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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第一部 東大陸編 Episode01 勇者試験
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薬草からの物語

異世界に召喚されてからのいざこざが終わり、一日が経過したところから物語ははじまります。

 大きな竹のカゴとそこに入った大量の荷物を背負って階段を下りていく。


 服装はつり用の青い防水ジャージとスニーカーのため、かなりシュールに思える。


 地下200階層らしいが、壁が明るく輝き、さらに風も吹いているのでため地下にいるという感じはあまりしない。

 この光と風のおかげで、地下でも植物は育つ。

 あと数ヶ月したら、畑の小麦も黄金色に染まり、収穫を迎えることだろう。


 はじめての迷宮探索だったが、魔物は見知ったコボルト二匹(グーとタラ)しかいない迷宮のため、危険はほとんどない。

 そのコボルト二匹は今、畑を広げるために鍬を以って迷宮を耕していた。


「よう、グー、タラ、もう怪我は平気のようだな」


 俺が声をかける。布の服を着ている二本足で立つ犬のような魔物だ。

 二匹は俺が声をかけると作業を中断し、頭を下げた。グーとタラ、二人合わせてグータラという、本人たちには不本意極まる名前だろうが、よく働いてくれている。

 グーがこちらに駆け寄ってきて、小さな石をくれた。


……………………………………………………

錫石【素材】 レア:★


不純物を多く含んだ錫の鉱石。

このままだとただの石。

……………………………………………………


「おぉ、錫の鉱石か。お前が見つけたのか? あとで使わせてもらうよ。ありがとうな、グー」


 グーの頭をなでてやると、グーはとてもうれしそうに尻尾を振った。

 随分懐かれたものだと自分でも思う。


 畑の周りには飲み水に最適な水を汲むことのできる井戸、そして畑に水を撒くための水汲み場もあり、本当にのんびり過ごせそうな雰囲気だ。とても迷宮の中とは思えない。

 そして、その畑の横に小さな家があった。


 狭いながらも楽しい我が家とはいうが、木の椅子と、金色の杯しかない家は楽しくはないよなぁ。


 カゴを床に置き、中身を確認した。


 ろくなアイテムはなかった。だが、それでも数は揃えることができた。

 その中から一本の草を掴み取った。

 

……………………………………………………

薬草【素材】 レア:★


癒しの効果のある草。患部に当てて包帯を巻いても癒しの効果はある。

薬の材料となり、薬剤師にとっては必需品。食べても効果はあるが苦い。

……………………………………………………


 ゲームでも定番アイテムだ。RPGの中では後半の町でも普通に売っているけど、序盤でしか使わないアイテムとして有名。8Gとかで売っていそうだ。

 鑑定スキルにより、そのアイテムの効果がはっきりと読み取れた。ちなみに、レア度の【★】が1つというのは、そのあたりで普通に採取できたりする価値の低いアイテム。これが一番最低というわけではなく、それより下のアイテムも存在する。

 例えば、薬用効果のない雑草などは【レア:なし】になり、鑑定することすらできない。そういうアイテムでも、きっちりと加工すればランクは上がる。

 例えば、雑草と同じ【レア:なし】の井戸水だが、きっちり加工すれば蒸留水となり、


……………………………………………………

蒸留水【素材】 レア★


蒸留することにより不純物を取り除いた水。

味のない味が好きな人におすすめ。

……………………………………………………


 となる。そして、俺は蒸留水の入ったグラスを左手、薬草を右手に持ち、呪文を詠唱した。


「アイテムクリエイト!」


 すると、右手に持っていた薬草と左手に持っていたコップの中の蒸留水が消え、足元に、薬瓶に入った液体が現れた。


……………………………………………………

ポーション【薬品】 レア:★★


一般的な回復薬。飲むことでHPが回復する。

ただし、味の保証はない。というか不味い。

……………………………………………………


「よし、成功した!」


 二度目のアイテムクリエイト成功!

