コーマのギルド試験~反撃編~
~前回のあらすじ~
トリだ!
とりあえず、俺達は11階層に戻ることができたのだが、11階層に戻ると、今度はストーンゴーレムが俺達を待っていた。
ゴーレムだけじゃない、マグマスライムや火炎蝙蝠などの炎系の魔物が割拠していた。
さっきまでいなかったはずなのに。
「二重迅衝剣!」
俺は剣を振るい、衝撃の刃で火炎蝙蝠の両翼を切り落とす。威力は低いが、蝙蝠の翼程度なら切り落とせる。
三匹の火焔蝙蝠を地に落とすと、俺はストーンゴーレムが振り下ろした腕を剣で受け流し、核の位置を探る。
受け流すときにゴーレムから力の流れを感じ取ると、その核の位置を予測し、ゴーレムの右胸のあたりの岩の隙間に剣を突っ込んだ。
すると、ストーンゴーレムは崩れ落ち、魔石と大きな石を残して消えた。
力の流れを感じるのに結構集中しないといけないので乱戦だと難しいが、一対一ならこのくらいは余裕だ。
「風よ、刃となれ! 風刃!」
ヨンイチの唱えた風の刃が、マグマスライムの一体を潰し、そこからマグマが溢れる。
が、マグマスライムの数が多い。
「迅衝剣!」
俺もマグマスライムに遠距離の攻撃をするが、数が多すぎる。
150匹はいる。一匹一匹倒している余裕はないぞ。
「トヴィ、この矢で遠くのマグマスライムを攻撃してくれ」
「わかりました」
コーマがトヴィに矢を提供している。もう、俺はあのバッグの中に何が入っていても驚かないと決めているので、いまさら矢が1本や2本入っていたところで別に驚くことはない。
トヴィが弦を引き、瞬時に狙いを定める。
トヴィが使うのは木の矢だったのに比べ、コーマが出したのは……鉄だろうか? 金属の矢だ。
目の前にいる、さっきとは別のストーンゴーレムに意識を集中させながら、俺は少し不安だった。
弓矢の扱いは、矢の素材が変われば、空気抵抗も変わるし、重量も変わる。
つまり、狙いが狂うはずだ。
だが、俺のその考えは杞憂だったようだ。
俺の数メートル横の、二体のストーンゴーレムの間をすり抜けるように通り抜け、そして、俺の視界の端、その奥にいるマグマスライムに命中した。
刹那、激しい雷光が矢の刺さったマグマスライムとその周囲に降り注ぎ、気が付けば、マグマスライムの中身のマグマとドロップアイテムだけを残して死んでいた。周囲にいたはずのマグマスライムやゴーレムごと。
「おい、なんだ、コーマ! 今は!」
「なんですか、あの威力!」
オーガとヨンイチが叫び、矢を放ったトヴィは呆けて声も出ないでいた。
「あぁ、気にするな! 使い捨てだから威力は折り紙付きだ」
気にするなって言われてもな。
なんなんだ、あいつは、本当に。
だが、そんなことで驚いた俺がバカだった。
コーマは、あろうことか、先ほどの矢をさらに出して、トヴィに渡していた。
あの威力の矢が何本あるんだ?
まったく、本来なら俺が先頭に立ち、サポートもしなくてはいけない立場だというのに、サポート役は完全にコーマのお家芸になってしまったようだ。実際にあいつが専門家なのだが。
俺は再度ストーンゴーレムの核の位置を探り、そこを正確に貫いた。
本来なら剣でいいところを見せてコーマのやつを見返してやりたいんだが、勇者クリスティーナの剣を間近で見ているあいつからしたら俺の剣は児戯に等しいかもな。
でも、俺もBランクの冒険者。せめてな、お前たちを守る盾くらいにはなってやる。
「しにさらせぃっ!」
「朧切り」
オーガの斧がストーンゴーレムの腕を切り落とし、シグレの白く光る短刀が空を飛ぶ火炎蝙蝠を凍らせて地へと落とす。
徐々にだが、こっちが敵を押してきている。このまま押し切れる――そう思ったその時、後ろから気配が。
振り返ると、最も後方にいるコーマの足元からストーンゴーレムの腕が生え、コーマの身体を掴んだ。
「コーマ!」
俺が叫んだが、すでに時遅し。大地から膨れ上がるゴーレムがコーマを頭から大地へと叩きつける。
コーマが死んだ、そう思ったときだった。
その光景はきっと俺は二度と忘れないだろう。
コーマはなんとか腕だけを出して、大地に手を垂直に立てて、叩きつけられるのを耐えていた。
それだけでなく、奴はあろうことか、その両腕の力で、ストーンゴーレムを持ち上げていた。
「せいやぁぁぁっ!」
コーマが体を曲げると、ストーンゴーレムは一回転し、逆に大地へと叩きつけられて瓦解した。
核はまだ無事らしく、魔石には変わっていない。
「あぁ、頭に血が上った」
コーマはそう呟くと、その拳でゴーレムの核を叩き潰した。周りの岩ごと。
それがとどめになり、ゴーレムは岩と魔石に変わった。
え? あいつ拳闘士かなんかか?
俺が呆れていると、コーマは今度はゴーレムが落とした岩を力の限り投げた。
その投げた方角は、オーガが戦っていたストーンゴーレムの頭。
岩が衝突し、ストーンゴーレムの頭がはじけ飛ぶ。
そして、ストーンゴーレムは自分の頭を片腕で確認し、そして倒れた。
見ると、首のあたりに核があり、半分欠けていた。
今のが原因かどうかはわからないが、魔物達が逃げ出した。
「ふぅ、おわったな」
俺がひといきついた――その時だった。
コーマが叫んだ。
「まだだ! 奴らが来る!」
何を言っている?
敵の気配なんてどこにも……ってあれ? なんだ?
香ばしい臭いと、羽の音が――
「悪い! 逃げる!」
コーマが走り出した。
すると、階段の下から何かが――さっきの鳥だ!
ボーンゴーレムを追いかけていたはずの白い鳥が上がってきた。魔物が逃げ出したのも、俺達の強さを恐れてじゃない、あの鳥が来たから逃げ出したのか。
そして、鳥は俺達の頭上を通過し、コーマを追いかけていった。
コーマが逃げて行った方向から爆音が響き渡る。
その音が何なのか、そもそもあの鳥たちはなんでコーマを追いかけるのか、その理由はわからないが、
「俺達も追いかけるぞ!」
俺はそう言って、皆と一緒に走って行った。




