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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode06 日常閑話

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コーマのギルド試験~結果編~

~前回のあらすじ~

鳥に追われた。

 コーマを追いかけて俺達が見たのは、世にも奇妙な光景だった。

 11階層の小部屋――熱気が強いらしく、視界がかなりぼやけている。その中で――、


火炎球ファイヤーボール


 コーマのあきらめにも似た呟きが響いていた。

 そして、その火炎球ファイヤーボールの先にいたのは、横一列に並んだ白い鳥。


 コーマは手加減した火の球により、鳥を丸焼きにすると、羽をむしりながらその鳥を食べていた。

 彼の後ろに白い羽が落ちているところからみると、すでに1羽は食べ終わったようだ。


「おい、何やってるんだ?」

「何って見てわからないか?」


 俺の問いに、コーマは「見ての通りだ」と言わんばかりに両手を広げ、


「苦行だよ」


 そう言って、鳥を食べ、水筒から直接水を飲んでいた。

 よくわからない。俺にはただ食事をしているようにしか見えないんだが。


「コーマ、旨そうじゃないか! なぁ、俺様にも分けてくれよ」


 オーガがそう言いだした。正直、俺もさっきの昼食は中途半端だったからな、腹が減っている。


「これを食べる前に、隣の部屋を見ろ」

「隣の部屋?」


 あぁ、コーマが鳥を食べる異様な光景に目を取られ、奥が続いているのに気が付かなかった。

 一体、奥に何があるんだ? と隣の部屋を覗き込む。


 するとそこにいたのは――


「かかか、火炎りゅ――」


 ヨンイチが叫び、慌てて自分の口を塞いだ。俺とオーガ、シグレが武器を構える。

 トヴィは大きく後ろに飛びのき、弓を構えた。


 竜族――魔物の中でもっとも凶悪な種族ともいわれる。

 地竜ランドドラゴンや翼竜、ワイバーンのような亜竜と違い、本物の竜は軍の大隊をもって倒さなくてはいけない。

 ただ、こんな狭い迷宮の中でこの竜を倒そうと思ったら、A級の冒険者のパーティーでも用意しないといけない。それでも無傷とはいかないだろう。

 S級間近とまで呼ばれた、ゴーリキ先輩が単独で魔竜を倒したという記録もあるが、あれは例外中の例外だ。


 さすがに今までの危機の比ではない。

 ただ、どうやら今は眠っているようだ。これなら逃げられるのでは?


