性別転換薬は危険な薬
~前回のあらすじ~
コーマは鍛冶師に向いていなかった。
魔王城。
タタミと卓袱台、あとは物をおく棚程度しかないこの部屋で、俺はアイテムクリエイトを連発していた。
最近、スライムばかり作っていた気がするので、今日は気分を変えて、変なものを作っていた。
ちなみに、ルシルは散歩中、コメットちゃんとタラは畑作業があって魔王城にはいない。
そのため、今は俺とカリーヌの二人きりだ。
「お兄ちゃん、何作ってるの?」
後ろからカリーヌが覗き込んでくる。
青色の半透明美少女だが、実はアクアリウスという種族らしい。
胸が大きく、俺の作った服を着ている。
水辺にいる精霊という伝承が伝えられているが、スライムから進化した稀有な存在だ。
「あぁ、ちょっと面白いものができてな」
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性別反転薬【薬品】 レア:★×6
飲むと男は女に、女は男になる薬。制限時間なし。
元に戻るにはもう一度性別反転薬を飲みましょう。
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とりあえず、四本作ってみた。
つまり、2回試せるというわけだ。
「へぇ、面白そう。カリーヌが飲んでいいかなぁ?」
「ダメだ、男にお兄ちゃんと呼ばれたくないし、呼ばれて変な性癖になったらもっと困るからな」
「ぶぅぅ」
怒っても飲まさないよ。俺はカリーヌのことを嫌いにはなりたくないからな。
こういう薬の実験にはクリスを使いたいんだが、同じ理由で彼女にも飲ませられない。
ルシルも同様だ。
というわけで。
「悪いな、仕事中に呼んで」
「いえ、主の命とあらばいつでも喜んで駆け付けます」
タラに来てもらいました。
俺は薬の効果を説明して、タラに飲んでくれないかと頼む。
タラは快く俺の実験に応じてくれた。
こいつ、見た目は美少女といってもおかしくないほど整った顔立ちをしているからな。
将来、ゴーリキのように厳つい男になるとは想像できない。
でも、今なら飲めばさらに美少女になるはずだ。
褐色肌、紫色の髪の美少女か。頭に獣の頭蓋骨を被っているのもまた魅力的かもしれない。
あとは可愛い服を着せたら……ん?
「やば、タラ、少し待っ――遅かった」
俺の目の前に、二つの大きなメロンちゃんがいた。小さな凸まではっきり見える。
タラ……いつも上半身裸だったのをすっかり忘れていた。
それにしても、タラ、本当に可愛い女の子になったな。長かった紫の髪はさらに長くなり、ミステリアスな感じの美少女だ。
ミステリアスなのに、上半身は完全にオープンだけどな。
でも、実験は成功だ!
「主……あまり見ないで下さい。恥ずかしいです」
「……恥ずかしいのか?」
もしかしたら、性格にまで影響がでるのかもしれないな。
俺はタラにもう一本性別反転薬を渡し、元に戻ってもらった。
うぅん、これはもう少し実験しないといけないな。
当然、女性は却下だ。女が男になるほどつまらないものはない。
とすれば、俺の知り合いで男は、クルトと……あれ?
クルトの他に俺と仲のいい人っていたっけ?
ルシル、クリス、コメットちゃん、メイベル、マユ、スー、シー、フリマの従業員、アンちゃん、レメリカさん。
あれ?
俺って男友達少なくね?
……誰かいないか?
ユーリはギルドマスターだし、知り合い程度。そもそも、あいつにはこの薬の効果は出ないだろう。
ハンクさんやセバシさんは商売上の付き合いしかない。
蒼の迷宮の人達もあれから連絡をとっていないし。
孤児院の子供……って子供に薬を飲ませられないし、面白くないだろ。二次性徴も向かえていないんだし。
後は誰かいたかな……ジョ……ジョ……ダメだ、男の知り合いは他にいない。
考えて、考えて、考えた結果、
「よし、クルトに飲ませに行くか」
俺はもう諦めて魔王城を出た。
男友達がいなくても、俺にはスライムという雌雄同体の部下が山ほどいるじゃないか!
