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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode06 日常閑話

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閑話11 魔王城リフォーム(後編)

~前回のあらすじ~

ブラングラスと対面した。

 一体、どういうことだ?

 ドロップアイテムなのに倒してはいけないって?


 ドロップアイテムとは、魔物を倒したときに手に入るアイテムのことだろ?

 例えば、ゴーレムを倒したらゴーレム石と魔石を落とすように。


「倒したらダメってどういうことなんだ?」

「とにかく、二人は逃げ回ってください!」


 そう言うと、シグレは緑色の団子をブラングラスの口めがけて放った。

 ブラングラスは、その緑団子を咀嚼するように食べ、吠えた。亀のくせに吠えた。


「キュゥゥゥゥゥゥゥ!」


 可愛いな、クソ!

 でもブラングラスが振るう尻尾が岩を砕いた。威力は全然可愛くない。

 倒すとなれば楽勝だけど、避け続けるって意外と大変だぞ。


 とりあえず、距離を置く!


「亀って鳴くんでしたっけ?」


 同じように逃げながら、クリスが訊ねた。


「いえ、あれは鳴き声ではなく、鼻息ですね。鼻がつまっているんじゃないでしょうか?」


 シグレ説明してくれた。うわ、本当だ! 鼻があると思われる場所から粘液のようなものが飛んでる。

 全然可愛くねー。なんだよ、鼻水の音かよ。


「殺してダメなら――」


 俺は咄嗟にアイテムバッグから、チェーンを取り出した。

 何の変哲もない鉄の鎖。それをブラングラスの右前脚に引っ掛けた。


「これで動けないだろ!」


 俺は鎖を思いっきりひっぱり、ブラングラスをひっくり返し、さらに独楽のように回転させた。

 いつもより余計に回っております! ってそれは傘回しか。


 回転が止まり、ブラングラスは目を回していた。

 仰向けになった亀――手足をばたつかせるが、とうぜん地面に届くことはない。


「流石ですね、コーマさん」

「で、シグレ、この後どうしたらいいんだ?」


 腹にも甲羅にも草が生えている様子はない。


「もう少ししたら――ん?」


 ブラングラスの首が伸びて、その首を使い、身体を押し上げた。


 ドスンっと大きな音を立てて、元の体勢に戻った。


「嘘だろ……」

「……本当ですね」


 そして、亀は俺を睨み付けてくると、大きな口を開いて、突進してきた。


「走るぞ! クリス!」

「はい、コーマさん!」


 怒号を上げて追ってくるブラングラスに追い回され続けた。


 この終わりのわからない追いかけっこは、30分も続いた。


「まだですかね、コーマさん」

「へばったか?」

「冗談言わないでください。こんなくらい全然平気です」

「だよな」


 力の神薬のおかげか。ただ、肉体的には平気でも精神的には正直辛い。

 さっきから、「ピーピー」と鼻水が飛んできていて、しかもそれが飛沫になっているので避けることもできないしな。かといって、離れすぎて逃げられるのも困る。


「……コーマさん、後ろを見てください」

「え?」


 振り返ると、ブラングラスが止まっていた。

 追いかけるのを諦めたのか?


 そう思ったら――突然後ろ足で穴を掘り始めた。

 そして、穴の中に下半身を入れる。


 涙を流して――もしかして、これってあれか?


 ウミガメの出産シーンみたいな?

 あぁ、例え魔物でも、生命の誕生の瞬間は――やっぱり怖いわ!


 卵ごと壊すか。

 そう思った時――


「くさっ! なんがこれ、めっちゃくさっ!」

「う○こですよ、コーマさん! あの亀う○こしてます!」

「女の子がう○こう○こ連呼するな」


 でも、叫びたくなるくらい、連呼したくなるくらい臭い!

 一体、何食ったらあんな臭いがでるんだ?


 あぁ、あの蛇か。毒蛇だったのかな?


「シグレ、いつまで待てばいい! さすがにこんな臭い場所にずっといるのは辛いって……えぇぇっ!」


 シグレはクナイでブラングラスの首を斬り落とした。

 ブラングラスは「べっ甲」と「魔石」に変わる。


 もういいのか?

