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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode04 短編増殖

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星空は彼女の面影

~前回のあらすじ~

ラーメンはよく売れました。

 午後になっても客足は途絶えることはない。

 俺は学者風の男に捕まって、剣の説明をさせられていた。


「こちらの剣は鋼鉄という素材が使われています。炭素を僅かに含むことにより、鉄よりも強い素材に仕上がっています」

「……不純物を含むと強くなるのか……ところで、こちらの剣も鉄の剣なのか? 銀のような輝きを放っているが」

「こちらは鋼とは違い、ほぼ100%の高純度の鉄でできています。鉄から可能な限り不純物を省くことで、このように輝き、さらに強靭に、錆びにくく、また寒さにも強くなります」

「なんと、鉄にそのような性能があったとは……これは驚きだ」


 はい、俺も知りませんでした。

 鉄って不純物があったら強くなって、不純物がなければ弱くなるのに、さらに不純物を無くせば最高の素材になるとか、面白いよな。

 なんとなく、高純度鉄っていうのがレシピにあったから作ってみたら、できてみましたってだけの素材だった。

 鉄から一通りの装備や道具を作り終え、どうせ不純物のない鉄だろうとか思って期待せずに作ったら、思ったよりいい素材ができて驚いた。


……………………………………………………

高純度鉄のインゴット【素材】 レア:★★★★


不純物を可能な限り減らした鉄のインゴット

強靭であり、錆びにくく、熱の変化にも強くなった。

……………………………………………………


 ちなみに、この超高純度鉄、金のように延びやすい性質を持つため、叩いて延ばして鎧や盾にすることもできる。

 

「どのようにこの鉄を作ったのか教えていただけないだろうか?」

「すみません、鍛冶師の秘術としか、私達も知らされておりません。ただ、これを買って研究する分には自由にしていいと申しておりました」

「なるほど、ではこれらの二本の剣を頂こう」

「ありがとうございます。では、お包みいたしますね」

「いや、このままで結構。さっそく本国に帰り解析させてもらおう」


 超高純度鉄の剣は金貨10枚もする剣だったのに、男は迷わず購入して帰って行った。

 材料費銅貨1枚なのに、なんか悪いなぁ。

 でも、あの剣が普通に量産できるようになったら便利だろうな。


「コーリーちゃん、悪いんだけどクルトくんの工房から出来上がった薬を貰ってきてくれないかしら」


 メイベルから声がかかった。

 彼女しか聞こえないように俺は問いかける。


「クルトもう帰ってるのか?」

「ええ、コーリーちゃんが汁そばを作っている間に」


 そうか。まぁ、弟子の成長を見るのも師匠の役目だしな。

 俺が見ていたら緊張するかもしれないが、今は人畜無害な女の子。クルトのプライベートをのぞき見するか。


 不敵な笑みを浮かべ、俺はクルトの工房へ。

 もちろん、ノックすると、クルトから返事があったので、扉を開けた。


「はじめまして、今日だけ臨時で働くことになったコーリーと申します」

「クルトです……あ、よろしくお願いします」


 クルトは照れた様子で頭を下げた。うむ、ウブな反応だ。


「あの、メイベルさんから薬を預かってくるように言われたんですが」

「はい、あっちの箱に入っているものですけど、持てますか?」

「ううん、ちょっと重いけど運べますね」


 さっき、大男を持ち上げて失敗した経験がここで生きた。

 俺は今は可憐な女の子、ここで持っていくわけにはいかない。


「よかったら僕が手伝いましょうか?」

「いえ、クルトさんは今、解毒ポーションを作ってるんですよね。邪魔しちゃ悪いです」

「え? どうして解毒ポーションを作ってるってわかったんですか?」


 やば、毒消し草の粉末が入っているから、解毒ポーションを作っていると言ったんだが。

 考えたら、錬金術師でもない俺が作ってるアイテムを知っているのはおかしいのか?

 毒消し草さえわかったら解毒ポーションだって予想がつくだろう。

 むしろ、これはちょうどいいんじゃないか?


「実は、私、錬金術に興味があっていろいろ勉強していたんです。あの、もしよろしければクルトさんの作業見せてもらっていいですか?」

「あ、うん、大丈夫です」


 よし、これで堂々とクルトの成長具合を見ることができる。


「アルケミー!」


 クルトが叫ぶと、毒消し草の粉末とポーションの入った瓶が淡い光に包まれた。

 うん、速度が上がってる。だが、ここからだとちょっと瓶の中が見えにくいなぁ。

 俺は立ち上がり、クルトの座っている椅子の横に座った。

 アンちゃんが座ってもいいように二人掛けの椅子を用意したからな、俺が座っても余裕だ。

 よし、ここからならよく見える。


「あ、あの……」

「どうしました?」

「い……いえ、なんでもないです」


 クルトは何か言おうとしたが、口を噤んだ。

 もしかして、俺だとばれてないよな?

 ……うん、ここは女の子らしく、


「綺麗な光ですね……」


 そう呟くと、クルトも頷き、


「うん、僕もこの光が好きなんだ。僕がここにいる証明だから」

「……クルトさんがここに居る証明?」

「うん。僕は元々犯罪奴隷だったんだ」


 やば、語りモードに入った。あの話を二回目に聞くのは勘弁だ。


「……それ、重い話ですか?」

「うん、ちょっと重いかな」


 嘘つけ、重すぎるだろ。


「じゃあ話さなくていいと思います。大切なのは、クルトさんがここに居て、何をしてるかってことだから」

「……え?」

「だって、クルトさんは今、薬を作って多くの人の命を助けてるんですよね。なら、過去にどんな罪を犯したとしても関係ないですよ」


 会話を回避したいからってちょっと無茶なこと言ったかな?

