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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode05 緑の牢獄

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夕日に向かって出陣する

 謁見の間に出ると、またもや事件が起きていた。

 血だまりにリーリエ女王が沈んでいて、医者が輸血をしていた。


……………………………………………………

輸血キット【魔道具】レア:★★★★


血液を流し込むと輸血用血液に変わる。

輸血用血液は、全ての血液型に適合する。 

…………………………………………………… 


 へぇ、便利な魔道具があるんだな。

 なんて感心する。

 これは俺も持っていない。


「今度は何があったんだ?」


 リーリエ女王の周りには、タラ、エリエール、イシズさんなど事情を知っているであろう人もいた。

 だが、あえてこの事件の最重要容疑者であろう(血が全て鼻から流れ出ているところを見ると、本当は事件でもなんでもないんだろうが)クリスに訊ねた。


「あ、コーマさん……えっと、リーリエちゃん、私の胸を触りたいと言ったので、ちょっとだけ触らせてあげたら……」

「あぁ、なるほどな」 


 相変わらず、女王の姿と変態の姿のギャップが激しい人だ。

 ただ、何でもしていいと言われているのに、胸を触るだけでいいなんて、本当はかなり純情なのかもしれない。


 なんて思ったら、純情という熟語に怒られた。


「クリス、友達は選んだほうがいいと思うぞ」

「私も、最近、ちょっとそう思います」


 乾いた笑いでクリスが呟くように言った。

 ちょっと、と言えるあたり、クリスを尊敬するわ。

 ルシルも引いてるぞ。


「あぁ、タラ。これ持ってみてくれ」


 俺はアイテムバッグから炎の剣を出して渡す。


「コーマ様、場内での剣の帯刀は――いえ、非常事態ですね」

「そういうこと。クリスも」


 俺はクリスにも鞘に入れてある炎の剣を渡した。


「とりあえず、火属性の剣だ。本当は火属性の斧にしようかと思ったけど使い慣れてない武器よりはこっちのほうがいいだろ」

「…………!? これ、魔剣ですよね!? コーマさんが作ったんですか?」

「あぁ、苦労したぞ」

「苦労したというレベルじゃないですよ。なんでこんな剣をあの一瞬で作ったんですか!?」


 剣を作るのは本当に一瞬だったぞ。

 あの時間の9割は斧作成だ。


「これは私からよ」


 予定通り、ルシルがクリスに渡したのは、炎の杖だった。

 俺がその杖について説明する。


「雷の杖の炎バージョンだ。合言葉は「炎よ」だから、間違ってもここで使うなよ」

「一本だけなんですか?」

「あぁ。材料の都合でな」


 雷の杖の時は数十本作ったからな。1本だけだと不安になる気持ちはわかる。

 ちなみに、数分の間を置いて、「もしかして、あの雷の杖を作ったのはルシルちゃんだったんですか!?」と、ようやくルシル経由でアイテムを渡した理由、こちらの意図が伝わった。

 当然、雷の杖も炎の杖も作ったのは俺なのだが、一応、俺の役職は鍛冶師だからな。

 裏のウソ設定で、俺が手に入れている魔道具は全てルシルが作っていることになった。

 ルシルのウソ設定は、凄腕の錬金術師で、俺の師匠だ。

 あとでそのあたりの設定を無理のないように書き留めておかないとな。


「あと、これは最高級のポーション3本と力の妙薬だ。使わなかったら返せ。ただし、使うときは躊躇うな。金はいらないから」


 そう言って、アルティメットポーションと力の妙薬を渡す。


「コーマさんらしくないですね……本当に無料でいいんですか?」

「それくらい今回の相手はヤバイってことだ。下手しなくても一角鯨以上の化け物だぞ」

「……そうですね、わかりました」


 クリスは真剣な表情で4本の薬瓶を見ると、静かに頷いてアイテムバッグの中に入れた。


「もうすぐ陽が沈む。勝負は明日だな」

「……そうですね」


 本当は今すぐにでも戦いに行きたいんだろうな。

 できるだけ早く国民の不安を拭い去りたい。


 でも、夜の戦いが危険なのは、クリスもわかっているようだ。

 俺の提案をすぐに受け入れた。


「じゃあ、俺達は宿屋に荷物を置いたままだから、宿に帰るわ。タラ、ルシル、途中まで送っていくよ」

「うん、お願い」

「わかりました」


 俺達三人は謁見の間を出ようとし、  


「……コーマさんっ!」


 後ろからクリスに呼び止められた。

 何事だろうと後ろを振り返ると、クリスは、何を言っていいのかわからないのか、口を開いたまま固まっていた。

 そして――、


「なんでもないです。明日、頑張りましょうね」

「ああ、また明日な」


 俺は笑顔でそう答えた。

 明日が来るとしたら、それは全て終わった明日だ。


 王城を出て、広場に出たところで、俺は西の空に伸びるエントを見る。夕日に映えるそのシルエットがとても恐ろしい。

 まだ死んでいないようだ。

 ただ、場所が変わっていないところを見ると、まだベリアルと戦っているんだろうな。


「ベリアルとは今回は敵対したくないな」


 だが、敵の敵は味方とは限らない。

 最悪、「俺様の獲物に手を出してるんじゃねぇ」と襲い掛かってくる可能性だってある。


「ルシル、例のこと、頼むぞ」

「わかったわ。じゃあ、行きましょ」


 そして、俺たちは歩いて森へと入って行き、誰もいないところまで移動し、そして飛んだ。

 エントの方角に。



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