 そう思ったら、彼女はあろうことか――あろうことか、ブラングラスの、「う」から始まり「こ」で終わる落とし物の中に手を突っ込んだ。

 ……落とし物?


「ありました、コーマ殿。これが、伝説のタタミの材料となるい草と、その種です」


 彼女がそう言って、排泄物塗れの手を掲げた。


「ドロップアイテムってそういうことかぁぁぁぁっ!」


 ※※※


 世の中には知らなくていいことと言うのがいっぱいある。

 例えば、ビールを一杯飲むと脳細胞が100万個死ぬとか、布団を干したときのいい香りはダニの死臭だとか。


 それを、知らぬが仏という。

 魔王が仏を語るのもどうかと思うが。


「うーん、いい香り。それに気持ちいいわ。流石はコーマ、こんなに凄いタタミを作るなんて」


 ルシルの個室は8畳の和室だ。

 そして、そのタタミは全て伝説のタタミが敷かれている。


 室内も新しいタタミの香りで充満していた。


 ブラングラスの体内には種や植物を変異させる酵素があり、ブラングラスが食べた後、排泄した草が最高のタタミの材料になるんだとか。

 俺は手袋をはめて、そこから16本のい草を貰い、魔王城に戻ってアイテムクリエイトでタタミを作った。

 タタミ1枚を草2本で作ると言う外道を成したし、アイテムクリエイトを使っているんだが、その材料のことを思うと、どうも寝転がる気にはなれない。


「ねぇ、コーマ。本当に私の部屋だけでよかったの? コーマの部屋は普通のタタミじゃない」

「あぁ……いいんだよ。うん。ルシルが気に入ってくれてよかったよ」


 伝説のタタミについて、俺は誰にも伝え説かないと決めた。


 俺はこの秘密は絶対に誰にも言わない。


 ルシルは世界で最も大切な存在だから、絶対に彼女には伝えない。


   ※※※


 にしても、新しい魔王城も広くなったな。

 トレーニングルームに鍵付きキッチンに大浴場にマネット用のゴーレム工房に、スライム用のプレイルーム。図書室に、音楽室、パーカ人形コレクションルームや、俺専用の工房まで作った。

 さらに全員分の個室も作ったけれど――、


「なんで、ここはそのままなんだ?」


 マネットがじと目で俺に尋ねた。


「そのままじゃないぞ。前の部屋よりも広くなってるし」


 ホワイトボードに、今の会議で決まったことを書き込む。

 ホワイトボードも今まではなかった設備だ。


「……なぁ、ここは会議室なんだよな?」


 折り畳み式の卓袱台を囲み、魔王軍の主要メンバー全員が肩を寄せ合っていた。

 全員自分の部屋はあるし、趣味の部屋も多くあるけれど、暇な時は皆、ここに来る。

 会議室兼リビング。


 タタミの部屋。


「やっぱりここが落ち着きますね」とコメットちゃん。急須から湯呑にお茶をいれてくれている。

「魔王軍は、全員貧乏性だな」とマネット。うるさい、俺もそう思ってる。

「主の呼吸を知るのも配下の務めゆえ」とタラ。BL素養はないぞ。

「ねぇ、コーマ。チョコレートパフェ作ってよ」とルシルが寝転がりながら俺に頼む。

「コーマ様、お風呂の準備ができましたよ」とマユさんが入ってきた。

「楽しいね、コーマお兄ちゃん」とカリーヌが笑顔で言う。


 そんな皆を見て、俺は一言。


「で、今日の晩御飯はラーメンでいいんだな?」

「「「「異議なし」」」」

「あ、コーマ様、私も手伝います」「仕方ないわね、私も手伝うわ」「ルシルは来るな」


 広くなっても、多くの部屋ができても、この狭い魔王城が、俺達の魔王城だ。

 魔王城は今日も平和だった。

うん、魔王城は平和。

今、7.5章を何故か書いているんですが、7.5章がカオスなことになりそう。

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