開店前の武器コレクション
~前回のあらすじ~
暗黒皇帝ギルフォーンを倒し、平和が訪れると思った僕。
だが、ギルフォーンは語った。私は闇の十六神将の一人にすぎないと。
そして、その十五人の神将は驚愕の事実を語る。
ギルフォーンは我々の中では最弱だ、と。
どうやら真の平和はまだ訪れないようだ。
僕の冒険はこれからだ!
みんな、あの世で見ていてくれよっ!
僕は相棒の酢ライムJr.とともに旅にでる!
「私がオーナーに? この店の?」
「そうそう。いやぁ、俺がこの店のオーナーだとバレたくないんだよね。いろんな意味で。でもさ、勇者権限とかでエリエールとかスーとかに普通にばれちゃうからさ、いっそのことメイベルにオーナーになってもらったほうが楽だなぁって」
「……それで、店の資産も全て私に?」
「そっちの手続きは既に終わってるよ」
まるで、ゴミはちゃんとゴミ捨て場に運んでおいたよ、というみたいに気軽にコーマ様は言った。
「あの、店の資産がどのくらいかコーマ様はご存知なんですか?」
「ん? あぁ……金貨2000枚くらい?」
「現金だけで金貨10万枚を超えています!」
……やっぱりコーマ様は何もわかっていなかった。
ちなみに、金貨10万枚のうち8万枚は冒険者ギルドに、2万枚は商工会ギルドに預けてある。
実は冒険者ギルドの全体預り金の50%を超える金額だという。
「ふぅん、ま、メイベルなら間違った使い方しないでしょ」
「そういう問題じゃないんですっ!」
はぁ。コーマ様は本当に無欲な人です。
これが、この人にとって最大の魅力であり、最大の悩みの種です。
例えば、私が奴隷である限り、私だけでなく店の従業員全員、命令があれば従わないといけません。
あまりひどい命令があればそれこそ冒険者ギルドから注意勧告があり、最悪処罰が下りますが、その、えっちな命令などはその範囲ではありません。
つまり、服を脱げとかそういう命令があれば私達は従わないといけないんですが、コーマ様はそんな命令をしないどころか、最高の住居をお与えくださり、さらに仕事に対してはお給金まで払ってくださってます。
また、鍛冶屋としても凄腕で、コーマ様が作った剣をはじめとしてその武器はオーナーコレクションとして店の主力商品となっています。
他にも、コーマ様がツテで仕入れたという薬や魔道具なども凄い売り上げを叩きだしていて、普通の感性ならまともに働くのがバカらしいと思えるほどです。
それだけの物を用意しているのに、
「金? あぁ、要らない要らない。まだ前にアイテムバッグを売った時の金が残ってるし。クリスからも金を返してもらえるし」
で済ませてしまう。クリスさんの借金の額は、彼女本人から伺いましたが、コーマ様が稼げる金額からしたら微々たるもののはずなのに。お金に無頓着というわけではないんだけど、お金そのものにあまり興味がないという感じの人だ。
「まぁ、店のオーナーの書き換えは終わったんだけどさ、オーナーが奴隷とかって格好つかないだろ? 奴隷をやめるかどうかは今晩にでも教えてくれたらいいから」
そう言って、コーマ様は店を出て行き、レメリカさんは演劇を終えた空き巣たちを連れて行きました。
一人残された私は……ただ呆然として……ポーションの消費期限のチェックを再開しました。
アンちゃんはよっぽど無理してたんでしょうね、劇が終わると同時にうとうととしてしまい、現在は部屋で寝ている。
空き巣も増えてきたことだし、アンちゃんとクルトくんも寮に移ってもらおうかしら。
さすがに倉庫の一室にずっと寝させておくわけにはいかないわよね。
「メイベルさん、ポーション20本と睡眠代替薬3本、あと、解毒ポーション2本、マナポーション1本です」
「え? もうできたの? ……もしかして、クルトくん」
「えっと、はい。睡眠代替薬を自分用に作って服用しました」
申し訳なさそうにクルトは言った。コーマ様はこうなることを少しは予想してくれたらいいのに。
真面目なクルトくんは睡眠時間を削ってまで調合をしている。マナポーションまで自作しているので、MPが切れることもなくなり、本当に休む暇がない状態だ。さらに文字の勉強をアンちゃんと一緒にしているから、本当に寝る暇もないだろう。
私達より割高のお給金を貰っているのに、最低限の生活費の他は、アンちゃんのための学資貯金と、研究用の材料購入に使っているし。
「あ、でも今日はアンと一緒に演劇を見て休みましたから、まだまだ働けますよ」
「あのね、クルトくん一人ですでに金貨2枚分の純利益を稼いでいるのよ……店に来てまだ1ヵ月なのに。どう考えても働きすぎよ」
