表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode05 緑の牢獄

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/742

彼女が守る大事な種

~前回のあらすじ~

迷宮の奥で、木の少女と出会った。

 緑色の髪の少女。この髪の色はメイベルを思い出すな。

 大きくはないが、控えめというほどでもない胸に引き締まったウエスト。

 何より、一番の問題は真正面から見える下腹部。


 手足が縛られた状態でも着れる服か。

 そういえば、前に作ったビキニタイプの水着を取り出し、それを樹の少女に付けた。

 紐で止めるタイプなので、これなら問題ないのだが……俺がつけると真正面で見てしまうことになる。


「カリーヌ、これを彼女につけてくれ」

「お手間をかけます」


 俺が恥ずかしそうにするから、彼女も少し恥ずかしそうに言った。

 流石に目を完全に離すことはできない。

 彼女に水着がつけられたのを確認すると、俺はゴホンと呼吸し、


「俺の名前はコーマ。一応、魔王だ」

「ルシルよ。コーマとは……ねぇ、私とコーマの関係ってどう表せばいいの?」


 ルシルが困ったように言ってきた。

 本来ならそんなのどうでもいいと言うべきなのだろうが、このあたりはきっちりさせておきたい。

 

「ルシルは俺の御主人様で、俺の配下だ」

「複雑なのですね」


 木の魔王は考えるようにそう言い、


「私の名前はドリーだそうです」


 そう名乗った。

 ドリーか。その名に、俺は彼女の種族に対し、ある可能性を考えた。


「ドリアード……なのか?」


 ドリアード。樹の精霊。美しい女性の姿をして現れる。

 イメージ的にはいい人のイメージがあるが、正しい知識はわからない。

 人魚にしても、いいイメージと悪いイメージの両方があるからな。日本での印象は関係ないかもしれない。


「ドリアード、すみません。ただ、私が知っていることは、私が魔王であること。そして、この種を守らないといけないということです」

「その種を?」


 俺はその種を見つめた。

 種というには大きい。サッカーボールくらいある大きさの種。

 だが、その大きささえも、その種の正体を知れば小さく思える。


……………………………………………………

ユグドラシルの種【素材】 レア度:72財宝


世界樹とも呼ばれるユグドラシルの種。

種にも多くの魔力が込められている。

……………………………………………………


「ユグドラシルの種……72財宝か」

「え? ユグドラシル!? 72財宝!?」


 ルシルが驚き言った。


 死者の杯、魔剣グラム、友好の指輪。それともう一つ、手元にはないが在り処がわかっているあれ。

 それに加え、5つ目の72財宝……か。


 まさか、こんなところで見ることができるとは。

 ただ、種の状態で、素材として72財宝なのか。


 ユグドラシル……世界樹か。

 ゲームの中だと、その葉は死者蘇生の力を持つものもあるが。


「もうすぐなんです。もうすぐ、この子の魔力が溜まるんです」


 まるで、自分の子供を抱きかかえるように種を撫でる。

 魔力が溜まる……?


「この子は、ここで3000年も、4000年も前からここで待っていたんです。魔力が溜まるのを」

「……ドリーも一緒に4000年も?」


 俺はルシルを横目で見る。

 2700年生きている魔王の娘もいるんだから、不思議ではないよな。


「いいえ。一週間前からです。一週間前、この子に呼ばれてここに来ました。この子に力を借りて、私は魔王になったの。魔王になってしまったの」

「魔王になってしまった。まるでなりたくなかったような言い方だな」


 魔王になりたくないとしたら、簡単にこの迷宮を破棄してくれるんじゃないのか?


「魔王になんてなりたくなかった。魔王になったらみんなに狙われるから」

「……あぁ、忘れてた。そういえば、調査団……人間が――」


 俺が言いかけたところで、クリスからの通信が入った。

 通信イヤリングを取る。


『コーマさんですか! いました、調査団の人! 全員無事です! ただし、木の檻に入っていて、剣でも斬れないんです』

「あぁ、ちょっと待っててくれ、今、なんとかならないか頼んでみる」

『え? 頼むって誰にですか?』


 俺は通信を一度切り、


「ドリー。悪いが、今、捕まってる人を全員連れて帰りたいんだが、いいか?」

「彼らは私を……私達を守る子たちに危害を加えたので捕らえました」

「あぁ、なるほどな」


 とりあえず、俺はさっきルシルが作った転移魔法陣を敷く。


「ちょっと行ってくる。すぐに戻るから」

「え? コーマ、ちょっと」


 そして、俺は持ち運び転移陣の中に入って行った。


 気付けば、俺はラビスシティーにある、十階層へ通じる転移陣の上にいた。

 転移石って便利だなぁ。


「コーマ様、帰ってこられてたんですか?」


 そう声をかけてきたのは、緑のショートヘアの美少女エルフ、メイベルだった。

 多くの商品を持っている。仕入れの最中だったのか?


「ん? おぉ、メイベル、久しぶり! ちょうどいい! この布を、魔法陣を上にして、倉庫に貼っておいてくれないか? できるだけ急いでくれ! 人助けだから!」


 俺はそう言って、持ち運び転移陣を丸めてメイベルの荷物の上に乗せた。


「え? え? コーマ様!?」

「悪い、じゃあな!」


 俺はそう言うと、再び転移陣の中に。

 転移石を使って元の場所に戻れた。


「もう、何やってるのよ、コーマ」

「悪い悪い」


 俺は笑いながら足元にある持ち運び転移陣を丸めてカリーヌに渡した。


「カリーヌ、これをさっき会ったクリスのところに持って行ってくれないか?」

「うん、わかったよ」


 カリーヌはそう言って、持ち運び転移陣を持って行った。

 ……クリスの場所はわかるよな?


「とりあえず、あれを使って、調査団を遠くに飛ばすから」

「そんな、勝手に……」

「だって、ドリーは調査団の人間を殺すつもりなんてなかったんだろ?」


 もし殺すつもりなら、食糧を与えたりしない。

 違うか? と尋ねたら、彼女は何も答えなかった。


「なぁ、ドリー。俺と一緒に来ないか? こんな迷宮なんて捨ててさ。結構楽しいぞ。コメットちゃんとかタラとかとバカやって生きていかないか?」

「……ごめんなさい」

「なんでだよう」


 俺が訊ねると、


「捕らわれているのは、私だから」


 ドリーは言った。


「私はここから動くことができないから。ここは私の牢獄だから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