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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode06 日常閑話

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コーマのギルド試験~窮地編~

~前回のあらすじ~

迷宮の中に突入した。

『迷宮は生きている。それは悪魔と天使、両方の顔を持つ』


 1300年前の迷宮学者、ガオリンの言葉だ。迷宮は多くの魔物を生み出し、そしてその恩恵を人々に与えた。

 もしも迷宮がなければ、迷宮の魔物のみが落とす魔石がこの世界に存在しないことになり、多くの魔道具がただのごみ屑に変わるだろう。何も魔石だけの話ではない。


 機密事項のため、誰にも言ってはいけないので俺の心の中でのみ語ることになるが、迷宮に居を構える人もいる。例えば、蒼の迷宮と呼ばれる場所に調査団の一員として潜ったのはもう7年も前になるだろうか? 俺が初めて挑んだ迷宮だったが、当時の戦闘職員はよく通る道かのように(実際にそうなのだろう)、道を完全に暗記して進んでいた。隠し部屋の転移陣を潜ると、そこは海の上だった。


 そして、その海の上には二頭の亀がいて、そのうえに多くの人が住んでいて、浮島で野菜を育てたり、漁をして生活を営んでいた。既にその時からギルドは人が迷宮に住んでいることを知っていたらしく、領主から歓待を受けて報告を受けて帰った。

 あの太った領主は、島民を大事に思っている素晴らしい領主だった。元気にしているだろうか?


 つまり、あの迷宮は人々にとって天使の顔があったんだろう。

 だが、少なくともこの迷宮は俺にとっては悪魔にしか見えない。


「……こりゃ暑いわけだ」


 コーマから貰った耐熱ポーションのおかげで本当はちっとも暑くないんだけど。

 俺達の目の前に広がるのは、マグマの川だった。


 マグマ迷宮――ギルドでも一ヶ所確認しているが、少なくともこの場所じゃないはずだ。

 あの部屋は鍵付きの扉に囲まれ、数年に一度の調査の時以外は誰も入れないようになっている。ちなみに、俺は行ったことはないが、資料は読ませてもらった。マグマスライムもその資料の中にあったイラストで見たことがあり、俺はその存在を知っていた。


 迷宮が変異するにしても、ここまで変異するか?


 何か原因があるんだろうか?

