鍛冶師ギルドへの刑罰
~前回のあらすじ~
ザードのスキルレベルが4に上がった。
長いようで短い一週間が過ぎた。
僕の鍛冶レベルは3日目に5に上がり、その時点で、健康ジュースが別のジュースに変わった。
それから自分では確認できないのだが、7日目までにスキルレベルが上がらなかったそうなので、きっとあのジュースに何らかの秘密があったのだろう。
ちなみに、僕が鍛えた剣は500本を、僕が飲んだ薬の本数も300本を超している。
銀だけでなく、金のインゴットまで使わせてもらったのには驚いたが、コーマはあるから使ったというだけのようだ。
試しにプラチナインゴットを打ってみるか? と言われて、挑戦してみたのだが、僕のスキルレベルでは白金インゴットには手も足もでなかった。ゼッケンさんも扱えないと以前に言っていたのを聞いたことがあるから、いくら設備がいいとはいえ、無理なものは無理なんだろうな。
だが、僕が手も足もでない白金インゴットを、コーマがたった2回打ちつけただけで剣の形(柄もある)になったのは流石としかいえない。
「コーマの実力なら、鍛冶場の結晶コンテストで最優秀賞も楽に取れると思うんだが、出てみないのか?」
「あぁ、あまり興味ないな。てか、今もやってるのか? 120年前のコンテストだったんだろ?」
「今ももちろんあるよ。当時の資料も残っていますし、ギルドで保存しています。凄いんですよ、あれって実は金のワンダー武器で、まさに国宝級のお宝だよ」
「本当に金のワンダー武器なのか?」
「もちろん。10年前にはきっちり公的機関に鑑定されてるし」
「そうか。まぁ、そういうことならば……うん。信用できるよな」
何か歯切れの悪い言い方だ。
でも、そのコーマも実は金のワンダー武器を12本作っているし、コーマ本人は認めてくれないが、おそらくシークレット武器も作っている。
本当に良いものを見た。
僕はこの一週間幸せだった。
「勇者のお兄ちゃん、鍛冶師のお兄ちゃん、ごはんもってきたの」
特に、アンちゃんが僕に懐いてくれたのは僥倖といってもいい。
今日は熊さんフードを被ったとてもかわいらしい姿をしている。
アンちゃんが料理を置くと、ぺこりと頷いて、とてとてと出て行った。
「いやぁ、やっぱり女の子が持ってきてくれるごはんっておいしいですね」
僕はパンとスープを飲みながらそう呟くと、
「自首しろ」
コーマに冷たい目で見られた。
「何言ってるんだよ、僕何も悪いことしてないだろ」
「……いや、よくそんなにやけた顔で俺のことをロリコン呼ばわりできたな、お前は」
「ロリコンじゃないって。小さい女の子が可愛いのは当たり前じゃないですか。特に3歳から8歳の女の子は」
「通報しますた」
えぇぇっ!?
何それ、今の一瞬の間に通報したって言うのか!?
コーマならありうる、ていうか、僕指名手配犯?
「今のは冗談だが、本当に変なことしてみろ、お前の首へし折って炉にくべるからな」
「わ、わかってますよ! 時々おかしを上げるだけですから。最近じゃコーマの留守中にも遊びに来るんだよ」
「うわ、手遅れだったか」
コーマが困ったように呟く。
何言ってるんだよ、小さい子を可愛がるって普通だろ?
母性本能や父性本能っていうの? あれだよ。
性的対象で見ていない限りロリコンじゃない。
前にコーマとアンちゃんが二人で遊んでいるのを見たときのこいつの目のほうが危ないと思ったよ。
まぁ、それも勘違いだとわかったわけだが。
アンちゃんがコーマに懐くのは、アンちゃんの病気をコーマが仕入れた薬で治療したのが発端らしい。
「それにしても、クマさんフードはかわいかったですね」
「そうだな。俺は昨日のウサギ耳フードのほうがかわいいと思うけどな」
僕たちはそんな会話をしながら、最終日の昼飯を食べ、そして、鍛冶師ギルドへと向かった。
コーマは僕が今まで作った剣を全てアイテムバッグの中に入れた。
今日、これから僕たちが鍛冶師ギルドに行くことはすでに伝えている。
一般メンバーはいないが、処罰対象になるクイナさん、共犯……というか首謀者のハチバンさん、そしてゼッケンさんが待っているという。
でも、僕は全然緊張していなかった。
コーマはめんどくさがりな面もあるが、それ以上に面倒見がいい。
僕の剣について、何が悪いかとか、出来具合がどうだとか説明してくれた。
これなら、僕が処罰されることも、クイナさんが処罰されることもないと思う。
少なくとも僕の知るコーマなら。
鍛冶師ギルドに入った僕たちを、ゼッケンさん達が待っていた。
「よう、ザード。一週間ぶりだが、なんだ? つきものが落ちたみたいに晴れやかな顔をしてやがるな」
「はい、とても貴重な経験をさせていただきました」
僕が頭を下げると、コーマはアイテムバッグを置き、
「鍛冶師ギルドは凡庸武器の査定もしているんだろ? なら、これらの査定を頼むわ」
そう言ってコーマは大量の剣を置く。
全て柄がつけられている。あれだけの柄をいつの間に!?
「あぁ、悪いが凡庸武器の買取は鍛冶師ギルドメンバーが作ったものに限るんだ。それにしても、コーマ、腕落ちたんじゃねぇか? 俺が作ったのとあまり変わらんぞ」
「これを作ったのはザードだ」
コーマが言うと、ゼッケンさんは驚き、
「おいおい、ウソだろ!? 金の剣なんて鍛冶師レベル2のザードが作れるわけないだろ。俺でやっと作れるんだぜ?」
そう言ったのはハチバンさんだ。
ハチバンさんは僕の金の剣を見て、
「なるほど、だいぶ鍛えられたようだな。で、ザードとクイナの処分はどうするんだ?」
「処分もなにも、ザードは最初から処分対象だって言ってないだろ。僕が処分対象と言ったのはクイナだけだ」
「そうだったな。で、その口ぶりだと、既に答えは決まってるようだな」
「あぁ、ていうか、まぁ最初から決まっていたんだけどな」
そして、コーマは言う。
「除名なんて言うわけないだろ」
コーマはそう言った。
まぁ、そうだよな。
その言葉に僕もゼッケンさんも、そして本人のクイナさんも胸をなでおろした。
「ということだ、クイナ、コーマの許しが得られたが、お前の罰はなくなるわけじゃない。ハチバンと一緒で便所掃除と無償奉仕の刑だからな」
うげっ、それはきつい。この鍛冶師ギルドのトイレは別名魔王の肥溜めと呼ばれるほど臭く、ほとんどの人が利用できないくらいなのに、そこの掃除か。
「なぁ、ゼッケン。それは違うぞ、俺が言ったのは、そうじゃない」
コーマが突然に言った。
「俺が言うのはこうだ。除名だけなんて生ぬるい刑で済ませられるわけないだろ!」
次回で長かった鍛冶師ギルドの短編も終わり。
次はもっとふざけた話になります。