 とはいえ、一度目は、水を蒸留水に作り替えただけなので成功したというイメージが全くなかったが、今度は違う。

 きっちり見た目が変わっている。

 何故か三角フラスコのようなガラス瓶の中に入っているというサービス付き。


「ポーションかぁ……私は回復魔法を使えるから要らないわよ?」


 部屋の椅子の上から、せっかくの喜びに水をさす声が掛けられた。

 彼女は俺がアイテムクリエイトを覚えたことを快く思わない。

 銀色のツインテール、黒いドレスの少女。見た目は中学生くらいだが、実は約2700歳という異色の経歴を持つ。

 自称大魔王の娘であり、魔王軍の元帥を名乗っていて、全てを正直に履歴書に書いたら、就職のとき、書類選考後すぐに面接することを薦められるだろう。ただし、精神医とカウンセリングするようにと。

 とはいえ、彼女の力の片鱗を見ている俺はそれが全て事実である可能性が高いことを知っている。故あって強力な魔法は使えないが、それでも回復魔法くらいは使えるそうだ。


 俺はそのルシルに対し、「ちっちっちっ」と三回舌打ちしながら人差し指の口の前で三回横に振る。


「甘いな、ルシル。ポーションを作ったことで、俺の作れるアイテムが増えた。解毒ポーションに、力の妙薬がな」


 さすがにポーションの派生がこの二つだけとは思えないが。他の薬品は材料不足のため作ることができないらしい。

 俺の頭の中には、俺が一度でも鑑定したことのあるアイテムを組み合わせることにより作ることのできるアイテム一覧が脳内に表示される。


 現在、27種類くらいのアイテムを作ることができるらしい。


 俺はげんこつ岩を取り出し、げんこつ岩をポーションを組み合わせて力の妙薬という薬を作ることにした。

 アイテムクリエイトはMPをほとんど……というか全く消費しないため、何度でも使うことができる。

……………………………………………………

力の妙薬【薬品】 レア:★★★★


一時的に力を50%増加させる薬。効果は1時間。同じ薬による重複効果はない。

貴族の間では精力剤として使われることもある。

……………………………………………………


 出来上がった薬の効果をルシルに説明すると、彼女はようやく俺の能力の素晴らしさを悟ったようだ。


「ホントだ、コーマ凄いじゃない! これを魔王軍全員に支給したら、最強の軍団ができあがるわね」

「いや、最強の軍団って、コボルト2匹しかいないけどな、うちの魔王軍」


 コボルトが力の妙薬を飲んでも、1.5倍強いコボルトができるだけだ。


「そろそろゴブリンくらい召喚してくれよ」

「仕方ないでしょ! 魔石が足りないんだから」

「魔石の作り方はわからないからなぁ……ん? 力の妙薬二つあったら力の超薬ってのが作れるみたいだな」


 幸い、薬草もげんこつ岩も十分な数は持っているからな。

 図鑑を埋めるためにもさらにランクの高いアイテムを作らせてもらうか。


 俺は井戸水を蒸留水に作り替え、ポーションを作り、力の妙薬を造り出した。

 その間、僅か1分。

 そして、二つの力の妙薬を汲み合わせ、


……………………………………………………

力の超薬【薬品】 レア:★×6


筋力を1%増加させる薬。超薬、霊薬および神薬は1日1本までしか飲むことができない。

貴重な薬であり、高値で取引される。

……………………………………………………


「え?」


 いや、ちょっと待て。作ったはいいが、これはやばくないか?