 とすれば、調査の第一目標は迷宮の変異の原因だな。


 とその時、獣の骨が動いた。


「獣型のスケルトンですね」


 トヴィが声をあげ、弓を構えて矢を放ち、その矢は光を放って獣の骨に突き刺さる。

 光の矢か。属性矢は高レベルの弓術使いが使え、中でも光と闇は高レベルにしか使えないはずだ。

 スケルトン相手ならこれで一発で昇天するはずだった。


 だが、


「え!?」


 獣の骨がトヴィに目掛けて走ってきた。全然効いていない。


 二人の間に俺が割って入り、剣でその獣の骨の体を薙ぎ払う。


 獣の骨は両断されるもすぐにくっついた。


「……ちっ、ボーンゴーレムだ!」


 見た目が同じでも、スケルトンとボーンゴーレムとではその性質は大きく異なる。

 死者の怨念により動く骨――スケルトンは、聖属性の攻撃が弱点だ。だが、ボーンゴーレムは骨を材料にして動くゴーレムであり、動力は怨念ではなく魔力。

 聖属性が弱点というわけじゃない。


封魔弓ふうまきゅうです!」


 弓矢が光を取り込み闇を纏う。

 光属性だけでなく闇属性も使えるのか。


 そして、トヴィの放った矢はボーンゴーレムの頭蓋骨に命中――今度こそ、その動きを止めた。

 俺はボーンゴーレムに近付き、ゴーレムの核を探す。

 骨であろうと岩であろうと、ゴーレムの名を持つ魔物には必ずゴーレム核がある。それを潰せば完全に死ぬからな。


 そして、ゴーレム核は獣の骨の下顎に固定されていた。それを剣で砕くと、ゴーレムは完全に崩れ落ち、真新しい魔石と数本の骨を残した。

 トヴィは肩で息をしている。魔力を込める属性矢の弓術は魔法ほどではないがMPを消費するからな。

 少し休憩にするかと思った、その時だった。


「嘘だろ、おい」


 オーガが声を上げる。俺も同じ気分だ。

 なぜなら、獣や人の骨によって作られたボーンゴーレムが俺達を囲んでいた。

 地面から盛り上がってきたのだ。

 さっきまで気配はなかったはずなのに。


「ゴーレムマスターか」

「その可能性は高い」


 シグレの予想に、俺は同意した。

 ゴーレムマスター。ゴーレムを生み出す魔物の総称だ。

 ゴーレムは自然に生まれる他、ゴーレムクリエイトという魔法によって生み出される。


「おい、さっきのアレ、使えないのか!?」


 オーガが跳びかかってきたボーンゴーレムを斧で叩きながら言う。

 今の一撃で運よくゴーレム核を壊したらしく、ボーンゴーレムが消滅し、魔石と骨を残した。だが、数が減るどころか増えている。


「すみません、時間を下さいです! なんとかするです!」


 トヴィはそう言い、三本の矢を取り出し、何か力を籠め始めた。

 矢がうっすらとだが、闇を纏う。


「時間稼ぎったってなぁ」


 ボーンゴーレムは完全に円陣を組み、その円の半径は徐々にだが狭くなってきている。


「風よ全てを押し払え――突風ウィンドブラスト!」


 ヨンイチの出した風魔法は完全にダメージを与えるものではなく、相手を押しのけるものだった。

 風に飛ばされ、ボーンゴーレムが後退するもすぐに他のボーンゴーレムによってその穴は埋められる。


 俺とオーガ、シグレの三人なら一点突破は可能だし、未知数ではあるが、コーマの脚力でも可能な気がする。だが、トヴィとヨンイチはそうはいかないだろう。

 ならば、今はトヴィを信じて時間を稼ぐ――といってもこのままじゃ。


「三分の一は私が受け持とう」


 シグレがそう言った時、彼女の姿がぶれた。

 無数に分かれた彼女の分身が、半円分近いボーンゴーレムに短剣を構えて攻撃をはじめた。


「じゃあ、三分の一は俺がなんとかする」


 そう言って、コーマはアイテムバッグを逆さにした。

 って、スライムの核!?

 それが100個も落ちてきた。

 

「スライム創造クリエイト!」


 そう叫んだ時だった、コーマの足元のスライムの核が膨れ上がり、無数のスライムに変わった。

 おいおい、なんだよそんなスキル聞いたことないぞ!?


