数の力は暴力的で
~前回のあらすじ~
ベリアル&グリューエル退場
やばい。
ヤバすぎる。グリューエルとか名乗る謎の少年によりベリアルが連れていかれた。
いや、もともとベリアルが死んでいる可能性も考えて、一人で戦うことすら考えていた。だから、いまさらベリアルがいなくなったからといって――やっぱりきつい。
またもや天井を、壁を、崩落した岩を貫き根っこが俺を襲ってきた。
「くそっ、炎よっ!」
最後の一発を使い炎で迫りくる根っこを焼き払いながら、洞窟の入り口付近へと走った。迷宮としての機能は完全に失われたのか、魔物は一匹もいないし、光源もない。植物の蔦も全部消えている。
俺が逃げていると後ろから木の根が来た。
くそっ、マジか。追いつかれる。
そう思った時だった。前方から何かが――ってスライム!?
大量のスライムが前方から来た。
俺が放ったスライムかと思ったが、それだけじゃない。
野生のスライムまで混じっている。
いや、野生のスライムじゃない――あいつらは、俺の配下のスライムだ。
一体――何が。
そう思ったら、スライム達は木の根っこにまとわりついた。
あれは――HP吸収!?
「コーマお兄ちゃん!」
「カリーヌ!? 何でここに!? ていうか、逃げるぞ! 走れ!」
まさか、俺を助けに!?
「ドリーちゃんを探しに来たの!」
「あぁ、そうか」
お兄ちゃんは別に寂しくない。
「あと、エントの弱点を一つ、マユお姉ちゃんが思いついたの」
弱点!? マユが?
「エントは植物なら、水をなくせばいいんじゃないかって。だから、みんな連れてきたの」
「みんな?」
そう聞いたとき、奥から出てきたのは――津波……じゃない、スライムだった。
そう、俺の配下のスライムだ。
でも、なんであんなに?
「みんなの協力が欲しいから、アーちゃんに作ってもらったの」
「……あぁ、納得」
アーちゃん……大天使スライムは、俺がアルティメットポーションとスライムの核を合わせて作った人工スライムだ。100匹くらい作った。
それほど便利な魔物だし、アルティメットポーションも余ってたからな。
大天使スライムの回復力は強大で、普通の人間なら腕の欠損くらいなら一瞬で回復できるが、スライムには強すぎた。
一瞬でスライムを破裂させ、さらに回復――結果、大量に分裂することになる。
スライム達には、俺だけではなく、ルシルや、コメットちゃんやタラ、マユにカリーヌの言うことは聞くように言ってある。だから、そんなでたらめなことをしたんだろう。
スライムの波は俺を避けてエントへと向かった。
「みんな! コーマお兄ちゃんを守って! エントお爺ちゃんの水を吸っちゃって」
お爺ちゃんって……。
でも、逆効果じゃないだろうか?
逆にスライムを吸収されるんじゃ。
「マユお姉ちゃんが言ってたの。スライムは浸透圧の違いで、ウォータースライムみたいな特殊なものを除き、植物の水を逆に吸い上げるんだって」
でも、そんなの100匹や1000匹いたって――
そう思ったら、通信イヤリングが鳴った。
『コーマ、大変! さっき持ち運び魔法陣が開いて――』
「あぁ、そこからスライムとカリーヌが出てきたんだろ!」
『そう! 外は大変なの! 早く来て!』
大変?
「カリーヌ! 逃げながら教えてくれ! 一体、スライムを何匹作った!?」
「んーと、2時間くらい前に作り始めたばっかりだから……わかんない。とりあえず、ずっと作っておいてって言ってるから」
……!?
「大天使スライム何匹に!?」
「全員だよ」
……1匹のアークエンジェルが1回50匹のスライムを作る。10秒で1回とします。
さて、100匹のスライムが2時間に作るスライムは何匹でしょう?
A:100×50×2×3600/10=3600000。
つまり、360万匹のスライムが、ここにきている!?
はははは――っ、そんなバカなことがあるか。
スライムの洪水は留まることをしらなかった。
なんでコメットちゃんは止めなかったのか?
そんなの決まってる。
「凄いアイテムチートだな」
塵も積もれば山となり、スライムも群れたら海となる。
この時、ユグドラシルを無数のスライムが取り囲んでいると思われた。
――リーリウム国のみんなはこの世の終わりだと思ってるだろうな。
なんて思ってしまった。
でも、こんなんで勝てるほどエントが甘い相手じゃないことは、俺は十分わかっているつもりだ。