※※※
「え、クルトいないのか?」
朝の七時。
クルトが工房にいなかったので、フリーマーケットの裏の倉庫に行ったところ、メイベルから聞いたのは思わぬクルト不在発言だった。
あいつ、いつも工房に引きこもるか、材料を買いに行くくらいなのに。
「はい。アンちゃんの学校の入学説明会へ行ってます」
「え? アンちゃんって、もう学校に行く年齢なのか?」
「学校は、早い子なら3歳から通っていますよ」
あぁ、そこは日本とは違うんだな。3歳って、保育園の年齢じゃないか。
でも、勉強をするのはいいことだな。一万円札先生……じゃない、福沢諭吉先生も言ってたもんな。
天は人の上にも人の下にも人を作っていないのに、不平等が生まれるのは、学問に励む人と励まない人がいるからだって。
うん、俺も学問をすすめよう。
となれば、出直すか。
「コーマ様、何かクルトくんに用があったのですか?」
「ん? あぁ、性別反転薬という男が女に、女が男になる薬をつ……仕入れたんだが、クルトに飲んでもらおうかなって思ったんだ」
「さらっとひどいことを言いますね……クルトくんなら飲んでくれるでしょうが」
ひどいって、ちょっと女になって男に戻るだけだが。
……ひどいのかな?
「それなら、私が飲んでみましょうか?」
「いや、メイベルが飲んでも美少年エルフになるだけで、男の俺からしたら面白くないからなぁ」
「美少年……それは私のことを美少女……と思ってくださってるんですね」
メイベルがちょっと嬉しそうに呟く。うん、まぁ、どういうわけか俺の周りの女の子は全員美女美少女揃いだからな。
「男の人に飲んでほしいのでしたら、ちょうどいい人がいますよ。その薬、私が預かってもいいでしょうか?」
「……ん? そいつはどんな男だ?」
「とても素敵な男の人ですよ」
メイベルが素敵というのならいい男なんだろうな。少し嫉妬してしまう。
もしかして、スーの父親の爺さんじゃないだろうな? 前にこの店に来たらしいし、女たらしだからな。
爺さんが婆さんになるところを見ても面白くないぞ。
「変身するところ見たいから、男の状態で連れてきてくれると助かるんだが」
「はい、かしこまりました。では薬を二本ともお預かりしますね」
メイベルはそう言って、薬を持って出て行く。
あれ? ここに連れてきてくれるなら薬を持っていく必要なかったんじゃないか?
「あ、コーマ様、少し時間がかかりますから、このジュースでも飲んで待っていてください」
メイベルはそう言って、液体の入ったコップを置く。
お、さすがは新オーナー。気が利いてるな。
って、すぐに出て行ってしまったため、また薬を置いていってもらうのを忘れた。
ま、ジュースでも飲んで待つか。
……あれ? なんか俺の今の行動……なんだろう、一瞬クリスの姿が脳裏をよぎったが。
ははは、まさかメイベルが俺を騙すなんて――
俺は笑いながら、ジュースを飲み――あぁ、やっぱりかぁ。
それはジュースじゃなかった。
「メイベルゥゥゥッ!」
自分の声にしてはやけに高い声で、俺は彼女の名前を呼んだ。
「ぷっ……お呼びですか? コーマ様」
「もう一本の薬を渡せ! 今すぐに」
「まぁまぁ、コーマ様。まずは自分の姿を見てくださいよ」
メイベルは笑顔で試着用の姿鏡を持ってきた。
その鏡に映されたのは……俺の服を着た見たこともない黒髪の美少女だった。
~コメットちゃんは畑でこんなものを作っていました~
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スラ芋【素材】 レア:★★
スライムの形をした芋。甘くておいしい。
スラ焼き芋は秋の風物詩。
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~ルシルは裏でこんなスラ芋を作っていました~
スラ芋×たき火
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スラ焼き芋【料理】 レア:★★
甘くておいしい焼き芋。スライムもみんなも大好き。
食べすぎるとおならが出ます。
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コーマ「…………」
ルシル「…………」
コーマ「とりあえず、スラ芋を作ったコメットちゃんに謝れ」
ルシル「うん……あとで謝る」
地下迷宮に突如として現れた芋虫は迷宮の壁に蛹を作った。
とてもでかい蛹だったので、俺は炎で燃やした。
とても香ばしい、甘い香りがした。
……もしもの話だけど、あの蛹が羽化したとき、世界が滅んでいたような気がするのは俺の気のせいだろうか?
いや、気のせいじゃない。
ルシル「これが本当の焼き芋(虫)ね!」
コーマ「お前はもっと反省しろ!」




