プロローグ
本日2回目の投稿です。
今章からは4章みたいな日常路線です。
~前回のあらすじ~
ようやく魔王城に帰ってきた。
あるところに一人の冒険者の男がいた。
男は周囲よりも力があり、そして才能もあった。物心ついたときには、オークの群れを一騎当千するかのごとくソロで撃破し、山に行けばその膨大な魔力で火山を凍らせ、海にいけばその剣で海を二つに両断した。
彼には敵がいない、そう思った時、ある竜の伝説を聞いた。
ブラックドラゴン。
神に至らんとするブラックドラゴンを撃ち滅ぼしたとき、最強の力が得られると。
男は笑った。
最強の力ならすでに持っている。これ以上に得られるものなど何もない。
だが、それでもブラックドラゴンに興味のあった男は、竜退治へと乗り出した。
途中で魔物の群れを、山賊の一団を潰しながら彼は進み、とうとうブラックドラゴンの住む山へとたどり着いた。
ブラックドラゴンの配下のワイバーン達を鼻歌混じりで撃破した彼は、次の瞬間にはもうブラックドラゴンを倒していた。
笑える。こんなもので最強の力が得られるわけがない。
そう思った、次の瞬間――男に異変が起こった。
彼は気付いた――己の力が変質していくと。
身体が竜になっていく。鱗が生まれ、角が出て、翼が生えた。
男はようやく気付いた。最強の力というのは、竜の力のことだったのだと。
そして、男は悔いた。このままでは自分はもう人間ではいられない。
そう思った時――奇跡が起きた。
一人の少女が現れ、男の竜の力を封印してくれた。
これで元に戻れると思ったのだが、男は気付いた。竜の力を封印された自分の力は、すでに人間だった頃に持っていた力さえなくなっていることに。
そして、全力を出そうとすれば、封印が解け、竜の姿に戻ってしまうことに。
男は絶望した。
そして、男はもう剣を握ることをやめ、剣を作る仕事を選んだ。
そんな時に出会ったのが――
「そう、クリス、お前だったんだ」
俺の全力の作り話を聞いて、クリスが冷ややかな目をした。
工房内、炉に火が灯っていないせいか、とても寒く感じる。
「まぁ、さっきの作り話よりは信憑性はありますけどね」
そうだよな。
さっきの話は確かにひどかった。
ブラックバスとして生まれた俺が、成長していってブラックドラゴンに進化して、その後に人間になったという作り話だ。
全力を出す時にドラゴンに変身できる、みたいなことを言ったらクリスは呆れて何も言わなかった。
「なら、信じてくれたか?」
「いいえ、騙されません! そもそも、コーマさんはルシルちゃんのところで錬金術を学んでたって言ったじゃないですか! そのくだりはどこにいったんですか」
「うっ、じゃ、じゃあ、実は俺は竜神の生まれ変わりって架空の設定はどうだ?」
「架空の設定って自分で言ってるじゃないですか!」
俺はクリスに竜化の説明をしていた。
正直に話そうかと思ったんだが、でもそれを話す前に、ある事実が露見した。
「コーマさん、ところで一角鯨と戦っていた時にコーマさんが持っていた剣、あれ、お父さんの形見の剣――グラムに似ているんですが」
とクリスが訊ねたのだ。そして、俺は知ってしまった。
クリスの父の敵がルシファーであり、ルシルの父の敵がクリスの父であることを。
なんだよその関係図。そんな無茶苦茶な関係図の真ん中に俺をおかないでくれ。
とりあえず、クリスには、グラムは砕いて斧に作り替えたと正直に話したところ、ものすごい激怒した。
あんなに怒ったクリスは初めて見たが、事情が事情だけに納得してくれた。
それほど彼女は父親のことを愛している。
その愛した父の命を奪ったルシファーの力が俺の中に眠っている、なんて言えるはずもない。
そのため、ウソをつき続けたわけだが、クリスは今日に限って勘が鋭く、全く信じてもらえなかった。
「何で教えてくれないんですか」
少し辛そうに尋ねるクリス。
やば、俺がクリスのことを信用していないから教えない、みたいに思われてる?