「スライム達! ボーンゴーレムの足止め、もしくはゴーレム核の破壊をしろ!」


 スライムがボーンゴーレムの集団に向かって突撃する。

 一体一体は無力なスライムだが、倒すにはその核を潰さなくてはいけない。

 相手は武器を持っているわけでもない、獣の骨。

 一度に倒せるスライムは一体が限度。

 なるほど、時間稼ぎにはなる。


「よし、オーガ、ヨンイチ、残りは三分の一だ」


 俺達はトヴィの言葉を信じて、ひたすら戦った。

 円の大きさは狭くなることはないが、ボーンゴーレムの数は明らかに増えている。

 しかも、ボーンゴーレムの間には連携もとれていた。


 ここまでくれば、ゴーレムマスターがいるのは間違いない。


「封魔領域です!」


 そのとき、トヴィから放たれた漆黒の矢が11階層の天井付近まで孤を描き、三ヶ所の地面に突き刺さった。

 その三点に囲まれた床の色が闇へと変わる。と同時に、ボーンゴーレムが崩れ落ち――トヴィもまたその場に倒れた。


突風ウィンドブラスト……ん? 魔法が使えない? そうか、この一帯が魔法封印フィールドになったのか」

「スライム達、動かなくなったゴーレムの核を潰すんだ。フィールドの外に出るな」


 コーマが指示をだす。

 俺は倒れたトヴィに駆け寄った。

 トヴィは目を閉じ、苦しそうに息をしていた。魔力が完全に尽きたのだろう。


「コーマ、マナポーションは持ってないか? 持ってたら売ってくれ」

「あぁ、待ってろ……げっ、ダメだ! この領域の中じゃ魔道具が使えないみたいだ、アイテムバッグが開かない!」

「魔道具が使えない? なら、下手したらポーションそのものが使えない可能性もあるな」


 ポーションは薬草などの植物を持つ癒しの魔力によって回復する薬だ。

 確かに、トヴィの判断は正しかったし、安全は確保されたわけだが、この均衡状態がどこまで続くか。


 一応携帯食と水はある程度持ってきているが。


「まずはトヴィの魔力回復を待つ。1時間もしたら動けるようになるだろう」


 俺の言葉に全員が従った。


 だが――1時間経っても、トヴィの状態は一向によくなる気配はなかった。


「なんでだよ! 1時間経ったら動けるようになるって言っただろうが!」

「落ち着いてください、オーガさん! ギロンさん、魔力は空気中の魔力元素を吸収して回復するものだと聞いたことがあります。もしかしたら、封魔領域の中では空気中の魔力そのものがないため、魔力の回復が望めないのでは?」

「……くっ、そうかもしれない」


 なら、どうしたらいい?

 未だにボーンゴーレムは結界の周りを囲うように集まっている。

 疲労も空腹もないボーンゴーレム相手に籠城作戦は、ジリ貧でしかない。

 となれば、残された手段は二つ。

 一つは俺とオーガ、もしくはシグレがここを脱出し、ギルドに助けを求めに行く。だが、ゴーレムマスターがいる以上、戦力の分散はリスクが高い。

 そもそも、この封魔領域がいつまで保てるのかわからない。

 だとすれば、


「全員で一点突破する。トヴィは俺が背負おう」

「はぁ、何を言ってやがる!」


 オーガが叫んだ。確かに無茶な作戦なのは理解しているが、今はそれしかない。


「チビを背負うのは俺の仕事だ。この中じゃ、俺が一番力があるんだからな。ギロン、シグレ、俺は戦えなくなるが、サポートを頼む。コーマ、ヨンイチ、死ぬ気で走れ」


 そう言って、オーガは歯を見せて笑った。

 コーマとヨンイチも無言で頷く。シグレは無言のまま短剣を構えた。

 いつの間にか、いいパーティーになってきたじゃないか。


「コーマ、頼む!」

「わかった! スライムは突撃!」


 コーマの指示により、スライムが俺達の逃走ルートに対して突撃した。

 反対方向への陽動も考えたが、こいつらがゴーレムマスターの指示で動いている以上スライムによる陽動は効果が薄いと判断した。


 スライムが一斉に飛び出し、僅かだが、隙間を作る。


「突撃!」


 俺は剣を、シグレは短剣を構えて、走り出した。オーガも俺についてくる。

 そして、封魔領域を出て、ヨンイチも魔法が使えるようになったらしく、


「風よ全てを押し払え――突風ウィンドブラスト!」


 彼の風の魔法が一直線に道を作り出した。

 このまま逃げ切る!


 そう思った時――俺はその目を疑った。

 5メートルは超えるであろう岩の塊がそこに現れたからだ。

 並みの大きさじゃない。しかも、ただの岩ではなく、岩の間にマグマのようなものが見える。


 マグマストーンゴーレム……俺達が逃げるのを予想していたのか?


「撤退!」

「炎よっ!」


 俺が撤退指示を出した瞬間、コーマが前に飛び出し、杖を取り出して、そう叫んでいた。

 7メートルはある炎の球が杖から現れ、ストーンゴーレムだけでなくその周囲にいたボーンゴーレムもろとも飲み込んでいった。それだけじゃない、その熱の余波をあびたせいでゴーレム核が壊れたのか、半数近くのボーンゴーレムが消え去った。

 ていうか、炎でマグマストーンゴーレムを吹き飛ばすってどんな威力だよっ!


「よし、逃げるぞ!」


 何事もなかったかのように言うコーマに、オーガはトヴィを背負いながら叫んでいた。


「最初からそれを使えよっ!」


 オーガの怒りにも似たツッコミに、コーマ以外全員同意した。

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