木の牢に入るは木の魔王
~前回のあらすじ~
カリーヌがどこかにいった。
「カリーヌ! どこにいる!?」
叫べども、カリーヌの姿はどこにもない。
どこにいったんだ?
敵は俺達が来た方向から湧いて現れたから、奥へと進んだ?
いや、それだけじゃない、俺が通れなかった木々の隙間もカリーヌなら進むことができる。
……仕方ない、あの手を使うか。
俺はアイテムバッグから、彼らを呼び出した。
スライム集団。
俺が作り出したアイテムのスライム、大半は迷宮の中に配置したが、一部はアイテムバッグの中で待機してもらっていた。
といっても、アイテムバッグのなかは時間が経過しないので、彼らにとってはついさっき入れられて、すぐに出された感じなんだろうが。
スライム5匹を含め、大量のちょっと変わったスライム、計50匹を出していった。
クリスが何なのですか? と聞くので、カリーヌと同じように失敗した料理で、元は料理だからアイテムバッグのなかにも入れられるんだ、とウソを説明。
本当はスライムの核から俺が作り出したスライムたちだ。
種類は魔法生物となっている。
「お前等、カリーヌを探して、ここに戻ってこい! 魔物に遭遇したら倒せるなら倒す、倒せないなら逃げる!」
「待ってください、コーマさん! その命令に調査団の人の捜索も――」
「以上だ! GO!」
「コーマさんっ!」
クリスの声を聴かず、俺はスライム達に行くように命じた。
スライムたちは俺の合図とともに、スライム達は後ろに前に走り出した。木々の僅かな隙間を入り込むスライムもいる。
「よし、俺達も奥に行くぞ」
「待ってください、コーマさん! なんで調査団の人の捜索をしてくれないんですか」
クリスが俺の前に回り込み、行く手を阻む。
だが、俺はそのクリスの肩を横に押して前に進みながら言った。
「俺は調査団全員の命とカリーヌの命を天秤にかけたら、カリーヌの命を取った。僅かな時間のロスが危険につながるかもしれない」
「人の命は平等ですよっ!」
クリスが言い切る。
はじめてだ。
はじめて、クリスの勇者としての正義論にイラっときた。
だから、俺は無視する。
「ルシル、カリーヌの魔力の波動とかってわからないか?」
俺がそう尋ねたら、ルシルは俺の横に駆け寄り、
「わからないけど、この迷宮の魔物は植物よ。植物の魔物は水と親和性が高いの。カリーヌは水の塊のようなものだから、呼び寄せられたのかもしれないわ」
「呼ばれた……(魔王にか)」
クリスに聞こえないように小声で尋ねる。
「とにかく、最奥を目指しましょう」
ルシルはそう言って奥へ行く。
「ああ。ただし、危険だと思ったら脱出する。それだけは変わらないぞ」
「……わかったわ」
例えカリーヌが見つからなくても、と俺の内心を読み取ったのか、ルシルは伏し目がちに頷く。
俺にとっての第一は、ルシルの身の安全だ。
後ろを向くと、クリスがこちらを睨みつけながらも付いてきた。
「ルシル、魔石が20個ある。持っていろ」
さっき拾った魔石をルシルに持たせる。
この魔石があれば、ある程度の魔法は使えるようになる。
「わかったわ。それより――」
「あぁ、敵だな! 」
前方から、花の形のした魔物が現れたので、俺は轟雷の杖を握り、その杖を振るった。
※※※
怖い、怖い、怖い、怖い。
誰かが来る。私を助けてくれた植物達が死んでいく。
それを感じ取る。
怖い、怖い、怖い、怖い。
お願い、あの人達を追い払って!
私がそう願うと、近くにいる木が花が、根を動かして侵入者のほうに向かっていく。
そして、死んでいく。
倒されている。お願い、助けて。
「カリーヌを呼んだのは、お姉ちゃん?」
そう、声をかけられた。
なんで? ここには誰も、誰にも入ってこれないはずなのに。
でも、その声は聞こえた。
私がいるのは木の牢。
自分で作った、とても硬い植物の牢。
誰も入ってこれない、そのはずなのに。
そう思ったら、木々の隙間から水が漏れ出るように――彼女は現れた。
半透明の水のような女性。
「い……いや! 助けてっ!」
私はそう言って、赤い花の友達、ロサに頼む。
ロサは私のお願いを聞いて、半透明の女性に棘を飛ばした。
でも、その棘は女性の身体をすり抜けてとんでいった。
「大丈夫だよ、カリーヌは敵じゃないよ。お姉ちゃんに呼ばれてきたの」
「私が……呼んだ?」
「うん、助けて、助けてって。だから、カリーヌは来たんだよ」
半透明の女性――カリーヌはそう言った。
確かに、私はずっと誰かに助けを求めていた。
ここに来てからずっと、ずっと、ずっと助けを求めていた。
「あなたが私を助けてくれるの?」
「えっと、カリーヌは無理だけど、お兄ちゃんならきっとお姉ちゃんを助けてくれるよ」
カリーヌは笑って言い、そして私に尋ねた。
「お姉ちゃんはなんで根っこが生えてるの?」
「えっと、こうしないとみんなと繋がれないから」
「そうなんだ」
そう、私は人間じゃない。
ここに来て、私は初めて自分の正体を知った。
私は――魔王だから。
木の魔王だから。
そして、私はこの子を守らないといけないから。
だから、私は彼女に尋ねた。
「本当に……助けてくれるの?」
「うん、コーマお兄ちゃんならきっと助けてくれるよ」
このままでは絶対にこの子を助けられない。
だから、私は彼女にすがることにした。
お願い、助けて、と。




