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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode06 日常閑話

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コメットちゃんとデート

~前回のあらすじ~

伝説のタタミを作った

「コウマ殿、ありがとうございました。コウマ殿には何から何までお世話になりっぱなしでしたね。カリアナに来たときにはぜひ私の家におこし下さい。私はいないと思いますが、コウマ殿をもてなすように家の者に行っておきます」


 そう言って、シグレは自分の家の詳しい場所を記した紙を俺に渡した。


「もう今日行くのか?」

「はい。カリアナでは、種を待っている者がいますゆえ」

「そうか。まぁ、いつかカリアナには行きたいと思っているから、その時は案内してくれよ」

「それは叶わないと思います。私はカリアナに種を届けたら、すぐに元の任務に戻りますゆえ」

「元の任務?」


 忍者だから、諜報活動か、誰かの護衛かな?

 シグレは俺の質問ともとれるおうむ返しに、口を噤んだが、小さく息を漏らし、


「そうですね。コーマ殿にも知っておいてもらいたい。私はある女性を追っています。名前はサクヤ。私と同じ、黒髪の女性です」

「……抜け忍の探索か何かか?」


 忍者は情報や秘術が漏れることを恐れ、忍者になったものは死ぬまで忍者でなければいけないという鉄の掟がある。というのをアニメや漫画で見た気がする。


「……コウマ殿の目はごまかせませんね。はい。私は彼女を殺さなくてはいけない。刺し違えてでも」

「……なぁ、一つ教えてほしい。サクヤはシグレの――」

「妹です」

「そうか」


 それ以上、俺達の間に会話はなかったと思う。

 ただ、別れの挨拶をして別れただけだった。



   ※※※



 例え、親しいものでも、それが必要なら殺す……か。

 俺が魔王だと知られたら――いや、それだけじゃない。俺の中に、クリスの父を殺したルシファーの力があるんだと知られたら、あいつはどうするのか?

 そんなことを考える。


 俺は死ぬわけにはいかない――と思うが、俺が死ねば、ルシルは元の姿に戻ることはできる。元のルシルなら、きっと勇者からも他の魔王からも逃げることは可能だろう。


 俺は彼女を支えたいと思っているし、実際に支えようとしている。

 だが同時に、俺は彼女にとって足枷でもある。


 でも、俺が死んだら困る人や悲しむ人は当然いると思う。

 俺が魔王だと知らなければクリスは悲しむかな。借金はチャラになるけど、あいつはそんなこと関係なく悲しんでくれるだろう。

 ルシルは……俺を召喚したことを後悔し続けるだろう。

 コメットちゃんは泣くな。タラは俺を守れなかったことに後悔するだろう。マユは人並みには悲しんでくれるだろうし、メイベルもそうだろう。レメリカさんには鼻で笑われそうな気がする。

 カリーヌは死について理解しているのかな。スライムがいっぱい死んだけど、核があればいつか瘴気を吸って生き返るといって、核を埋めていた。俺も埋められるんだろうか?


 とりあえず、やれることはやっておこう。


 魔王城に戻って俺が最初に見つけたのはコメットちゃんだった。

 収穫帰りなのだろうか、収穫鞄を持って歩いていた。


「コメットちゃん!」

「ひっ、あ、コ……コーマ様?」


 突然声をかけたせいで、コメットちゃんは悲鳴にも似た声を上げた。

 あぁ、悪いことしたな。驚かしたようだ。


「いや、コメットちゃん、前に服を買いに行こうって言ってたでしょ? これから一緒に行かない?」

「服……ですか? 私の?」

「そう。コメットちゃんの。嫌?」


 コメットちゃんなら喜んでもらえると思ったんだけど。


「いやじゃないです。わーうれしいな」

「え? なんで棒読み? ま、いいか。じゃあ、行こうか」

「はい」


 コメットちゃんはそう言って、特に笑いもせずに頷いた。

 あれ、なんかあまり嬉しそうじゃないな。

 俺の予想だと、コメットちゃんは確実に気があると思っていたんだが、俺の自意識過剰だったか。


「じゃあその荷物は置いていこうか」

「え? 荷物? あぁ、大丈夫ですよ。そんなに重くないですし」


 手をぱたぱたさせて挙動不審な感じで、コメットちゃんは明らかに荷物を置いていくのを拒否しているようだ。

 そこまで露骨に言われると置いていけとは言えないな。


「じゃ、行こうか」

「はい」


 二回目のセリフとともに、転移陣に向かおうとすると、コメットちゃんは頷いて俺の手を握ってきた。

 こんなにあっさり手を繋いでくるなんて。


「どうしました?」

「いや。うん、なんでもない」


 俺は首を横に振り、変装用の眼鏡と変声機付のマスクを渡して、転移陣をくぐった。

 地上にとんぼ返りで戻った俺は周りに知り合いがいないことを確認すると、洋服屋目指して歩き出した。


「そういえば、コメットちゃんはラビスシティーに戻るのは死んでから初めてだったっけ?」

「え? 死んで?」

「ん?」

「あぁ、そうですね。はい」


 なんか、さっきからコメットちゃんは「心ここにあらず」という感じだ。

 俺と一緒にいて緊張している……とかじゃないよな。


 そして、俺達は服屋に到着した。

 前に、コーリーになった時に行った下着ショップの隣の店だ。

 男一人だったら絶対に入りたくない店だな。


「コメットちゃん、どの服にする?」

「そうですね。これとこれにします」


 淡々と、まるで百円ショップで乾電池を買うかのように目についた服を二点選んだ。

 え? 女の子の買い物ってそんなもの?