 が――


「大丈夫だ、あいつはもう虫の息だ。毒、暗闇、混乱、呪い、睡眠、あと半分石化もはじまってる」

「……コーマがやったのか?」


 俺が訊ねたのは、コーマならこのくらいしても不思議ではないと思った。


「あの竜はな……食べたんだよ」

「食べた? 何を?」

「この鳥肉をな」


 コーマはそう言うと、鳥肉の欠片を、空を飛んでこっちに近付いてきた蝙蝠に投げた。

 蝙蝠はその鳥肉を空中で見事にキャッチし、食べて――落ちた。


 コトン。


 蝙蝠は石になっていて、地面に落ちた。


「火炎竜の治療は後で俺がやっておくから、みんなは避難しておいてくれ」

「治療!? 何言ってるんだ、コーマ! 俺様達がこいつらを倒していけば、俺達は竜殺しの英雄(ドラゴンスレイヤー)だぜ!」

「そうです。竜の素材は貴重です。鍛冶師であったコーマさんならわかるはずです」


 オーガ、トヴィ、二人の言う通りだ。

 竜殺しの功績は出世のステータスにもなるし、その素材もまた値千金の秘宝である。


「この火炎竜は11階層の――いや、この迷宮全体の熱を食べて生きているらしいんだ」


 コーマが説明すると、オーガが斧を構えて言った。

 今にも竜に斬りかかりそうになりながら。


「はぁ? 人間を食べることはないから安心しろって言うのか? 甘いぞ、コーマ」

「いえ、待ってください! 竜が熱を食べている……もしもその竜が熱を食べなくなったら――この部屋はどうなるんですか?」


 ヨンイチが気付いたようにコーマに尋ねた。


「ま、十中八九、暑くなるよな。下手したら10階層にまで熱が溢れるくらいに」

「……それはまずいな」


 俺が呟くように言った。

 実際、ここ以外にあるマグマ迷宮には、その入り口の扉を周りの壁を耐熱壁にして、さらに熱を外に漏れないように工夫までしているそうだ。


「あぁ、いくらあの上の不死鳥の銅像が、熱を吸いとる魔道具だとしても、限度ってもんがあるからなぁ」

「は? あの像ってそんな大切なもんだったのか?」

「あぁ。ただ、あちこちヒビが入ってたから、修理しておかないといけないけどな」


 コーマは涙を流して鳥肉を食べながら、説明をした。


「……なんでそんな危ないもの食べてるんです?」


 トヴィの質問に、コーマはただ苦笑しただけだった。


 そして、シグレは竜に近付いていき、


「破っ!」


 火炎竜の角を短剣で切り落とした。


「我々の報酬はこれだけで十分だろう」

「じゃあ、俺ができるだけ高値で買い取らせてもらうよ」


 コーマが泣きながら鳥肉を食べつつ言った。

 もう鳥肉は最後の一口だった。フードファイターか、お前は。


 今回の調査で入手したアイテムは全部ギルド預かりになるんだが。


 こうして、俺達は多くの魔石と、素材アイテム、そして伝説級の火炎竜の角を手に入れて、帰還した。

 結局ゴーレムマスターの謎を残したまま、迷宮を後にした。



   ※※※


 あと、もう一つ、重大な謎。

 迷宮が突然変異した理由だが、これは想定外どころか、予想すらできない理由だった。


 俺が入った迷宮は、今回の試験とは全く関係ない迷宮だったからだ。しかも、誰にも発見されていない未踏迷宮だった。

 そんな事態になったため、とりあえず、ランクアップ試験の結果については後日伝達となり、迷宮の中で見つけたアイテムは賠償金代わりというか、口止め料に5人で山分けされることになった。

 竜の角の値段が250枚、つまり一人金貨50枚くらいになったそうで、贅沢さえしなければ20年はそれだけで生活できるだろう。


「全く、ゾウの下で、銅像の下に行くとは、ギロンさんは方向音痴にもほどがあります。そんなので、よくもまぁ迷宮調査をしようと思いましたね。もうそこまで行くと芸術級の間抜けぶりですよ」


 翌日、俺はレメリカ嬢に罵られていた。

 ちなみに、ゾウの下というのは、「南の国に住む象という魔物がえがかれている絵」の下だという意味だった。

 後で確認して、「ぞうのえのした」と書いてあったのには驚いた。


「そんなギロンさんに、少しいい話と凄くいい話、悪い話が二つあります」

「……では、少しいい話から」

「未踏迷宮を発見したことでボーナスが出ています。給料三か月分です」

「……悪い話は?」

「試験会場を間違えたこと、さらに集合場所を間違えたことも減給対象です。減給3割引きで10カ月です。あと、もう一つの悪い話は、あなたはギルド職員のままです。準戦闘職員にはなれません」


 つまり、給料はプラスマイナスゼロで、待遇はいままでのまま。

 まぁ、悪くない条件だ。


 ちなみに、集合場所がわざとややこしい場所にしていたのは、それも俺への試験の一環だったらしい。集合場所を間違えたのは試験官の思惑通りだったわけか。


「じゃあ、凄くいい話は?」

「ギルドのランクアップ試験は無効にはならないようです。そのため、5人の昇格は有効にする予定ですが、オーガさんは先に辞退してきました。自分にはランクアップする資格はまだないそうです」


 ……まぁ、俺もオーガはランクアップはまだ早いと思っていたが、自分から辞退してきたとは。あいつ、俺の予想以上にすぐにCランクの冒険者になれるな。


「トヴィさんと、ヨンイチさんはCランク、シグレさんはBランクへの昇格を認めました。彼女達は元々その実力はありましたから」


 それは俺の出した評価とほぼ同じだ。トヴィの弓矢の命中率、あと封魔領域は使い方さえ間違わなければ凄い威力だ。魔術師はもともとランクアップしやすい職業だからな。シグレの技も大したもんだ。竜の角を短剣で切り落とすとはな。


 そして、彼女はそれで終わりと言わんばかりに、立ち上がった。


「待ってくれ、まだ残ってるだろ? コーマはどうなった? もしかして――」


 もしかして、Aランク?

