エピローグ & はじまりの話5
~前回のあらすじ~
エントを倒した。
目を覚ましたら、知っている天井があった。裸電球のような魔力灯、タタミの上に敷かれた羽毛布団。
「道具作成」と日本語で書かれた掛け軸に、アルティメットポーションが涌き出る水瓶と、普通の水が出る水瓶。
そして折りたたまれた卓袱台。
そんな部屋を見て、俺は笑みをこぼした。
終わったんだな。
掛布団をのけて上半身を起こすと、扉が開いた。
「コーマ、起きたの?」
「ルシル……あぁ、今起きた。俺、どのくらい寝てた?」
「二日よ。竜化第二段階の影響ね」
ルシルは戦いが終わった後、倒れた俺を見つけて持ち運び転移陣を使って魔王城に戻ったそうだ。
クリスには、ルシルから、俺が目を覚ましたら連絡するように伝えたそうだ。
あとで連絡しないとな。
今回はクリスに俺の竜化についてもばれてしまった。面倒なことになったな。
でも、戻ってこれた。
もちろん、まだわからないことはいろいろとある。
ドリーがユグドラシルの種を持っていたのは本当に偶然なのか?
結局、ドリーがエントの妻だったのかどうかは謎のまま終わってしまった。
そして、それを確かめる術は俺には残されていない。
だけれども、そうであってほしいなとどこかで思った。
「カリーヌはどうしてる? あいつ、ドリーの友達だったから泣いてなかったか?」
「カリーヌは、ドリーとエントの灰を集めて、畑の横に小さなお墓をつくってたわよ。でも、泣いてなかった。ちゃんと受け止めてた」
「そうか……」
強いな。
そう思った。
ブックメーカーがリーリーウム国の地下の転移陣の先にいた理由も聞きそびれたし、エリエールにも、俺のことをどこまで知っているのか聞かなければいけない。あと、ユグドラシルの種――72財宝の一つのそれは再び入手できるのだろうか?
それもわからないままだ。
「ユグドラシルの樹はどうなったんだ?」
「そのままよ。ただし、リーリウム国はユグドラシルを聖樹として守り続けるみたい」
「そっか。それがいいな」
「それで、守られる前に、これだけ持ってきたわ」
ルシルはそう言うと、魔王城の外から大量のアイテムを持ってきた。
ユグドラシルの枝だ。
確かに、これはレアアイテムだから、持ってきてくれたのはありがたい。
これさえあれば、ユグドラシルの杖を作り放題だしな。
「そうだ、ルシル! これを使ってみてくれ」
俺はそう言って、アイテムバッグから、戦闘中に作り出したユグドラシルの杖を取り出してルシルに差し出した。
「ユグドラシルの杖だ。強大な力を与えてくれるアイテムらしい。これさえあれば、ルシルは元の姿に戻れるんじゃないか?」
「うん、試してみるわね」
ルシルは静かに微笑み、杖を受け取った。
すると、杖が光りだす。
力を与えてくれる杖……それがあれば、ルシルは俺を封印したまま元の姿に戻れるんじゃないか?
そんな期待があった。
そして、期待通り、ルシルの身体がみるみる成長していく。
小学生くらいの見た目から、中学生くらい、高校生くらいと成長していき――そしてもうすぐ、俺と初めて出会った時の姿になる――そう思った。
そう思った時、杖にヒビが入った。
次の瞬間、杖が粉々に砕け散り、ルシルも元の姿に戻った。
「やっぱりダメね。コーマの封印にまわすための力が、杖の持つ力を上回ったの」
「それじゃ、数を増やせば!」
「ダメよ。杖を複数持っても、1本ずつ壊れていくだけね」
そうか……ダメか。
俺は小さく息をもらした。期待していなかったといえばウソになる。72財宝の一つと言われる強大な力があれば、もしかしたら――そう思っていた。やはり、ダメなのか?
