思わぬ報酬の銀鉱石
~前回のあらすじ~
爺さんが元気になった。
湖の前のレストランで、俺達は待ち合わせて食事をとることにした。
一週間前に来たばかりのレストランだ。
俺が一番乗りで、次に来たのがクリスだった。
それにしても、クリスの奴は随分とやつれているような気がする。
「……クリス、大丈夫か? 精力剤飲むか?」
超精力剤じゃなくて、普通の精力剤な。俺が作った超精力剤は、飲めば一日どころか一週間は寝ることができなくなると、一度クレームが来たことがある。
通常の精力剤でも魔物から与えられる状態異常の衰弱が消すことができるが、デフォで衰弱を打ち消すとなるとあれくらいじゃないといけないと思って爺さんに渡した。
効果があったかどうかはわからない。
クリスは俺の出した薬瓶を見ると、苦笑して、
「……大丈夫です。食事をしたら治りますから」
「ていうか、あの後、サイモンとやらに文句を言ったんだろ?」
「え、ええ。でも、サイモンさん、私のためにウソをついていてくれたんです」
……は?
クリスは少し照れたように言う。
「私、実は落ち込んでいたんですよ。この前、蒼の迷宮で、コーマさんや、コーマさんの知り合いの薬師のクルトさんはアイランドタートルを治療して窮地を乗り切ったけど、私は何もできなかったと思って」
「いやいや、お前は立派に戦っただろ?」
「立派に戦っても結果が伴わなければ意味がない、そう思ってたんですよね」
そうだったのか。
全く気付かなかった。
確かに、あの戦いではクリスの活躍はかなり地味だったからなぁ。
しかも、ただ活躍できなかっただけではなく、あの戦いでは多くの死者も出ている。
真面目バカのクリスは落ち込んでも不思議じゃない。
「サイモンさんは、それを見抜いて、私に言ったんです。『考えても答えがでないのなら、今は身体を動かせ』って」
「……………………」
「『俺がウソをついたのは、お前は考えるより動いた方がいいと思ったからだ。実際、森から魔物が減って村人は大喜びだ』って言ってくれたんです」
「……あ、あぁ、そうなのか。で、もしかして、騙されたと気付いた後も魔物を倒し続けたのか?」
「騙されてたんじゃないって言ったじゃないですか。ラビスシティーに戻ったのもついさっきなんですよ」
「で、そのサイモンさんは?」
「私が集めた魔物の素材を持って、災害救助に行くと言ってました」
……あぁ、結果騙されたのか。
まぁ、クリスが幸せなら別にいいか。
そして、暫くしてスーとシーがげんなりした様子でやってきて、俺に詰め寄った。
「コーマ、パパに何を飲ませたんだ!?」
「……驚愕した」
そんな前置きで、なんでも爺さんが全快したと二人に連絡が来たことを俺に伝えられた。
そっか、あの爺さん元気になったか。
「ただの危ない精力剤だから気にするな」
「危ないって……まぁいいや。パパからお礼だってさ」
そして、俺は野球ボールくらいの石を受け取る。
俺が鑑定眼を持っていなかったらそれが何なのかわからなかっただろう。
「モリア銀だよ。昔、モリア迷宮で採れたそうだけど、今はモリア迷宮の鉱山が枯渇して、まぎれもない価値ある一品だよ」
「……あぁ、モリア銀、そうか、こっちでもそう呼ばれているのか、これ」
地球でもモリア銀と呼ばれていたな、確かにこれは。
真実の銀。その輝きは一度生まれたら決して黒ずむことはないという。
ドワーフとエルフ、二つの種族が愛した金属。
エルフの言葉で“灰色の輝き”を意味する名を持つ伝説の金属。
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ミスリル鉱石【素材】 レア:★×7
不純物を含むミスリルの鉱石。金の10倍の価値はある。
モリア迷宮でのみ取れるので、モリア銀とも呼ばれる。
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この鑑定の説明文は、おそらくモリア迷宮でミスリルが産出されたころの説明なのだろう。
今では金の10倍どころじゃすまないだろうな。
ファンタジー小説などでは、オリハルコンやヒヒイロカネ、アダマンタイト鉱石などのせいで貴重というイメージはないかもしれない。
だが、俺はあえて言おう。そんなわけがない!
「スー、もっと、もっとないの? ミスリル鉱石!」
「流石コーマだね。これの希少性はわかってるようだが、あいにくこれしかないよ」
「あぁ、一個かぁ……この大きさの鉱石なら、インゴット2個……くぅ、何を作ればいいんだろうなぁ」
夢は広がるばかりだ。
「なぁ、クリス、コーマって珍しいアイテムを見つけたらいつもこうなのかい?」
「珍しいアイテムだけじゃないですよ。たまに貝殻を見つけてもあんなテンションになっています」
「……面白い、コーマ様」
あぁ、本当に何を作ろう。
そういえば、メイベルが将来ミスリルリングを貰うのが夢だって言ってたな。
エルフは好きらしいもんなぁ、ミスリル。
なんでも、エルフの村では女王様しかミスリルを持っていないって言ってたっけ?