 実際、クルトはきょとんと俺を見てるし。

 と思ったら、こいつ、笑いやがった。


「あはは、笑ってごめん。コーリーさんが、僕の師匠みたいなこと言うからさ」

「……クルトさんの師匠さんですか?」

「うん、僕の憧れの人だよ。あの人みたいになるのが僕の夢だから」


 俺みたいになりたい……か。

 お前の頑張りを一番傍で見てきた俺だから確実に言えることが一つある。


「きっと、クルトさんならなれますよ」

「……ありがとう」


 クルトは少し恥ずかしそうに俺に礼を言った。


 淡い光が消え、ポーションと毒消し草は、解毒ポーションへと姿を変えた。

 うん、速いし性能もよさそうだ。これなら抜き打ちテストも合格だ。

 途中で、ちょっとぎこちない部分もあったが、それも補って余る出来映えだしな。


「あ、そろそろ帰らないと店長に怒られちゃう」


 俺はそう言って立ち上がり、木箱を重そうに持ち上げて、


「じゃあ、クルトさん。また遊びに来ていいですか?」

「うん、いつでも来てください、コーリーさん……必ず待ってますから」


 こうして、俺は店へと戻って行った。

 そして、閉店時間。


「今日一日ありがとうございました。短い間ですが、とても楽しく働けました」


 俺がそう言うと、みんなから拍手された。

 その後、送別会を誘われたが、乗合馬車の時間があるからと断った。

 送別会の後に、そのままみんなでお風呂に入る流れになったりしたら困るからな。

 性転換物のお約束だが、メイベルに俺の正体を知られている以上、ここは涙を呑んで諦めよう。

 最初から考えていた言い訳だったが、それなら仕方ないと皆諦めてくれた。


「コーリーちゃん、これ。今日のお給料と、例のものです」


 風呂敷に入ったそれは、俺の着替えと性別転換薬だ。


「ありがとうございます、メイベル店長。とてもいい経験ができました(じゃあ、また明日な)」

「それはよかったです。故郷に帰っても頑張ってくださいね(はい、また明日お会いしましょう)」


 こうして、俺の一日女性体験は終わったのだが――


 間違えてそのまま魔王城に帰ってしまい、


「コーマ様、なんて格好をしてるんですか?」

「こ……コーマ、ぷぷっ、コーマ、そんな趣味があったの?」


 二人にいきなり爆笑された。

 くそっ、こんなことなら工房で着替えてくればよかった。


「うるせぇ、事情があるんだよ」


 俺は悪態をついて、上着を脱いでブラを外し……へぇ、こんな風に見えるんだ……男物の上着を着て、スカートの下からズボンを履いて、性別転換薬を飲んだ。

 ようやく男の姿に戻れたわけだが。


「でも、なんで二人とも俺だってすぐにわかったんだ?」


 そりゃ、ここに来れるのは俺くらいだけど、今まで誰にもばれなかったのに。


「もちろん、好きな人だからです! と言いたいんですが、匂いでだいたいわかりました」


 なるほど、流石はコボルトの魔人だな。

 でも、男と女って匂いが違うんじゃないか? そのあたりも嗅ぎ分けられるものなのか。


「じゃあ、ルシルも匂いで?」

「コーマだからよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」


 ……あぁ、そうですか。

 ありがとうございます。


 それにしても、どうするかな。

 パンツ……どこで男物に着替えようか。


   ※※※


「クルトお兄ちゃん、星空みてるの?」


 アンが話しかけてくる。

 僕はアンの頭を撫でて、「そうだよ」と呟く。

 星空……黒の中に輝く光を見ていると、笑顔の素敵な黒髪の彼女のことを思い出す。


「……コーリーさん」


 また会えるといいな。

~コーマはこんなスライムを作りました~


 スライムの核×高純度鉄のインゴット

……………………………………………………

アイアンスライム【魔法生物】 レア:★★★


鉄製スライム。磁石にくっつきます。

よく速そうだね、と言われるけど、とても遅い

……………………………………………………


コーマ「高純度鉄を使っても結果は変わらないか」

ルシル「……コーマってたまにバカよね」

コーマ「なんでだよ」

ルシル「不純物のない鉄を使っても、スライムの核が不純物だから意味ないでしょ」

コーマ「……あぁ、確かにバカだった……次回こそはもっとまともなスライムを」

ルシル「あ、あとがきでスライムは今回が最終回みたいよ」

コーマ「……まじか」


   ※※※


 ~超高純度鉄~


 超高純度鉄は、現在市販されている高純度鉄よりもさらに鉄の不純物を100分の1にまで減らした、現実に存在している未来の金属です。

 酸にも強く、錆びない金属で、日本で最初に作られたものです。


 現実に存在しているのに、なぜ未来の金属なのか?

 その理由は、その値段ですね。

 普通の高純度鉄ですら、1キログラム100万円以上するので、超高純度鉄はそれよりも高くなるのがわかりきっているからです。


 鉄は銅よりも安く、埋蔵量も多い金属です。超高純度鉄を安く作る方法さえ思いつけば、世界が変わることは間違いないですね。


 短編集は次回のエピローグで終わり。

 いよいよ、物語は本編に戻ります。

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