なら、ここは禁断の手段を用いるか。
「すまん――話したいのはやまやまなんだが、俺の竜化のことは、俺の死んだ両親のことが深くかかわっていてな。死んだ二人のためにもあまり話せないんだ。死んだ父さんとの約束でもある」
「……そ、そうだったんですか。そんなこととは知らずに」
クリスが同情の目でこちらを見てきた。
悪い、これもウソなんだよ。
でも、これ以上は流石にクリスもツッコまなかった。
「じゃあ、その話はもういいです。次にコメットちゃんの件ですが――」
あぁ、そっちもあったか。
そして、俺はコメットちゃんについてウソを重ねるためにさらに1時間を費やした。
※※※
結局、コメットちゃんは名前が同じで顔が似ているだけの他人だと説明。
何か偶然があるんじゃないかと話を聞いているうちに仲良くなって、仕事を探していた彼女のために、ルシルの世話役にしたということで話は終わった。
クリスは最後まで疑わし気な目で見ていたが、渋々納得した、そんな感じで工房を出ていった。
これでようやく休憩できる、そう思った時、ドアがノックされた。
「師匠、クルトです。師匠にお客様です」
客?
一体誰だ?
そう思い、俺は扉を開けた。
すると、クルトの後ろに、身の丈2メートルはあろうかというスキンヘッドのいかつい男が一人いた。
腕がものすごい太い。腕相撲したら負けそうだと思ってしまう。まぁ、勝つだろうけど。
「えっと、地上げ屋さん?」
「違う。俺は鍛冶ギルドのギルドマスター、ゼッケンだ」
「鍛冶ギルド? 何それ?」
「鍛冶屋なのに鍛冶ギルドも知らないのか」
ゼッケンは怒っているというよりかは呆れた口調でそう言った。
まぁ、聞いてみたところ単純で、冒険者の互助組織が冒険者ギルドなら、鍛冶師の互助組織が鍛冶ギルドということらしい。
ちなみに、クルトに「知ってた?」と尋ねると、クルトは頷き、いろいろと説明してくれた。
彼も錬金術ギルドに入っているという。
ギルド員に入ることでのメリットは多い。
レシピや技術、情報などの共有化、仕事の斡旋、普通の店では売っていないような専門器具の販売などだ。
そして、デメリットはというと、年に銀貨5枚を支払わなければいけないそうだ。
「今日はコーマ、君に鍛冶ギルドへ入ってもらうべく訪れた」
「あ、そういうの間に合ってるんで」
俺はそう言って、断った。
だって、面倒だし、何より面倒だ。
そもそも、俺の本職は鍛冶師じゃなくてアイテムマスターだしな、とは言えないか。
「ならば話だけでも聞いてくれ。実は、現在うちの鍛冶師ギルドの大半が、君を目の敵にしている」
「わかりました。では、もしも俺が襲われたら、ギルド員を返り討ちにしていい、そういうことですね」
「違う! なんでそうなる! そんなことが許されるわけないだろ」
「正当防衛は正当な行為ですよ!」
「いいから、俺の話を聞け! いや、聞いてください、お願いしますから」
ゼッケンは涙ながらにそう語った。
話を聞くのも面倒そうだが、この男も面倒そうだと俺は思った。
~5章のあとがき~
思ったより長くなってしまいました、5章、ようやく終わりました。
後味はいいような悪いような感じですね。
リーリウム国。
エリエールとブックメーカー。
そして、ゴブリン王。
何か重要そうなキーワードをそのまま残していますし、2つ目に見つけた72財宝の秘密もまだ語られていませんが、ここからは日常編です。
まずはコーマと鍛冶ギルドのお話。
コーマはいろいろと好き勝手やってきましたから、ツケが回ってきました。
あと、シリアス展開が続いて書けなかった、キャラへのQ&Aもやってみたいなと思っています。




