴブリン王が誕生した場合、世界中の魔物がこの地に押し寄せる。その数は有限ではあるが無限に近い。つまり、ワシ達に求めているのは町の護衛ではなく、ゴブリン王を倒すまでの時間稼ぎということかの」


 流石は年の功か。人間の中では最年長のゴルゴ・アー・ジンバーラ、ジンバーラ国の元国王がそう言った。

 それに、騒めきがおこる。

 そんなことにも気付いてなかったのか、それとも周りの様子を窺っているのか。


「ユーリ殿、我々には第三の選択があることをお忘れですか?」


 僕は不敵な笑みを浮かべて言った。


「このラビスシティーの自治権を我々に譲渡して、この土地を我々の共同管理地としていただければ、ここはもはや我々の領土も同然。兵たちも命を懸けてこの地を守るために戦いましょう。確かに、冒険者ギルドはこれまで全ての国とは一定の距離を置き、永世中立都市として機能してきました。ですが、風の噂によりますと、昨日リーリウム王国に親書を送られ、なんでも密約を交わされているとか。それはギルドの理念に反するのでは?」

「それに対しては風の噂でもなんでもありません、事実です。なんでもラビスシティーを己の者にするためにどこかの国が策を練っているという噂がありましたので、もしもどこかの国に攻められるようなことになったら、我々も軍を出し、共同防衛をすることになっただけですわ。もちろん、ここに集まっておられる方々が永世中立都市であるラビスシティーに戦争をしかける、などということはないと思っていますが。それと、もちろん、我々リーリウム王国はラビスシティーを護衛する所存です。冒険者ギルドを――世界中の冒険者を敵に回すなんてとてもではないですができません」


 リーリウム王国の代表、この国の中で一番若い(公式年齢では僕が最年少となっているが)リーリエ女王が一気に述べた。

 ユーリが明言していない、冒険者を敵に回すという言葉を、リーリエはわざと語った。

 冒険者ギルドは国の運営には欠かせない職業といえる。全ての魔物による災害を兵士達だけでは対処できない。そのために冒険者という職業は絶対に必要だ。それをまとめる冒険者ギルドも然り。


 どうやら、ここでラビスシティーを見捨てるという選択はできそうにない。

 ならばと僕は手を挙げた。


「そうですね。我々も冒険者ギルドには恩があります。サイルマルの代表として、ラビスシティーへの援軍を出すことを約束しましょう」


 僕がそう言っても、ユーリの表情は全く変わらない。

 七英雄の一人、ユーリ。こいつ()は三年前には利用させてもらったが、今は邪魔でしかないな。

 まぁいい。


「ただし、期限付きです。ゴブリン王が誕生してから1ヵ月のみ。それ以上の援軍は不可能です」

「……それでも十分ありがたいです」

「我々も援軍を出しましょう。ただし、条件はサイルマル国王と同じです」


 僕の国、サイルマル王国は僕が即位してから一気に軍事大国になったからね。僕が賛成したら全員賛成することになった。

 もちろん、全員が1ヵ月という期限を設けて。


 これで、全ての国はゴブリン王誕生1ヵ月後、ラビスシティーを見捨てる口実ができた。

 魔物に蹂躙されてラビスシティーが無くなれば、各国の王にとっては都合がいい。


 まず、魔物が迷宮に集中することで領土内での魔物の被害が大きく減る。

 次に、迷宮を共同管理することにより、魔石の流通量が増える。


 そして――魔王にとっても迷宮内の瘴気が満たされたら、迷宮を食べやすくなるからね。


 各国の王が一番恐れているのは、援軍を出さないと宣言してしまった後、ゴブリン王が誕生する前に、ベビーゴブリンの状態で討伐されてしまった場合だ。

 そうなったら、魔石が国内に入ってこなくなる。

 魔石は多くの魔道具を動かすうえで絶対に必要なものだから、魔石がなくなれば国が亡びる可能性すらある。


(まぁ、僕は自分の迷宮の魔石を持ってくればいいだけなんだけどね)


 今は転移陣を封印されているせいで自分の迷宮に戻ることすらできないが。


「それでは、明日より、選抜された冒険者と、勇者による迷宮の捜索を行います。ゴブリン王がいる場所は、先ほどお話した通り、何の因果か、かつて私達が討ち滅ぼした、あの闇竜のいた迷宮です。皆さまには、ぜひ良い報告を出せるよう、私が先頭に立ち戦わせていただきましょう」

今回が201話です。

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