 しかも、力の超薬を2個組み合わせたら、力の霊薬が出来上がるらしい。

 力の超薬の説明を読む限り、力の霊薬も同じような効果のアイテムなのだろう。薬草もげんこつ岩も十分な数がある。試しに作ってみるか。


……………………………………………………

力の霊薬【薬品】 レア:★×7


筋力を3%増加させる薬。超薬、霊薬および神薬は1日1本までしか飲むことができない。

とても貴重な薬であり、市場に出回ることは稀である。

……………………………………………………


「え?」


 いや、ちょっと待て。作ったはいいが(以下略)。

 しかも、力の霊薬を2個組み合わせたら(以下略)。

 薬草もげんこつ岩も……数はだいぶ減ったがもう一個力の霊薬を作るだけの量はある。


……………………………………………………

力の神薬【薬品】 レア:★×8


筋力を10%増加させる薬。超薬、霊薬および神薬は1日1本までしか飲むことができない。

伝説の薬であり、生きている間に一度出会えるかどうか。買うことができるかどうかは別の話。

……………………………………………………


 俺はじっと薬を見つめる。

 今日採取してきたものだけでできあがった薬だ。


 ちなみに、これ以上先のアイテムはないらしい。ここで打ち止めだ。


「何深刻な顔してるの?」

「いや……アイテムクリエイトって魔法、使えるのは俺だけなんだよな?」

「そうよ、何しろ伝説の大魔王(おとうさま)の力の大半を注ぎ込んで得られたスキルなんだし」


 そうだよな。

 何もない部屋の中、空になった金色の杯を見て呟く。


「うん、俺以外の人間が持っていなくてよかったなと思ってさ……この薬はやばすぎる」

「たかが1割でしょ? さっきの妙薬の方が効果が高いじゃない?」

「1割だよな。でもさ、」


 俺はまだバッテリーの残っているスマホを取り出し、最初からインストールされている電卓アプリで計算を始めた。


「一週間飲み続けたら力が1.94倍になる。しかも制限時間はない」

「凄いじゃない! 凄すぎるわ! コボルト全員に支給をして――て、何飲んでるのよ」

「いいだろ、俺が作ったんだから……それに、俺、一応魔王だし。いつ他の魔王や勇者がここに来るかわからないんだろ?」

「それはそうだけど……」


 ルシルは納得いっていない様子だ。

 まぁ、ルシルにとって、コボルト2匹は家族みたいなものだからな。


「それに、強いコボルトができあがったら、俺の能力が他の魔王に知られかねない。そうなったら困るからな」


 アイテム図鑑を確認する。俺の人生の目標は、このアイテム図鑑をコンプリートすることだ。何年、いや、何百年かかるかはわからないが。


……………………………………………………

 レア:★    42種

 レア:★★    4種

 レア:★★★   0種

 レア:★★★★  1種

 レア:★×5   1種

 レア:★×6   1種

 レア:★×7   1種

 レア:★×8   1種

 レア:★×9   0種

 72財宝     1種



52/862139218

……………………………………………………


 ちなみに、アイテム図鑑にはレア度0のアイテムは登録されない。

 現在、ざっと2千万分の1といったところか。

 ちなみに、俺が今持っているアイテム図鑑は【レア★×5】とそれなりに貴重な品らしい。

 俺は再び、この部屋にある金色の杯を持ち上げる。


……………………………………………………

魂の杯【魔道具】 レア度:72財宝


魂の杯と契約を結ぶと、契約者の死後、その力を封印する。

水を入れて飲むことでその力を吸収することができる。

……………………………………………………


 俺はこの世界に召喚されたその日、魂の杯を使って、ルシルの父の力をその身に宿した。その力の大半を使い、アイテムクリエイトという能力を手に入れた。

 ちなみに、残りは鑑定能力を得るのに使わせてもらった。

 全種類のアイテムを手に入れるために


 だから、絶対に集めてみせる!

 8億種のアイテム全てを!


「あれ? コーマは72財宝を全部集めて元の世界に戻るんじゃないの?」

「あぁ、それは最初の設定だろ? 俺は今、この無理難題のアイテムコレクションにはまったからな」


 そう、俺はアイテムマスターになる!

 全ては俺の収集癖を満たすため!


 何しろ、俺は魔王になると同時に不老の力を得てしまったわけだしな!

~ステータス恒久上昇アイテム~


ステータス恒久上昇アイテムとは、制限時間無しにステータスが上昇するアイテムです。基本的にレアアイテム扱いなんですが、ゲームの中でNPCに対しては高値で販売することはできないのはお約束。


ちなみに、本作品で登場した薬草は、「トル○コの大冒険シリーズ」では、なんとHPがMAX状態で食べれば最大HPが上昇するというステータス恒久UPアイテムとして扱われた。

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