本の集まる地下迷宮
~前回のあらすじ~
地下の書庫へと向かいました。
謁見の間の奥に、おそらく隠し扉があったのだろう。
そこが開かれており、地下に続く階段があった。
螺旋状に続く階段を下りていく。どのくらい降りただろうか?
正確な場所はわからないが、恐らく、地下2階か3階か。
魔力灯の光に照らされながら階段を下りていく。
そして、ようやく見えた扉はすでに開け広げられていた。
だが、そこも書庫ではない。
そこにあったのは、転移陣だった。
俺とルシルは無言で転移陣を潜る。
その先にあったのは――書庫などではなかった。
本はある。
本はあるんだが――、
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アイテム図鑑【魔道具】 ★×5
手に入れたアイテム、鑑定したアイテムが自動記入される。
レア度1未満のアイテムは記入されない。
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あれ? どこかで見たアイテムが。
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スキル図鑑【魔道具】 ★×5
覚えたスキル、鑑定したスキルを自動記入される。
ユニークスキルは記入されない。
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おわ、なんか見たことのないアイテムも。
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魔物図鑑【魔道具】 ★×5
倒した魔物、名前を調べた魔物が自動記入される。
瘴気から生み出される魔物のみ記入される。
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なんと、コレクター魂を刺激するアイテムが。
って、ここはなんなんだ?
特にアイテム図鑑の量が半端ない。
「よっ! 君たちがコウマくんにルチミナちゃんだね」
待っていたのは、クリスでもタラでも、エリエールでもなく……青い毛の若い男だった。
褐色肌の爽やかイケメンという感じだ。
「あんたは? ……じゃない、なんでルシルの名を知っている!?」
ルチミナ・シフィル。略してルシル。
俺も今の今まで忘れていたルシルの本名は、クリスやエリエールはもちろん、タラも知らないはずだ。
それに、さっきこいつが言ったのは、コーマではなく、コウマって呼ばなかったか?
確かに俺の本名は光磨、コーマじゃなくコウマが正しいんだけど。
でも、そんなの俺が唯一、自分の名前を伝えたルシルでさえも知らないんじゃないか?
こいつは俺と初めて会った時から「コーマ」と呼んでいた。
「僕はなんでも知っているよ。君が異世界から来た事も、魂の杯によって闇の力を受け継いだこともね」
「あんたは一体何者なんだ」
「僕の名前はブックメーカー。そう呼ばれている。本名はないからそれでいいよ。ようこそ、コウマくん、ルチミナちゃん」
「だから、なんでルシルの本当の名前を知っているんだよ!」
「僕はなんでも知っているんだよ。例えば君の本名が火神光磨だってことも」
……なんだ? 何かがおかしい。
会話がかみ合っているようでまるでかみ合っていない。
「もしかして、今のもすでに言ったことかな? だとしたらごめんよ。僕は何でも知っているけど何もしらないから」
ブックメーカーはそう語った。
なんでも知っている? そして、何もしらない?
「コーマ様、来られましたか。書庫はこちらですわよ」
そう言われて行ってみると、奥にはようやく書庫らしい場所があった。
多くの本……というより、そこはもはや本の迷宮と言ってもいい。
「……いや、本当に迷宮なのか?」
天井を見ると、うっすら光っている。
迷宮の天井と似ている。
クリスとタラが本を流し読みしている。
文章の内容を確認しているというよりは、ただ単純にエントの文字を探しているのだろう。
彼女達の動体視力をもってしたら、その文字列を見つけるのも容易いかもしれない。あまりにも集中するあまり、俺が来た事には気付いていないようだ。
「まさかこんな場所にあるとは思ってもいませんでしたわ」
「あぁ、まさか城の地下にこんな場所があるとはな」
「……いいえ、ここは城の地下ではありませんわ」
城の地下じゃない?
あぁ、そっか。転移陣で飛んだもんな。
「そうだった。じゃあ、ここはどこなんだ? 迷宮……まさか」
「ええ、ここはラビスシティーから繋がっている迷宮ですわ。しかも……」
エリエールはそう言って、脇にある扉を開けた。
その扉には普通の迷宮のような場所が広がっていて、そこに木の人形のような魔物がいた。
そこに魔物がいるのは、俺も索敵スキルによりわかっていたから驚かない。
そして、エリエールはその木の人形を一薙ぎして殺した。
すると……魔石と一緒に木の箱が残る。
「……その箱……まさか」
「ええ、そのまさかですわ」
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迷宮ボックス【魔道具】 レア:★★★
迷宮が放つ魔力により固く閉ざされた箱。
迷宮の外に持って出ると蓋を開けることができる。
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そうか……ここはパーカ迷宮なのか。
ということは、あのブックメーカーと名乗る男は……もしや。
「もしかしなくても、ここの魔王ですわね」
俺がぞくりとした。
魔王の存在はあまり知られていない。
俺がギルドに報告したのは一角鯨が魔王だということで、人の形などしていると思われていないはずだ。
「……魔王? どうみても人間だろ?」
ここでの俺のポーカーフェイスぶりは見事だと思った。
だが――、
「隠すこそはございませんわ、コーマ様。あなたが魔王だということも、わたくしは存じておりますから」
……ブラフ……とかじゃないよな。彼女は明らかに俺のことを魔王だと知っている。もしかして、エリエールもまた――、
「…………それってまさか」
「いえ、わたくしはただの人間ですわよ。そして、こういえばよろしいかしら?」
彼女は笑顔でこう言った。
「わたくしは、あそこにいるブックメーカーのなりそこないなのですの」
…………え?




