プロローグ
~残酷描写含みます~
~前章のあらすじ~
カカオからハンバーグは作れるのか?
月の光が夜道を照らす。
ここでは、街灯が用意されることのない。よしんば設置されたとしても動力となる魔石が3分も経たないうちに盗まれてしまうだろう。
迷宮の町、ラビスシティーの南東にあるスラム街。
世界一自由な町の中で、最も自由であり、最も過酷な場所ともいえる。
ラビスシティー内の住民の平均寿命が54歳と言われるのに、スラム街で生まれた子供の10歳までの生存率が23パーセントと言われている。
町を取り締まるはずの自衛兵もこの町には近付かない。
近付こうものなら、おそらくは彼らの装備は1時間後に闇市のマーケットに流されることになる。
だが、この時、彼らは自衛兵の登場を待ち望んだに違いない。
いや、自衛兵だけではない、傭兵、冒険者、勇者、誰でもよかっただろう。
そんな一縷の望みを、僕の剣が容赦なく潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。殺す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。潰す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。
もう彼らが何を望んでいたかなんて今は関係ない。
剣とは相手を斬るものではない。相手を殺すものだ。
それを如実に語っている目の前の惨劇。
最初の一撃ですでに事切れていたはずなのに、僕の剣は容赦なくスラム街の住民を殺した。
もう、今では相手が男か女か、子供か年寄りかもわからない。
なぜだ、なぜこうなった。
何故、僕は人間でなくなった。
10日前、間抜けそうな女冒険者を見つけた。
仲間が最初に騙して荷物を全て奪い、僕が剣を盗んだ。
とても高そうな剣だというのはすぐにわかった。
正規の買い取り額なら金貨が出てくるような剣だと思う。
闇市で流しても銀貨20枚、一年はなんとか暮らせる額だと思っていた。
なのに、剣の鞘を抜いてから、僕はおかしくなった。
まず、剣を手放すのが惜しくなった。
隠れ家で一日中剣を眺めていた。
4日目、妙なことに気付く。食事どころか水も飲んでいない自分が妙だと思った。
だが、それ以上のことを考えることはなかった。
7日目、一緒に女冒険者を騙した友人が僕の住処に訪れた。
彼とは友人だったし、一緒に組んで物を盗んでいた。
生まれは違うけれど、兄弟みたいだと思っていた。
そして、気付いたら彼は死んでいた。
僕が潰していた。
そして、9日目から、僕は住処を出ては人を探しては切り続けた。
今思えば、剣を盗んだ初日に出会った、僕より小さな子供。
彼がおかしかった。
僕の盗んだ剣を見せてほしいと言って、お礼に銀貨10枚もくれた。
持ち逃げされることは警戒していたが、盗んだ直後とあって、見せなければ却って怪しまれる、なんていう思いから剣を見せてしまった。
もしかしたら、あの時、あの少年が剣に何か細工したのではないだろうか?
でも、もうそんなことを考えるのもやめよう。
人を切りたいと言う衝動が止まらない。
殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい斬りたい殺したい殺したい潰したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい斬りたい殺したい殺したい潰したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい殺したい。
気付いたら、僕の剣は、僕の腹を切断していた。
自らの胴体を真っ二つにして、地面に落ち、さ に下半身 切り刻 でいた。
も 、そこ の意識は 在 しな
だ も 斬 殺 殺 斬
潰
肉
血
死
斬
※※※
「あはは、壊れちゃった」
血の海に沈む剣を拾い上げた。柄には少年の手がぶらさがっている。
「でも凄いよね、まさか最後に自分の肩から腕を切り落とすなんて……いやぁ、凄かった」
人間の力に満足し、僕はその腕を引き離して地面に投げ捨てた。
もちろん、周りには誰もいない。
正確には、人間と判断できるものは存在しない。
多くの死骸の中で、少年は剣を持ち、静かに笑った。
さて、この玩具、どう使おうかな。
そして、僕の姿は闇へと消えて行った。
※※※
ルシルの迷宮、11階層。
つまり、侵入者が真っ先に来る場所。
そこに俺はいた。
そろそろ、迷宮経営を本気で始めないといけない。
そんな思いからここにいたのだ。
ルシルに頼まれたのは、72財宝のアイテムコレクションだけではない。
まぁ、アイテムコレクションだけで一生を過ごしたいんだけど、他の魔王への牽制のためにも、そしてルシルの体のためにも迷宮経営はしなければいけない。
とはいえ、迷宮は本来経営するものではない。
