コーマのギルド試験~受付編~
~前回のあらすじ~
神子さんは日本の転生者だった。
冒険者ギルド。
多くの冒険者が様々な依頼を受けて、日銭を稼ぎ、いつの日か大金を得ることを夢見る。
だが、冒険者になりたての人――特にGランクの冒険者は生活がきつい。
その理由は、ラビスシティーには冒険者が多すぎるからだ。
特に迷宮1階層~9階層は人が多い。迷宮の性質のせいか、魔物やアイテムが尽きることはないのだが、供給が増えると値段も安くなり、素材を売るだけでは生活ができなくなる。
そして、冒険者の多くが道を踏み外し、魔石の密輸という犯罪に走ってしまう。
ラビスシティーの迷宮のみ魔石を落とす。魔石は多くの魔道具のエネルギーとなるため、他国では需要が高い。
しかも、ラビスシティーが輸出を制限しているからなおさらだ。
年に300人も密輸の容疑で捕らえ、それ以上の人が密輸を成功させているだろうと言うのだから、ギルドからしたら悩みの種だった。
だが、最近になって、現状が大きく変わった。
まずは魔石チェッカーと呼ばれる魔道具が作られたこと。魔石があると反応するこのアイテムにより、魔石の密輸がギルドが認知してきた方法では不可能になった。しかも、これまで知られていなかった密輸方法も次々と暴露されている。
それともう一つ。魔物素材の値段が高騰しているのだ。俺のせいで。
冒険者ギルドの掲示板に、アイテム採取依頼が張り出された。
「おぉ、今度は薬草の依頼が来たぁぁ、パーティー“子供のお使い”集合だ! 早速迷宮に行くぞ」
「1000本か。今日中に持ってくればよさそうだな」
「合計金貨1枚分か。まぁ、一人30本を採取できたら、3日分の稼ぎになるな」
「俺なら銀貨3枚あれば一ヶ月過ごせるっす」
薬草1000本の採取依頼、1本につき銅貨10枚。
これは、かつての相場の20倍の値段だ。薬草は迷宮の中に、雑草のように生える草である。
薬草は瘴気を吸収し、治癒力に変えて草の中に蓄える。
そのため、畑で栽培することは難しい。例外として、迷宮の中に畑を作ることは可能だが、魔物がいるためそれも難しい。魔物が存在しない10階層は瘴気が薄いため薬草栽培には適していない、と言われている。しかし、実際は蒼の迷宮の最深部で薬草畑を俺は作ったことがあるし、ルシル迷宮の最下層で俺も栽培しているので抜け道は存在すると思われる。ラビスシティー以外では、鬱蒼としげる森の中に群生地がある他は稀にみつかる程度なので、ラビスシティーの外では銅貨1枚というのは普通の値段なのだ。
だが、ラビスシティーでは迷宮に潜れば普通に採取できるため、相場がだだ下がりになっていた。
他にも、ラビスシティーだから安いと言われていた商品があったが、連日大量に舞い込む依頼のせいで、その値段が高騰している。
それらは、ギルドが価格調整に乗り出した依頼だと言われ、賛否両論が巻き起こっている。
半分あっているが、半分は実はそうじゃない。
だって、あの依頼、俺が出しているものだし。
それだけではなく、汎用性のある素材に関しては大量に依頼を出している。
価格破壊が起こったら困るので、レメリカに値段は任せると頼んだところ、こんな高騰が起きてしまったわけだ。
おかげで低ランクの冒険者でも一定以上の収入を得ることができ、犯罪件数が昨年の同時期の3割程度まで減少したと報告を受けた。
困るのは、素材を今まで低価格で仕入れていた商人や生産職人なのだが、これが本来の値段なのだとギルドが説明し、無理にでも納得してもらっているらしい。
依頼が匿名になっているのは、そうするように俺が頼んでいるからだ。ちなみに、依頼主が俺であることはクリスも承知の上で、彼女の勇者特権を使うことにより同じ勇者でも情報を開示できないようになっている。
お金の引き渡しは俺の口座から直接引き落とされ、商品の引き渡しはフリマに卸す商品に紛れ込ませてもらっているため、俺に直接結びつくことがあるとすれば、レメリカとこうして話している時くらいだろうか。
それも、こうして個室を使わせてもらっているので安心している。
「あと記憶石が200個あれば助かるんだけど」
記憶石は、周りの光を吸収し、その光を記憶する石。
転移石の材料になるのであったほうがうれしい。
「わかりました。依頼を張り出しておきます。げんこつ岩は継続でいいですか?」
「はい、あれはいくつあっても困らないので」
依頼の素材の使い道に関して、俺の対応をしてくれているレメリカは何も言わない。
げんこつ岩は力の妙薬の素材になり、力の神薬を作るにはげんこつ岩が8個必要である。
最近俺は魔力の神薬を飲んでいるので力の神薬を使うことはないんだが、コメットちゃんとタラ、あとたまにクリスにもまだ飲ませているため、げんこつ岩の消費量が半端ないのだ。
薬草も同じ理由で大量に消費しているため、薬草畑の収穫が間に合わなくなってしまった。
こっちは力の神薬だけではなく、魔力の神薬にも使われるので消費量はげんこつ岩以上だ。
「では、依頼の品の代金は口座より引き落としをさせていただきました」
レメリカはそう言って、俺のギルドメンバーのカードと、残高を記した紙を渡した。
残高、金貨1280枚?