 あいつならそれでもおかしくない。驚かない。


「彼ですか。彼は――」



   ※※※



「ハックションっ!」


 盛大にくしゃみをすると、ルシルがとても嫌な顔をしてきた。


「もう、コーマ。ツバをとばさないでよ」

「悪い。誰か噂してるのかな」


 俺はアイテムバッグからポケットティッシュを出して、鼻をかんだ。


「アイテムクリエイト」


 噛んだあとのティッシュ(紙屑)をアイテムクリエイトでポケットティッシュに戻す。

 不衛生とか思うかもしれないが、これで新品に元通りだ。


「で、コーマはギルド試験に挑んで、結果Fランクに上がっただけなのね」

「まぁな。ちょいやりすぎた」


 ギルドのランクアップ試験。

 俺のやることは、ただ一つ。

 手助けをほとんどしない監視だった。


 できるだけ手出しをせず、ギロンが準戦闘職員に相応しいかどうかを確かめる。それが俺への試験だったのだ。支援としては、影からのフォロー、目立ちすぎず、他の受験生を死なせないようにたち振る舞えという任務だった。

 そう言われたから、アイテムもできるだけ弱いものを出したり、自分では剣や斧を振るわずにサポートに徹したはずだったのに、レメリカさんから下った評価は「やりすぎです。Fランクにはしておきますから、また頑張ってください」だった。ギロンを含め、他の皆が俺のことを褒めたたえたそうだ。


 ちなみに、俺の正しい選択は、迷宮の危険度を確認した時点で、ギロンが道を間違えたのだと思い、引き返させることだった。ギロンが方向音痴だと言うのは事前に聞いていたんだから、俺の落ち度も少しはある。


「でも、成果はあっただろ?」


 そして、俺はその成果をつまみ上げる。


 俺がつまみあげたのは、トヴィよりもさらに小さい――パーカ人形よりは少し大きい、操り人形――マリオネットだった。

 トンガリ帽子を被った金髪の男の子の姿をしているマリオネットは俺を睨みつけ、


「おい、丁寧に扱え! 糸が絡まるだろ!」


 そう叫んでいた。

 こいつの名前はマネット。あのマグマ迷宮の魔王だ。

 火炎竜に守られていたのだが、火炎竜を瞬殺させた後、こいつを発見。

 魔王だと判断し、簀巻きにして口を塞いで動けなくした後、持ち運び転移陣で魔王城に送った。


 ちなみに、火炎竜を殺せば熱暴走するというのもマネットから聞いた。


「まったく、この僕がこうも簡単に他の魔王に捕まるとは」

「こうも簡単にって、11階層になんているからいけないんだろ」

「仕方ないだろ。あれより下にいくと、僕の糸が燃えてしまうんだから」


 ならば、マグマ迷宮なんかに住むなよと言いたいんだが、火炎竜はかつて命を救ってもらった恩竜らしく、彼のためにあの迷宮を作ったそうだ。


「まぁいいわ! あなた、私の配下になりなさい!」

「はぁ? なんで僕がお前のようなガキに! 僕を倒したのはこのコーマであって、お前なんかじゃ――」

「ちなみに、あのフライドチキンを作ったのはこいつな」

「どうか配下にしてください。僕はあなたの操り人形です」


 マネットが土下座して言っていた。

 うん、ルシル料理の威力を目の前で見ているからな。


 俺もあの鳥全部食べるのに、水筒に入れていたアルティメットポーション(20本分)を飲み干したからな。耐毒ポーションを飲んでいて、さらにルシル料理に対して耐性があるにもかかわらず、だ。


 小物感が溢れるこいつのゴーレムクリエイトの力は、魔王軍を作るのに大きな力になるし、魔王はできるだけ配下にくわえたほうが力が集まりやすいからな。


 ベリアルあたりは、配下には加えることはできないだろうけど。

 ブックメーカーも、俺の迷宮に住んでもらえないかな?


 とにかく、こいつの能力で、ゴーレムを増やし、調査団が来るまであと何日あるかはわからないが、それまでにできるだけ戦力の補強をしないとな。危険すぎない、だが、簡単に攻略されない迷宮にするために。

これでギルド試験編が終了です。


突如現れた魔王、マネット。


マリオネット型の魔王です。結構プライドは高いですが、強いものには従うタイプの小物です。でも、情には厚く、火炎竜のために自分の迷宮を改造しています。


日常閑話とかいいながら、日常っぽいことを何もしていないことに気付いた。

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