料理が運ばれてきた。
まずはエビのサラダだ。
俺が注文したものだ。
「クリス、こっちがシヴァエビだ。食べてみろよ」
「へぇ、これがシヴァエビですか。前に食べたのは確かバナナエビだったんですよね」
「あぁ」と俺は笑顔で頷く。「こっちのほうが高級品だぞ」と付け加えて。
クリスは「では、いただきますね」と言って、海老を食べた。
「やっぱり高級品だけあってバナナエビより美味しいですね」
「あ、悪い。これ、バナナエビだった。こっちがシヴァエビのサラダ」
俺が笑って言うと、クリスは「キーキー」喚いて怒るのかと思った。
だが――クリスは目をきょとんとさせて、笑って言った。
「へぇ、コーマさんも間違えることがあるんですね、意外です」
と返してきた。
マジか、こいつ、自分が騙されたことに気付いていないのか?
そして、クリスはシヴァエビのサラダを食べて、
「んー、こっちもおいしいです」
と満足気に言った。
これには、スーもシーも呆れている。
まぁ、俺も「バナナエビ」と「シヴァエビ」の味の区別はつかないんだけどね。
「悪い悪い。そうだ、ワインでも飲んでくれよ。俺は酒が飲めないから。スーとシーも飲むだろ?」
「へぇ、でも、この店は持ち込みいいのかい?」
「ああ、店長さんには許可を貰ってるからさ」
普通はダメだろうが。
俺は置かれていたグラスにワインを注ぐ。
そして――、三人はそのワインを一口飲み、
「「「まず!」」」
と呟いた。
「渋すぎるよ、なんだい、このワイン」
「コーマさん、だましたんですか?」
「……水を入れたら、すこしはマシになるね」
シーの提案で、三人はワインに水を入れて、
「あ、本当だ。水を入れたらそこそこおいしいわ」
「ワインの水割りなんて初めてですけどね」
「これはこれで……でも普通のワインのほうがいいね」
あぁ、これは失敗だったか。
ま、仕方ないか。
「悪い。じゃあ、前頼んだワインを飲むか。今日は俺のおごりだからよ」
何しろ夢のミスリルが手に入ったんだからな。
金貨の10枚や20枚使ってくれてかまわない。
楽しみだなぁ、アイテムクリエイト。
※※※
結果、会計は金貨3枚……日本円で300万円程度で済んだ。
だいぶ割り引いてくれたらしい。
「あ、そうだ。あのワイン、処理しておいてくれよ。あんまりうまくないそうだけど、水割りにしたら飲めるそうだから飲んでいいよ」
「ありがとうございます」
店長自ら頭を下げて俺達を見送ってくれた。
そして、先に店を出た三人の女性を追いかける。
「バッカスのワインっ!!!!!!!!!?」
後ろから、大声コンクールに出場したら優勝できそうな大声が聞こえてきた。
これで、スーとシーの三人旅は終わりです。
二人が準レギュラーキャラに昇格しました。
~バッカスの酒~
バッカスはネプチューン(海の神)より多くの人間を溺れさせた。
そう言われます。彼は人間に葡萄酒の作り方を教えたと言われる酒の神です。
古代ローマでは、葡萄酒は水で割って飲むというのが常識でした。
なので、バッカスのワインは、水割り用のワイン、という設定にしました。
ちなみに、バッカスの酒、というアイテムは、ファイナ○ファンタジーにも登場します。飲むとバーサーク状態になるんですが……戦闘中に凶暴化するほど酒を飲むなよ、と思ったのは私だけではないはず。
ちなみに、「亀の甲羅」「聖水」で作れるのですが……なんでこの材料で作れるんだろう? と思ってしまいますね。
ちなみに、バッカスがワインを作り方を教えた村人。
その村人はバッカスから教わった方法でワインを作って村人に振る舞ったのですが、そもそもお酒とか飲んだことがなかったんでしょうね。
毒と勘違いされて殺されてしまったそうです。南無南無。
~というわけで、コーマはこんなスライムを作りました~
ワイン×スライムの核
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ワインスライム【魔法生物】 レア:★★
紫色のスライム。いつもふらふら。
ワインスライムが吐く息を吸うと興奮状態になる。
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コーマ「俺は葡萄酒よりも葡萄ジュースで十分だ」
ルシル「コーマは子供ねぇ(DXパフェに目を輝かせながら)」
コーマ「そうだな。子供に子供と言われて怒るなんて、俺も子供だな」
ルシル「むぎゃぁぁぁ」