あれ? 前は金貨1270枚くらいだったんだけど。
「……あの、若干ですが増えてますよ」
「今日は1日ですから、利息がつきますので」
「あぁ、そうなんですか」
と、外から笑い声が聞こえてきた。
冒険者たちの声だ。
「コーマさんは冒険者にはならないのでしょうか?」
「ん? あぁ、なる必要がないというか。冒険者になってできることって、依頼を受けてお金を稼いで、ランクを上げて、もっと割りのいい依頼を受けてもっとお金を稼ぐ、みたいなものですよね?」
「概ねあってますね。ただ、この冒険者ギルドの場合は、調査団に入ることも目的の一つです」
あぁ、そういえばそんなことを聞いたことがある。
ランクC以上の冒険者はギルドから調査団に入るように依頼が来て、11階層より下の迷宮に行くことも可能だという。
「そういえば、レメリカさんは最初、俺に会った時、そのこと教えてくれませんでしたよね。迷宮に行きたいって言ってたのに」
「冒険者になるように薦めたと思います」
あぁ、そういえば薦められた。
でも、まぁ、勇者の従者になるほうが早かったのは確かだしな。結局、従者にならなくても魔王城に戻れるようになったんだけど。
「あと、高ランクになれば、勇者特権があっても入ることのできない迷宮の調査依頼が来るようになります」
「勇者特権があっても入ることができない迷宮?」
「例えば、この前コーマさんが発見なさった迷宮もその一つです。現在調査団を編成しているところです」
「へぇー、そうなのか」
それはいいことを聞いた。防衛の準備をしないとな。
それにしても、ギルドが許可を出していない迷宮の調査か。おもしろそうだな。
「そういえば、クリスやゴーリキはランクAの冒険者だったって言ってたなぁ」
「そうですね。ゴーリキさんもあんな事件がなければ一流の冒険者としてもっと活躍なさっていたんでしょうが」
「……そうですね」
俺はきっと複雑な表情だっただろう。
今も元気に生きてるけどね。一度死んだけど、タラと一つになって俺の配下として第二の人生を歩んでいる。
でも、あの時、コメットちゃんを殺してしまったこと、そしてゴーリキを見殺しにするしかなかったこと、それらの俺自身の無能さは今でも忘れられないでいる。
「んー、じゃあ俺も冒険者に登録してみようかな……ってもう登録してるんだっけ?」
「いえ、今は仮登録のみになっています。本登録なさいますか? 遊び感覚で冒険者になられたらこちらとしては困るんですが」
「ぐっ、やっぱりやめておこうかな」
レメリカの言葉に心のやる気スイッチが全てOFFになる。
彼女は言葉の暴力という言葉を知らないのか、それとも言葉の格闘家なのか、どちらにせよ俺には勝ち目はない。
なんだろう、クリスに同じことを言われたら、借金の利子を取るぞ、で一件落着するんだが、彼女に言われても反論する気にならない。その威圧感はエント以上だ。
「一度決めたことを覆すとは、男としてどうかと思います。男をやめますか?」
レメリカが俺を睨み付けてきた。
「やります。やらせてください。ランクCになって調査団に入りたいです」
男をやめていた時期はあったけれど、怖すぎる。
なんで、なんでそんなに怖いの?
強くなっているはずなのに、いまだに彼女に敵う気がしない。
「目指すならAランクを目指すくらい言ってはどうです?」
「わかりました、Aランクを目指します」
そうして、俺は冒険者登録をすることになったのだが――
「では、早速ランク認定試験を致しましょう。ちなみに、ランク試験料は功績により軽減されます。冒険者として何の実績もない新米のコーマさんは最高金額の試験料を支払ってもらわないといけなくなります。金貨3枚ですが払えますよね」
「……高くないですか?」
「高いです。やめますか? 一度決めたことを覆すとは――」
「やります! やらせてください!」
こうして、俺は冒険者のランク認定試験を受けることになった。
この話はもともと4章でする予定だったんですが、アンケートの結果落選したネタです。
そろそろコーマに有名になってもらわないと困るので、ちょうどいいかなぁと、再利用しています。
追伸、ロト6は5口(1000円)買って、末等(1000円)当たりました。
ラッキー。
あと、本棚を買って組み立ててました。
そのため、更新が遅くなっただけでなく、他作品が更新できなくてすみません。
ラノベ2000冊、うちダンボール2箱。
本棚4つ目も組み立てた途端満杯。
……1冊600円として、120万円か。凄い散財。
古本も混ざってるけど。