そう思った時、俺の目に、あるものが飛び込んできた。
ルシルが持って帰ってきた枝――そこについていた葉っぱだ。
数百枚はある。
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ユグドラシルの葉【素材】 レア:★×7
強大な力が込められた葉。
伝説の薬の材料にもなるという。
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その説明の通り、エリクシールの材料にもなるユグドラシルの葉。
だが、それ以上に俺はそこから作れるアイテムに驚いた。
大きくレア度を下げてしまうアイテムだ。
だが、それ以上に俺が追い求めていたアイテムだった。
アイテムバッグからポーションを取り出し、思わず叫んでいた。
アイテムクリエイトと。
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魔力の妙薬【薬品】 レア:★★★★
一時的に魔力を50%増加させる薬。効果は1時間。同じ薬による重複効果はない。
魔法使いが使えばまさに鬼に金棒。癒し魔法の効果も上がる。
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そして、そこから魔力の超薬が作れる。さらに魔力の霊薬、魔力の神薬が。
これさえあれば、ルシルの魔力を底上げすることができるじゃないか!
その事実に俺は興奮した。
今度こそ、ルシルを元に戻す手段が見つかった。
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Episode06 に続く。
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~はじまりの話5~
ルシルの対等なパートナーになったが、俺のやることは変わらない。
ルシルに強大な力を与えると言う72財宝を集め、彼女を元の姿に――いや、それ以上にする。
そう決意はしたはいいが――
「見事に全部なくなっちゃったわね。魔石2個と、死者の杯だけか」
ルシルが嘆息を漏らした。
そう、魔王城のあった場所はもはや何もない。
あるのは、ルシルの父の魂が封じられていたという金色の杯だけだ。
「悪い、俺のせいで」
「ま、別にいいんだけどさぁ……コーマに渡すはずの道具もなくなっちゃったし」
あぁ、そういえばルシファーが集めていた道具を俺が使う約束だった。
それが使えないのはさすがにつらいな。
「でも、それ以上にお父様の力がコーマの中にあるはずだから、それで頑張ってもらうしかないわね」
「え? そんな力?」
「そうよ。お父様の力の9割9分9厘は封印したんだけど、僅かに残っちゃって。魔力がパンクしないように抜け穴としてコーマから常に一定量の魔力が噴き出しているの。それを使って新たな力にできるはずよ」
「新たな力って、あの時の破壊の力か」
確かにあの力なら0.1%でもかなりの力が得られるはずだ。
そう思い、俺は試しに地面を殴ってみた。
――素直に言う。ものすごく痛かった。
「何してるのよ、言ったでしょ、新たな力にできるって。今はただ魔力が溢れているだけで、何の力もないのよ」
「そういうことは早く言ってくれ。で、どんな力が手に入るんだ?」
「それこそ、想像力次第よ。私みたいな魔法でも、腕力でも、やろうと思えば空を飛ぶことだって敵の位置をしることだってできるわ。まぁ、魔力は0.1%だから、とんでもない魔法とか力とかは無理でしょうけど」
「そうか……想像力か」
アイテムを集めるなら、やっぱり鑑定眼は必要だよな。そういう力が得られるなら得ておこう。
あとは――、
「なぁ、ルシル。俺の世界の話なんだがな、ジャガイモから作ったお菓子に、カードがついていて、それを集めて楽しむことがあったんだ」
「へぇ、どんなお菓子? やっぱり甘いのかしら?」
「それはまた今度作ってあげるけどさ、そんなカードがあったとして、誰が一番簡単にカードを集められると思う?」
「そりゃ、お金持ちでしょ。お菓子を買い集めたらいいんだから」
俗にいう大人買い。確かに、そうして買い集めたら誰よりもカードを集められると思うだろう。
だが、それは間違いだ。
「いや? 一番簡単に集められるのは、カードを作ってる人だ」
「それで、何を言いたいの?」
「つまり、アイテムを作り出す力があれば、72財宝だって作れるんじゃないか? 俺はそう思うわけだよ」
「え……なんか地味っぽい」
地味言うな!
そういうわけで、破壊の力を俺に授けたルシファー。
今度はその力で、俺にアイテムを創造する力をくれ!
創造する力を想像する。
次の瞬間、俺の脳裏によぎったその言葉。
これから俺が叫び続けるであろう魔法の言葉を唱えていた。
「アイテムクリエイト?」
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はじまりの物語6 に続く。
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