「で、でも、師匠の昨日の売り上げが金貨40枚なんですよね」
「あの人と比べたらいけません」
コーマ様と比べたら、この世界の全ての鍛冶職人が首をつらないといけなくなります。
そもそも、なんで白金鉱石を仕入れた次の日にプラチナスピアが完成しているのか? とか疑問に思うことがあるくらいですし。
あと、変わった武器が多すぎます。
コーマ様が作った武器とその説明文を思い出し、私は嘆息を漏らしました。
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猫蛇羅死【剣】 レア:★★★
猫じゃらしのようによく曲がる剣。
獣、獣系の魔物に対して特効能力がある。
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釘バット【棒】 レア:★★
釘を打ちつけたバット。
殴られると痛い。見た目が凶暴。
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ドラゴンスレイヤー【剣】 レア:★×7
ドラゴンを倒した者が持つと言われる剣。
竜の牙が使われている強力な剣。
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金の斧【斧】 レア:★★★
金色に輝く斧。威力はない。
あなたが落としたのはこの斧ではありません。
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銀の斧【斧】 レア:★★
銀色に輝く斧。軽い破邪の力を持つ。
あなたが落としたのはこの斧ではありません。
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本当に無茶苦茶だ。釘バットのような本当になにこれ? という武器もあれば、猫蛇羅死のように使い方を選ぶ武器もあり、金の斧、銀の斧のような成金趣味の武器もある。
そして、本当に英雄しか持つことがないと言われる伝説級の剣もある。
「あぁ、翼竜を殺して手に入れた素材で作ったから、元手は無料だぞ。ラッキーだよな」
とコーマ様は語っていたけれど、竜の牙を加工できる人間なんて聞いたことがない。いるとしたら神匠と呼ばれる鍛冶師のドワーフくらいしかできないのではないでしょうか?
そんな人でも、特別な炉と長い時間が必要なはずです。
素材があるからといって楽に作れるものではないはずですが。
ドラゴンスレイヤーはすでに他国の将軍から金貨2000枚で買いたいと声がかかっていた。
剣一本の値段としては破格どころか、気がくるってるのではないかという金額だが、あの剣の値段としては妥当だと思う。
それほどまでに恐ろしい武器なのだ。
でも、結果、ラビスシティーのギルドマスターのユーリ様が金貨1200枚で買うことになった。
金貨800枚の損だが、その代わりに、貴重な素材を多く譲っていただいた。
コーマ様にそのことを話したら、「おぉ、アレキサンドライトじゃないか!」と喜んで、「え? 代金? あぁ、任せた」と去って行った。
本当にお金には興味がない人だ。
「クルトくん、お金は大事なのよ」
「えっと、はい。それはわかってます」
「そうよね」
でも、私はこうでも言わないと、私自身がおかしくなる。
だって、金貨800枚損しても、ギルドと橋渡しができるのなら、まぁ、いいか、って思っちゃったんだし。
はぁ……私、コーマ様の奴隷で幸せなのか、それとも幸せすぎるのか……そんなことしか考えていなかった。
コーマ様の奴隷じゃなくなるなんて……そんなこと。
そして、店はあと1時間で開店時間を迎える。
コーマは裏でこんなスライムを作っていました。
歯車(小)×3×鉄インゴット×スライムの核
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ロボスライムα【機械生命】 レア:★★★★
機械仕掛けのスライム。とても固いボディーを持つ。
α、β、γが揃うと超絶ロボスライムに変形合体する。
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コーマ「これだ、こういうのが欲しかったんだ!」
コメット「あれ、魔法生物じゃなくて機械生命なんですね」
ルシル「男の子ってこういうの好きよね。変形合体?」
コーマ「違う、そこじゃない! 三つ集めないといけないってコレクター魂がくすぐられるだろ!」