 俺の中のイメージだと「えぇ、どれがいいか迷っちゃいます。ねぇ、コーマ様、この服とこの服、どっちがいいと思います?」とか言われると思ってた。そう言われたときのために、「俺はこっちの服がいいと思うけど、こっちの服を着ているコメットちゃんも見てみたいな。両方買っちゃおうよ」とか結構歯の浮いたセリフを言う覚悟もしていた。


 まぁ、このほうが楽なのは楽なんだけど。もしかして、俺に気をつかってるのか?


「あの、コメットちゃん?」

「はい」

「試着とかしなくていいの?」

「試着……したほうがいいですか?」

「うん。サイズの確認もしたほうがいいしね」

「あぁ、そうですね」


 そう言うと、コメットちゃんは自分の服に手を伸ばした。

 白い肌が少し見える。


「ストップストップ、着替えは試着室で」

「……あぁ、そうでした。つい、グーの時の癖で」

「うん、気を付けて」


 グーの時の癖って、今まで俺の目の前で服なんて脱いだことなかったんだけど。

 やばい、ドキドキが止まらない。


 その後、コメットちゃんは試着室で着替えた。

 結果で言うと、その服はとても可愛くて、コメットちゃんの可愛さをさらに引き立てるものであった。

 もしかしたら、店の中で一番のものかもしれない。


 その後も、店員にあれこれお勧めがあると言われたが、コメットちゃんが「二着だけでいいです」と言ったので、その二着だけで買い物は終わった。時間にして僅か10分だった。


 そのまま帰るのもどうかと思って、前にシグレと行ったカフェに行くことにした。

 コメットちゃんは熱々のコーヒーを平然と飲んでいた。


「ねぇ、コメットちゃん。もしかして、今日、疲れてた?」

「いえ、そんなことないですけど。どうしてです?」

「いつもと様子が違ったから」


 俺はハッカ茶を飲みながら言った。

 すると、コメットちゃんは少し笑って、


「いえ。コーマさんは優しいですね」

「そんなことないよ」

「でも、私はそのやさしさが不安なんです」


 やさしさが不安?


「どういうこと?」

「マネットさんのことです」

「マネット? あいつがどうしたんだ?」

「マネットさんって、コーマ様を襲った魔王だったんですよね。なのに、なんでそんなにすぐに信用して、仲間にしてるんですか?」


 あぁ、そのことか。

 確かにマネットはもう自然と俺の魔王軍のゴーレム作成係に入っているが、確かにコメットちゃんには俺の考え方をしっかり示したほうがいいな。


「あいつが俺を襲ったのは、相棒の火炎竜を守るためだし、火炎竜が苦しんでるのを見て、あいつは俺の目の前に現れて、そのドラゴンを助けるように懇願したんだ」

「それだけで信じたんですか?」

「それだけで十分だ」


 俺はそれ以上何も言わなかった。

 すると、コメットちゃんは「ふっ」と笑った。


「本当にコーマ様は優しすぎます。それより、ここのケーキ、みんなの分持って帰りましょう。とてもおいしそうですから」


 コメットちゃんは今食べ終わったケーキを追加注文した。

 ……微妙に言葉の使い方間違えている気がするが、翻訳さんがミスしたのか?


 そして、俺とコメットちゃんのデートは終わり、俺達は魔王城に戻った。


「コーマ様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

「ううん、喜んでもらえてうれしいよ」


 魔王城に戻り、コメットちゃんと別れた。

 次は、タラと一緒にトレーニングでもするかな。


 それとも、久しぶりにルシルの料理を……いや、うん。カリーヌと一緒にお絵かきでもするか。カリーヌの絵はかなり前衛的で、将来はピカソになるんじゃないかと思うほどだ。


「コーマ様!」

「ん? あぁ、コメットちゃん、どうしたの?」


 コメットちゃんは今日買ったばかりの服二着をハンガーに下げたままやってきた。

 満面の笑みで。


「この服、コーマ様が買ってくれたんですよね」

「あぁ、うん、俺が買ったけど……」

「ありがとうございます、とてもとても可愛いです」

「……え?」

「あ、でもできることなら、コーマ様と一緒に買いに行きたかったです」


 と上目遣いで俺を見てくるコメットちゃんを見て、俺の混乱はピークに達した。


 コメットちゃんの後ろを見ると、マネットが俺を手招きしていた。

 ……え?


オチは皆さん気付いていた通りなんですが、続きます。

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