魔物は勝手に生まれてくるし、アイテムだって自動生成される。
そのはずだった。
だが、ルシルの迷宮はそれがない。
自動生成されるのではなく、自生している薬草などのアイテムや、昔からある鉱石は残っているが、鉱石が新たに生まれるなどといったことはない。
そして、魔物も瘴気から生まれない。
そのため、俺は11階層の改造をひそかに進めていた。
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すごい肥料【薬品】 レア:★★
植物が育つために必要な栄養が凝縮されている。食べても害はない。
スイカの種と一緒に飲み込んでも体から芽は出ません。
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んなこと言われんでもわかってるわ、と毎回恒例の説明文ツッコミをしながら、肥料と一緒に草の種を撒いたのは昨日のこと。
まさか一晩で迷宮内に草原ができあがるとはな。
迷宮はもともと壁や天井が光り、植物が育つ環境ではあったが、想定外の速さだ。
「じゃあ、ルシル、頼む」
「わかったわ! 魔物召喚!」
魔石(中)を20個手に握り、ルシルは叫んだ。
すると、草原の中に魔法陣が現れ、斧を持った牛人間、ミノタウロスが現れる。
その数20。
「じゃ、草を食べて頑張って子供を作って、魔物のコロニーを作ってね」
ルシルはそう命じると、ミノタウロスは地面に座り、草をむしっては食べ始めた。
さすがは牛人間、生粋の草食動物らしい。草食系男子とは絶対に呼ばれない図体のくせに。
ちなみに、彼らの持つ斧は魔物の肉体の一部とみなされ、アイテム表示されない。
倒したとき、たまに斧をドロップするが、それはただの「鉄の斧」である。
魔物の装備は盗んでも、魔物本体が死ぬと一緒に消えてしまうため、扱い辛いらしいな。
そして、俺は通路の中に宝箱を置いていく。
その中には俺が作ったアイテムを入れる。
こうしておかないと、冒険者が入ってこないからな。
ルシル迷宮のお披露目目標は100日後。
それまでに、せめて100階層まではまともなダンジョンに仕上げないと。
と、その時、耳から「リーン」という音が聞こえた。
俺の右耳には二つの通信イヤリングがつけられていて、一つはクリス、一つはルシルと繋がっている。
緊急時に使うように言ったんだが、もう緊急時が来たのか。
指を手に当て、ルシルに黙っているようにジェスチャーで伝えると、俺はイヤリングを握った。
これで通話可能状態になる。
「クリス、聞こえるか?」
『はい、コーマさん、聞こえます』
さすがは魔道具。地下でも圏外じゃないなんて凄いな。
「どうした?」
『緊急事態です、すぐに来てください!』
「わかった、すぐに行く。場所は――」
と、待ち合わせの場所を伝えた。
かなり焦っているようなので、こちらもすぐに行こう。
幸い、目の前に転送陣はあるし、転送石もアイテムバッグの中に十分入れてある。
「じゃあ、ルシル、行ってくる。絶対料理はするんじゃないぞ!」
「わかってるわよ、料理は当分しないわ」
「当分じゃない! 二度とするな!」
絶対、俺の目を盗んで料理するだろ、こいつ。
もう一度念を押して、俺は転送陣をくぐった。
~肥料~
肥料もアイテムです。が、ファンタジー小説において、肥料はあまり出番はありませんね。テイルズオブデスティニーに出てきたり、牧場物語風のゲームにはだいたい出てきますが。
ちなみに、ドラ〇エシリーズで1Gで売却できる「うまのふん」も、肥料として使われるそうです(DQの攻略本より)
ただ、ファンタジー世界について、肥料については書かないと。
ファンタジー世界において、農業従事者の数は、おそらく8割以上を占めているはずですから。
古くから使われる肥料といえば、やはり焼畑農業による灰。紀元前から使われています。
中世ヨーロッパでいえば、輪作。
小麦→大麦と育てて、牧草地にして牛を飼って、その排泄物を肥料代わりにして少し休ませ、再び小麦を育てる。
とても理にかなった農作業の方法ですよね。
去年ブームになっノゲノラの1巻でもその方法が書かれています。
ただ、化学肥料となると、その歴史は一気に浅くなり、19世紀になりますね。
そのため、化学肥料もポケットティッシュ同様出てこないのか? と聞かれたら答えは否です。そもそも、ポーションみたいな魔法薬が人間の手で作られているのなら、肥料のほうが100倍簡単でしょうから。
まぁ、それが一般農家まで使われているかと聞かれたら、それも否としかいえませんが。
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この話を書くにあたって、
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